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もうお前を離さない38

「黎凪殿は何も悪くないではござらんかッ!」
「そう信じてくれる人がいれば、私はそれでいい」
「しかしっ!」
「幸村は優しいな。…でも、大丈夫だから」
「…ッ…己を犠牲にするのはほどほどにしていただきたいでござる!」
「はいっ?!」
幸村の怒ったような声に、宮野は戸惑いの声を上げた。幸村の手が、がっ、宮野の肩を掴む。
「何故そう背負いこむのでござるかっ!」
「い、いい意味が分からない!」
「黎凪殿には人を憎む気持ちがないのでござるか?斯様な状況になったのは全て、黎凪殿の父上殿の言葉が原因でござろう?!その言葉を信じた者や父上殿が憎くはないのでござるか?…某は…っ某は許せないのでござる…ッ!」
「幸村…」
ぎゅう、と宮野の肩を掴む幸村の手に僅かばかりの力が籠もる。そのまま幸村は俯いて黙ってしまった。宮野はあちらこちらに視線を彷徨わせて焦っている。
しばらくして、宮野の手が幸村の頭に優しく乗せられた。
「…だってさ…憎んだって、どうしようもないじゃん」
「…。は?!」
幸村は勢いよく顔を上げる。
「わっびっくりした。私は憎しみなんて、思うだけで苦しみや悲しみが増幅するだけのものだと思ってるから、さ。どれだけ憎んだ所でその言葉がなかった事にはならないし、何もかわらない。自分が辛くなるだけ…なら、そんな物は抱かないで、忘れる!」
「わ…忘れる…!?」
「いつまでも過去の事をぐだぐだ言った所で過去は所詮過去にしかならない。私は二人を親父に殺されたわけじゃない。親父を憎んだ所で犯人は捕まらない…じゃない?」
「…ッ」
「…最初は確かに憎かったかもしれない。でも私、自分自身がどう思ってるのかよく分からないんだよね、あはは…」
「……………」
「何も思ってないわけじゃない。ただその内容が分からない。…だからよく分からないんだ、親父が憎いのかそうじゃないのか。…だから、目の前の大切な人が見えていればいいやって思うんだ。生きている人を死人と同じだと思わないように、ちゃんと見えていればいいって」
にこり、と言い終わった宮野は笑う。幸村は言葉がうまくまとまらないのだろうか、視線を動かさないで固まっている。
「あっ!でも私は命より大切だと思える人や心から好きな人を失った事がないからそう言えるのかもしれないけど!だから今のは忘れて!幸村達からしてみれば今のちょっとじゃなくいらっとするよね、ごめん!!」
「いや、そんな事はないでござるよ…。…強いのでござるな、黎凪殿は」
「強くなんかないってば。分からないだけ」
ふ、と寂しそうな笑みを浮かべる宮野。幸村がその笑みを見たと同時に、幸村の頭は宮野に引き寄せられていた。幸村は僅かに刮目した。その手が震えていたのだ。
「そう…分からない…分からないんだ…分からないのが怖くて仕方がないんだ…私はどうしたいのか…生きていたいのか死にたいのかそれすら分からない…。酷く自分が曖昧に思えて、自分の存在が必要ないんじゃないかとか考えて…分からないよ幸村。私は変?憎まないのは変かな?」
「れ、黎凪殿…」
一変した宮野の様子に幸村は戸惑う。どう返せばいいのか全く分からないのだ。
「私は強くなんかない。…多分、その考えに達するのが怖くて考えないようにしてる…だけなんだと思う、多分」
「…そう、でござるか。…されど、憎いだろう相手を憎まないのは変ではないと思いまする。ただ、某からしてみれば、それは強さなのでござるよ」
幸村は少し宮野から体を離し、その手で宮野の顔を包んだ。そして目線を合わせ、柔らかく微笑んだ。
「もっと自分に自信を持たれよ。黎凪殿は曖昧ではござらん、確固とした存在でござるよ。それは、この幸村が保証しまする。…黎凪殿は…某には必要で大切な女子でござりまするゆえぇ…」
「…ぷっ。幸村、最後だけカッコ悪い」
「う、うぅ…破廉恥なり…」
真っ赤になった幸村の顔はなかなか戻らず、宮野はくすりと笑った。

もうお前を離さない37

「今なんと?」
「!こいつ、母親と兄貴殺したんだよ!」
幸村に話し掛けてもらえたから調子に乗ったのか――女子達はわいわいと騒ぎ始める。
「一度は捕まったのに証拠がないから罰を逃れた卑怯者なんですよ!知らなかったんですか?」
「それなのにぬけぬけとまだ学校来やがってさ」
「ちょっと!黎凪はそんな事してないよ!」
「そうだよ!黎凪ちゃんそんな事する人じゃない!」
「でも母親の事も兄貴の事も嫌いだったらしいじゃん?」
「つか父親が最初に言いだしたんなら間違いなくね?」
「本当、一見大人しそうな面してるくせに怖いよねー。いつ刺されるか分かりゃしないじゃん?しかも筆箱にカッター入れてんだよ?」
「何それ、次のターゲット待ちみたいな?」
谷沢と岩井は宮野を庇っていたが、女子達は気にも止めない。宮野は振り返らず、立ち止まっている。その手は微かに震えていた。
「ッ…!…?!」
幸村は宮野を振り返った後、口を開こうとした伊達を手で制して静かに口を開いた。
「嫌いだったら殺すのか」
「…え?」
不意に出された幸村の言葉に、女子達は話すのをやめた。幸村はただ淡々と、普段の暑苦しさはどうしたと聞きたくなる程静かに言葉を紡いだ。
「嫌いだろうがなんだろうが黎凪殿の家族に変わりはない。黎凪殿は自分より他者を優先させるような人間だ。そんな人間が他者を、それも家族を殺すか?」
「な、何急に」
「父親が言ったらそれは正しいのか?」
「一番近くにいた奴が言ったらそうじゃん!」
「大切な人間を失った直後の人間に、正常な思考など働くわけないだろう」
「な…なんなのさ!アンタその殺人鬼の肩持つの?!」
「黎凪殿は殺人鬼などではない」
「それこそ証拠はあるのかよ!」
「証拠などない。俺は見ていないからな。だが確かに言えることはある。黎凪殿は感情で人間を殺すような人間ではない」
「はぁ?意味不明ー」
ぎゃはは、とついに女子は笑い始めた。幸村はそんな彼女達に刮目した。
「…何がそんなに面白い…」
「…っ何…」
ぎち、と幸村の握り締められた拳から音がなる。力の入れすぎで腕が僅かに震えている。女子達は幸村の怒りように再び黙った。
「許せぬ…!何故このような世界で家族を殺すなどと思う!!その考えが俺には理解できぬ!」
「だ、だって父親が」
「何故黎凪殿を見ようとせずに他者の言葉ばかり信じるのでござるか!」
「ご、ござる?!」
「父親の言うことは信じて、何故黎凪殿の言葉は信じないのでござるか!」
「…っだって…」

「もういい!!!!」

宮野の大声が校門に響き渡った。幸村は驚いて振り返る。宮野はいつの間にか振り向いていた。伊達はいない。
「あの男の言葉を信じたければ信じればいい!そしてそうやって私を嫌えばいい!私はなんと言われようともうどうでもいい!幸村も、うるさい!」
「う…うるさい?!」
「もう行くぞ!」
「れっ、黎凪殿っ!」
宮野はかなり怒っていた。おそらく伊達はそれを察していたの
だろう、先に車に乗って待っていて、二人が来ると同時に車を出させた。後にはただ、呆然とした女子達だけが残った。




 「…申し訳ござらぬ黎凪殿」
「何が」
「また迷惑をかけてしまったでござる…」
伊達の車はよくドラマなどでお金持ちが乗っているようなタイプの車で、後部座席と運転・助手席が完全に遮断されている車だった。
その後部座席に、宮野と幸村は向かい合って座っていた。
「…別に幸村の行動に怒ってるわけじゃない。寧ろ、ああ言ってくれたのは嬉しい。…でももう、面倒はごめんなんだ」
「黎凪殿…」
「ぎゃあぎゃあうるさいだけの女子とは仲良くなりたいとも思わないしね」
「…。それでも某は許せませぬ」
幸村は膝の上で拳を作った。

もうお前を離さない36

放課後――
宮野に一緒に帰ろうと約束していた岩井眸は、校門の前で止まった黒塗りの車に目をぱちくりとさせた。
「さすがにもう終わったはずなんだけどな」
「伊達殿…この着物動きにくいでござるよ…」
「耐えろ。あと、そのござる口調と某はなんとか変えろ」
車から降りてきた二人は伊達と幸村だ。二人ともスーツをラフに着ている。幸村はぴっちりとしたスーツの着心地が悪いのか、そわそわとしていた。
「……。あ!黎凪ちゃんの彼氏さん!」
「?!」
さっさと進む伊達の後を慌てて追う幸村を見ていた岩井は不意に声をあげ、幸村はびっくりして立ち止まった。
「な、な、な、なんでござるかっ?!」
「黎凪ちゃんならもうじき来ますよー」
「な、いや、某は、違う俺はっそのっ」
「何吃ってんだ真田…」
幸村は突然見知らぬ少女に話し掛けられて焦っているようだった。伊達は呆れながら真田の襟首を引っ掴む。
「わりぃな。アンタは宮野のダチか?」
「岩井眸っていいます」
「眸ー。……って幸村?!」
そこへタイミングよく宮野が現れた。隣にはジャージ姿の谷沢がいる。
「あー!真田幸村!黎凪の彼氏!」
「かれし?」
「な、何してんの?!それに伊達さんまで!なんでスーツ?!」
宮野はかなり驚いたらしく、幸村以上に焦っていや混乱していた。そして何故か顔を真っ赤にしていた。
「あー黎凪ちゃん顔真っ赤だー」
「えっ?!」
「確かに?カッコいいじゃん?スーツ姿。ねぇ?羨ましいねぇ?」
「う、うるさいっ!」
「?な、何が…?」
要は宮野がスーツ姿の幸村に見惚れていたのを冷やかされているだけなのだが、幸村には分からないらしい。宮野を前にしてただ焦っている。
「っと、宮野。明智から俺とこいつとお前とで、食事がしたいっつー手紙が来た」
「?!変態から?!」
「お前…容赦ねぇな…まぁそうだ」
「はぁ…。それでわざわざスーツに…?」
「あぁ。どうする?」
「どうするも何も…断ったらまた喧嘩売られるだけでしょう?…別に構いませんよ」
「OK。承知した。…っと、あの子はどうす…って、あれ?」
「!た、助けてくだされ!」
今更いうのもなんだが、幸村は美男子である。ゆえに、校舎を出てきた女子に囲まれていた。伊達と宮野は同時にため息を吐いた。
「えー名前何ていうんですかぁー?」
「え、あ、う…そ、いや、俺は…」
「歳いくつですか?」
「この学校の誰の知り合いの方なんですかぁ?」
「おいこらお前ら。生憎急ぎなんだが」
「かっこいー!」
「え、俺も対象?」
伊達が救出に向かったが伊達も幸村に負けず劣らずの美男である。瞬く間に捕まった。
「えーかっこいー学校どこですか?」
「…俺達は学生じゃねぇ!おら、分かったらどけ」
「せめて名前だけでもー」
「あのなぁ…」

「ぎゃあぎゃあうるさい」

不意に酷く冷めた声がして、一瞬にしてその場は静かになった。声を発したのは宮野だ。固まった女子を乱暴に押し退け、二人の腕を掴む。
「行きますよ」
「あ、あぁ…」
「っんだよお前っ!」
「ちょっ止めなよ宮野さんだよ?」

「下手売ったら殺されるよ。母親とお兄さん殺したくせにうまく逃げた奴だもん」

一人の女子が、そう言った。宮野に腕を掴まれ、どうにか女子の集団から離れられてほっとしていた幸村は、その言葉に宮野の腕を振り払い振り返った。

もうお前を離さない35

ぐい、と伊達は幸村の頭を引き寄せまるで内緒話でもするかのように顔を近付けた。
「宮野は得体の知れない奴に狙われやすいからな…何でアンタにそんな心を許してんのか気になんだよ」
「なっ何も特別な事は…!」
「ほーぅ?」
どうやら話すまで解放してくれる気はないようだ。
仕方がないので、幸村は顔ごと伊達から目線をそらしながら、ぼそぼそと言った。
「たっただっ…某が元の世界に帰る際にっ共に来てほしいと申したまでっ!そして好いておると申しただけでござらぁぁ破廉恥ぃぃぃぃ!!」
「うるせっ!」
恥ずかしさが勝ったらしい。幸村は叫びながら伊達の腕を振り払って道場内を走り始めてしまった。伊達は小さくため息をつく。
「つかなんで告白程度で破廉恥なんだよ!お前ぐらいの歳ならよ、もっとこう、あんなことこんなことしたい年頃だろ!」
「…。……!破廉恥であるぞ龍也殿ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「いだーっ!!」
伊達の言葉にぴたりと固まった幸村は、その後顔を真っ赤にさせて伊達に突撃してきた。走ってきた勢いのまま繰り出された拳を、伊達は避けられずそのまま腹に受けてしまい少しだけ飛び、落下して悶絶した。
「テッメ…」
「…はっ!どうなされた伊達殿!」
「テメェが殴ったんだろうが…」
ゆらり、と立ち上がった殺気。敏感に感じ取った幸村は、後ろから振られた竹刀を跳躍する事でよけた。
「!おぉっ片倉殿ではござらぬか!」
そのまま空中でくるりと回って着地した幸村は攻撃してきた男――伊達直属の部下であるらしい、片倉景嘉―通称は片倉小十郎―を見て無邪気に笑った。伊達同様幸村の知る片倉小十郎にそっくりな片倉はため息をつきながら竹刀を下ろした。
「大丈夫ですか龍也様」
「あぁなんとかな…。それより何でお前ここにいんの…?」
「あぁ大学ですか。今日は食堂がノロウイルスが出たそうで休講でした」
「あ、そ…」
片倉は片倉小十郎に負けず劣らずの強面だが、ヤクザとしての活動はしておらず、大学で教鞭をとっている。なんでも、伊達が頭領の座を継ぐまで万が一の事が起こらないよう、伊達が通う学校の教師をし続けているらしい。
伊達家は不法行為をしないヤクザらしく、ヤクザというよりは自警団として市民に慕われているそうだ。だからこそ出来るのかもしれない。
「片倉殿はこちらの世界でも頭脳明晰なのでござるな!」
「は?」
「気にするな小十郎。こいつが言ってんのは片倉小十郎景綱の事だ」
「自分の先祖の話をされても答えようがありませぬ」
「お前の先祖ともちょい違うな。で、俺に何か用か?」
「あぁ、それが、明智から手紙が」
「何?」
ぴくりと伊達の眉が動き、不意に真剣な表情に戻った。
「龍也様、そしてそこの真田と宮野を招いて食事がしたいと」
「は?」
「!!黎凪殿?!」
「落ち着け真田」
宮野という名前にだけ反応してきた幸村を落ち着かせながら伊達は幸村に事情を説明した。
幸村は話を聞き終えると露骨に顔を顰めた。
「何故…?」
「さぁな。逃げ帰った連中からお前の事を聞いて興味を持ったのかもしれねぇ。どうする」
「…黎凪殿に相談せねば、何とも言えないでござる」
「そうだな…。小十郎、今何時だ?」
「12時45分です」
「よし、真田。あと二時間稽古したら宮野迎えに行くぞ」
「!!分かり申した!」
幸村はにやりと挑発的に笑いながら小太刀サイズの竹刀を構えた伊達に、嬉々として立ち上がった。

もうお前を離さない34

翌日。宮野が通う、日本武道館傍の都立高校一室にて。
「えぇぇぇぇぇっ!!こっ…告白されたぁぁぁ?!」
「「きゃーーーっ」」
「え…マジか、マジなのか?!」
「えっ…あっ、えっ…そっそうなの?!」
「ちょ、ちょいと静かに…」
村越を始めとして、村越に召集された宮野の友全員が驚きの声を上げた。
悲鳴に似た声をあげたのは岩井馨並びに岩井眸。漢字は固いが、読みは【かおる】に【ひとみ】、小さくて愛らしい双子の姉妹である。その次は唯一の男友達である上泉匠。顔も悪くなく勉強も出来るのに何故かモテない男だ。そして最後が谷沢漓帆。快活でソフトボール部のキャプテンだ。
谷沢はいつの間にか村越が撮ったらしい、携帯の画面に表示されている幸村を暫く凝視した後宮野を見た。
「…かっこいいけど…なんか…幸村そっくりだね」
「あぁ…言われてみれば戦国BASARAの…」
「だってその人だし」
「「へぇー。………はっ?!」」
谷沢と上泉の言葉が重なった。
「ちょっ被るなよオーバーザスプリング」
「俺はじょうせんだっ!かみいずみじゃねぇ!」
「へいへい」
「コラー!」
「…黎凪ちゃんはその人とどこかに行っちゃうの?」
「…多分」
「そうなんだ…」
しゅん、と見るからに落ち込む岩井姉妹に、宮野の胸の奥が小さく痛む。どれだけ宮野が疎まれ嫌われようと、それでも宮野が好きな人間はいるのだという事を改めて突き付けられた気がするのだ。
自分を必要とするならば、それに答えたい。宮野はそういう人間だ。
「ごめんね。まだ行けるかどうかは分からないけど…私は幸村の傍にいたいから」
だが、幸村を想う気持ちは、自分を好いてくれる友を思う気持ちを遥かに上回っている。
だから曖昧な態度はしない。宮野はそう決めていたようだ。
すぐに返された言葉に岩井姉妹は少しだけ意外そうな表情を浮かべた後、嬉しそうにはにかんだ。
「黎凪ちゃんにそんなに想われるなんて羨ましいなー」
「お、想うって…!」
「お、照れたー」
「…まあ、黎凪がいいなら、それが一番じゃない?ラブラブみたいだし」
「そだな。相思相愛っぽいし」
「いやもう見るからにラブラブだったよ。それに…、…彼なら、黎凪を助けられる気がする」
「芽夷…」
「いいねぇお祝いしようよ今度ー」
「!そ、そんな事はしないでいい!」
顔を真っ赤にさせながらも、その顔はやはり嬉しそうに笑っていた。




その頃渦中の人幸村は。
「ぶぇっくしっ!」
「なんださっきからくしゃみばっかり」
「も、申し訳ござらん伊達殿…」
「龍也でいいぜ」
ちゃんと師範としてできるように、小太刀護身道と護身剣道を伊達にたたき込まれていた。
天性の戦人。史実の真田幸村をそう言う歴史家は少なくない。その流れをくんでいるのか、幸村の覚えは異様な程に早かった。
「まぁいい。ぶっ続けだったからな、少し休むか」
「某は平気でござる!」
「ははっそりゃいい。が、少しは休まねぇと首の傷に障るぜ?」
「!…分かり申した…」
幸村が宮野の言葉を思い出し、大人しく伊達に従うと伊達はにやにやと笑っていた。
「な、なんでござるか」
「その手当て、宮野にしてもらったのか?」
「…そうでござるが」
「はっはぁーん…今以上に傷が悪化したら宮野は心配するだろうなぁー」
「何が言いたいのでござるかっ!」
「いや別に?随分とたかが怪我の事でアンタがすぐに納得したなぁと思ってよ」
「…。…!れっ、黎凪殿は何も関係ありませぬ!」
「照れんなよ、どうせ俺達しかいねぇんだからよぅ。昨日から恋人になったんだって?」
「うぅぅぬぬぬ…破廉恥なりぃぃぃ…!」
「ふむ。なったか。で?で?なんて言ったんだ?」
「しししっ知ってどうするのでござるかっ!!」
伊達の恋愛レベルは中学生レベルらしい。
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