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凶姫と龍人36

二人だけの晩餐会は静かに進む。互いに緊張しているのか、口数も少ない。
小十郎達は食堂の隅で様子をうかがっていた。
「…何をこそこそとしていやる、主ら」
「だって話さねぇし、気になるじゃねぇかよぅ」
「正装した晩餐会でべらべら話す方が不気味よ。ほれ、盗み見しておらんで手伝いやれ。急がねば浮気しておると同胞に言うぞぉ?」
「何でだよ!だぁ、もう仕方ねぇなっ!後は任せるぜ、小十郎さん」
元親は半ば脅してくる吉継に負け、一緒に食堂から出ていった。一人残った小十郎はそっと二人の様子を窺った。
食堂にはクラッシック音楽が流れていて、別段話さずとも気まずくはない。
「…このまま何事もなくうまくいけばいいんだがな」
小十郎はひっそりとそう呟く。それが聞こえたのかたまたまか、ぎろりと正宗が睨んできたので小十郎は慌てて退散した。

晩餐は何か起こることもなく無事に終わった。ふと顔をあげた政宗と三成の目があった。三成はぴくりと肩を跳ねさせて視線をさ迷わせた。何か迷っているようだ。
「……」
政宗はしばらくそんな三成を見た後、不意に立ち上がり三成に歩み寄った。
自分の隣にたった政宗を三成はやや不思議そうに見上げる。政宗は右手を差し出した。
「?」
「Shall we dance, honey??」
突然流暢な英語で言われた三成は驚いたように政宗を見上げた。政宗の顔は僅かに赤い。
言われた英語に関しては、教わっていたので三成にも分かった。三成の顔も僅かに赤くなる。
「…あぁ」
三成は消え入りそうな声でそう返答し、政宗の手を取った。

「踊りの作法なぞ知らんぞ…」
「No problem!俺と同じように手を回せ」
「わっ?!」
ダンスホールに移動した二人を、相変わらず元親と小十郎が覗いている。
政宗は右手で三成の左手を握りしめ、左手で三成の腰を抱き寄せた。三成が焦ったように政宗を見た。
「ちちち近い!」
「これがちゃんとしたformなんだよ。アンタも右手を回せ」
「う、う…」
三成はおどおどとしながらも政宗の腰元に右手を添えた。
「OK!!後は気持ちのままに踊るだけだ」
「?!なんだか違うだろうそれ!」
政宗はにやりと笑うと適当にステップを踏んで回りだした。三成が不服そうに政宗を見上げたが、政宗は気にせず笑う。
「知らねぇなら心に従えばいい。Isn't it??」
「…もうそういうことにしてやる」
「ははっ、thanks」
ふん、と三成は鼻を鳴らすと、政宗のステップに朧気ながらも合わせていった。
「……………」
三成は僅かに赤くなった顔を隠すように政宗の胸元に顔を押し付ける。その行為に逆に政宗の顔が真っ赤になったが、三成は気がつかない。
政宗はぶんぶんと顔を横に振ると、三成に気付かれないように三成の頭に自分の頭を乗せた。
「……いいなぁ」
「テメェは相手いるだろうが、スケコマシ」
「誰がだ!」
小十郎と元親はひそひそとそんな話を交わしていた。
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