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貴方も私も人じゃない169

「…つまりお前は、軍師の指示に従った、と?」
「いかにも。されど最終的な判断は任せるとのお言葉であった故、このような決着になりもうした」
家康は政宗との戦いの途中で投降し、政宗とともに赴いた幸村の言葉に目を細めた。政宗は不愉快そうにそっぽを向いている。
政宗は幸村の好敵手だ。幸村が自らとの戦いに決着を着けず、投降したことが気にくわないのであろう。
「…彼女はなんと?」
「…自らの力不足故に西軍は敗走した、と。関ヶ原の地にて何があったかの詳細が記されておりもうした。それをもって、いくつかの案が」
「…それは、どんな?」
「色々と。細かくは覚えておりませぬ」
「……そうか…」
政宗は二人の会話に肩を竦める。
付き合っていられない。
政宗の態度はそう語っていた。幸村はそんな政宗の所作に気を止めることもなく、家康を 真っ直ぐに見据えた。
「……彼の方は?」
「捕らえてある。まだ生きてるよ」
「……え?」
幸村はぽかんとしたように家康を見た。政宗も家康の言葉に驚いたように家康を見る。
家康はそんな二人の反応に驚いたように目を見開いた。
「…生かしてんのか?アイツを」
「…そう、だが……。独眼竜も彼女を知っているのか?」
「……前に真田のところに行って石田に会った時一緒にいた女だろ。俺が石田に斬りかかっても表情一つ変えなかった」
「…まぁ、あのお方は…あの時、政宗殿の怪我を見抜いた上にどこから殺すのがよいかなど佐助に進言した御方、普通の女子ではござらぬ」
「ふぅん?……つまり、お前が俺との決着を着けなかったのはそんな野郎の言葉が気になったから、か?」
「……あの御方の知らせには一切の無駄がござらんかった。冷静さは片倉殿のそれと同様。それ故に、そちらの案を取ったまでにござる」
「…へぇ?そんなにか?」
「ならばお尋ねいたすが政宗殿。貴殿は生半可の女子が西軍の軍師を任されるとお思いか?」
「Ha…そいつぁそうだな」
政宗は幸村の言葉にニッ、と笑った。どうやら幸村の言葉に機嫌を直したようだ。むくりと体を起こすと今度は家康に向き直った。
「…で?なんでお前はそんなあぶねぇLadyを生かしてんだ?」
「………まぁ訳は話せば長くなるんだが……1つは彼女が投降してきたから、だな」
「……興味があるな。会ってみてぇ」
政宗は家康の言葉に目を細め、楽しそうにそう言ってのけた。家康はまた驚いたように政宗を見た。
「某も是非、お会いしとうござる」
「……分かった。構わないさ、ワシが会っても…彼女を怒らせてしまうだけだろうから」
家康は困ったようにため息を着いたが、二人に会うことが刺激になると判断したか、あっさり了承したのだった。


「…!鎮流殿!」
「…!真田幸村殿。何故こちらに」
「へぇー…敵軍の軍師を捕らえておくのが座敷牢とはな」
「伊達政宗…?」
鎮流は自らのもとを訪れた幸村と政宗を訝しげに見つめた。
鎮流は部屋のすみに、行儀よく背筋を伸ばして座っていた。幸村は格子越しに僅かに安堵の息をもらす。
「…お久しゅうございまする、鎮流殿」
「ええ。ご無事な様子、何よりにございます」
「……その、三成殿は……」
「徳川殿との一騎討ちの末に」
「……左様でございまするか…」
「…真田殿はともかく、貴方様は何用でございましょうか、伊達殿」
「別に。アンタっつー人間に興が沸いて見に来ただけだ。気分はどうよ?」
「この座敷牢の環境は牢屋としては申し分ございませんね。体調という話でございましたら、特に問題はございません」
「……………」
政宗は鎮流の言葉に拍子抜けしたように目を見開き、くっ、と小さく笑い声を漏らした。幸村も鎮流の態度には僅かに驚いたらしく、笑いを漏らした政宗と鎮流とを交互に見やった。
「…なるほど?その態度……女だてら軍師をやるだけはあるってもんだぜ」
鎮流は静かに政宗を見上げた。
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