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貴方も私も人じゃない152



「三成ィ、朗報よ。あれが鬼島津と西立花を味方につけたそうよ」
「なに?」
それから数日後、大阪にいた吉継は鎮流からの報告を受け取り、三成にそう告げていた。戦支度か、具足を着込んでいた三成は僅かに驚いたように吉継を振り返った。
「これで西の憂いは絶てたも当然よな」
「…そうだな。真田からは」
「今は上杉と対峙しておると。取り急ぎ主に報告よ」
「そうか」
「………石田、少しいいか」
「?なんだ、孫市」
吉継が離れたことを確認して、孫市が三成に話し掛けた。孫市は腕を組み、壁にもたれるように立っていた。
「…お前は四国の件を知っているのか?」
「?当然だ。鎮流から聞いている」
「!大谷ではなく、あの女からか?」
「長曾我部が同盟の申し入れに来た時、対応したのが鎮流だったからな」
「……………」
「それがどうした?」
「…………いや、なんでもない。手を煩わせたな」
「下らんことを尋ねるな。四半刻過ぎた頃には発つぞ」
「………あぁ」
三成はそう言うとその場を立ち去った。孫市は少しの間考え込んだあと、三成が去ったのとは逆の方向へと向かった。


「………サヤカ?どうした」
「元親。四国の事だが…答えは出たのか」
「………今更だ」
「今だからだ。この後では間に合わなくなるぞ」
「………………」
「石田には言い訳しておいてやる。お前は何を信じる?」
「……分かった」



 鎮流は義弘らと共に大阪への帰路についていた。鎮流は彼らとは離れ、隊列の後ろの方にいた。
手帳を開き、引かれる馬の上でそれを読んでいた。
「……真田が上杉と交戦を開始…上杉はこの前徳川方とぶつかったばかりなのに?……上杉は真田の主の好敵手だったとか…高みの見物かしら、趣味の悪い」
「…上杉は軍神と名高き将、そうしたことはないかと」
鎮流の馬を引いていた部隊長が、鎮流の言葉にそう口を挟んだ。
ふっ、と鎮流は口元に笑みを浮かべる。
「軍神…ね。でも彼は今回の戦は中立を保っているわ。とどのつまり高みの見物よ。日ノ本だとか天下の太平だとかより、好敵手との戦にしか興味がないみたいですわ。それは戦の神ではなく、ただの戦闘狂と同じよ」
「せっ……。……鎮流様は……強きお方ですな」
「急に何を仰いますの、部隊長」
「上杉謙信といえば、兵の立場であるものならば誰もが恐れている存在といっても差し支えありませぬ。それを、鎮流様はそのように一刀両断にしてしまえるのですから 」
「私が強いだとか、そういうことではございませんわ。ただ固定概念に捉えられていないだけ、それだけよ」
「…それが、強いと申し上げているのです」
部隊長は困ったように笑いながらそう言った。鎮流は僅かに驚いたように部隊長を見たが、困ったように肩を竦めた。
「…そうできても、憎しみを消すことはできぬ半端者ですわ」
「!それは、」
「ですが、誉め言葉として受け取らせていただきますわ。ありがとう」
「…………いえ」
鎮流はぱたりと手帳を閉じて、顔をあげた。東の方へ視線をやれば、僅かに曇った空が見える。
「………曇天…」
これから天気が荒れるだろうことが予想できた。鎮流は、ふっ、と自嘲気味に笑う。
「…この戦は、絶対に負けられない。貴方の首、飛ばして差し上げますわ、徳川家康…」
鎮流はそうぽつりと呟いた。
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