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貴方も私も人じゃない151

「凶王どんには酷…?」
「…私は豊臣では新参の方でしてね。主を亡くした事に、そこまで滅入ってはいないのです。ですが、三成様は…生きる目的をも、見失っているようにも見えます」
「…生きながら死んじょるちゅうことか」
「あながちそのお言葉は間違いではございません。私は軍師ではございますが、三成様をお支えることが役目と思っております。…徳川殿の掲げる思想は綺麗なものでございますが、絆を掲げておきながら味方を裏切るようなお方のなさることは信用できません。それ故に、負けるわけにはいかぬと思っております」
「……」
「三成様に、天下人の器は、まだございません。ですが、徳川に勝った後…秀吉様の死を乗り越えた先になら、あるいは。…今はそれに希望を託し……その為に尽力する他ございません」
「…………なるほどのう」
「何よりその為にはまず、三成様に勝っていただかねば始まりませぬ。その為、島津殿をお訪ねした次第でございます」
「背後の守りば固める為…」
「はい。そして、場合によっては排除するためでございます」
二人がそう話している間に、相当怯えたのか、宗麟は姿を消して宗茂のみが残っていた。排除する、そう言う鎮流の言葉に二人は僅かに表情を動かした。
だが、義弘はすぐに笑い声をあげた。
「がーはっは!こりゃあたまげた姫さんじゃ。じゃっどん、気に入った!」
「はい?」
「今回の戦…長きに渡って続いちょった戦乱ば終わらせる戦じゃと、おいは思っちょる。おいのような古きば、終わりを迎える頃じゃとのぅ」
義弘の言葉に鎮流は目を細めた。
徳川方は伊達政宗と手を結んだと、先日報告に聞いていた。政宗は奥州を統一している。同じく東の将、最上義光も家康に近づいているという。東側は徳川の味方と、見なして違いはない。
「…そうですね。奇しくも、此度の戦は日ノ本を二つに分かつ構造となってしまいました。どちらかの大将か天下人となる、と…」
「古きば新しきを見守る頃合いよ。勢いをとれば、今回の戦ば、今の勢いを見る限り徳川どんの方が優位じゃ。じゃっどん、先が気になるのは凶王どんよ」
「………それは?」
義光は、ばん、と平手で自分の膝を叩いた。
「おいは凶王…いや、三成どんに味方する、そう決めたわい!」
「…!……、感謝いたします」
鎮流は驚いたように義弘を見たが、ほっ、と安心したように息をつくと、す、と頭を下げた。
「宗茂どん、お主ばどうすっとね?」
「いっ?!じ、自分は宗麟様の御指示を仰ぎませんと…」
「…、可能な限り、不要な戦は望むところではございません。無理にとは言えませんが、よいお返事をお待ちしております」
「は…早急に、お返しいたします」
宗茂はそう言うと一礼し、宗麟を探しに部屋を出ていった。
鎮流は宗茂に向けていた体を義弘に向け直した。
「はい。では島津殿、少し詰めたいお話がございます」
「おいも三成どん本人に会っちょきたい。おいが大阪ば出向くど」
「!承知いたしました。運よく大友殿とも話を交わせました、私は一旦大阪に戻ります。共にいらっしゃいますか?」
「おう!よろしゅう頼むど、鎮流どん!」
「こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」


運よく鎮流は島津義弘を味方にすることに成功した。あの三成の人となりが項を労したというのも奇妙な話ではある。
「…大友は最悪潰せばいい…島津義弘は鬼島津との異称を持つときいた。豊臣と敵対していたから若干の不安はあったけれど…よかったわ。なかなか強力な…かつ、参戦理由から考えても、有益な味方ができたわ」
一旦義弘と別れ、石田軍の陣営に戻っていた鎮流は一人そう呟いた。会合の間に日は暮れ、綺麗な夕日が地平線を照らしていた。
鎮流はふ、とどこか寂しげに笑った。
「…愛に裏切られた、なんて……何言ってるのかしら、私。…あの方のこと、まだ好きなのかしら」
鎮流はそう言って、額に手を当てた。
「……、まさかね」
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