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貴方も私も人じゃない155

尼子勢との戦は、拍子抜けするほどすぐに終わった。島津勢の勢いが鎮流の予想よりも強かったのと、尼子勢の戦力が少なすぎたことがその理由としてあげられよう。
とにもかくにも、心配していたのが阿呆らしく思えるほど、尼子討伐は楽に終わったのだ。
「鎮流どん、この後ばどうすっとね?」
「…思ったよりも早く終わりました。どうせこちらに来たことですし、私は一度、領に戻られてしまった黒田様を訪ねてみようかと。島津様は先に大阪へお戻りください、恐らくその頃には三成様も戻られましょう。一小隊を案内につけます」
「了解したとー」
「では、また大阪でお会いいたしましょう。三成様によろしくお伝えください」
鎮流は、味方であったはずなのに大阪にはいなかった官兵衛が気になっていた。官兵衛の領地はここから近い。予定よりも早く終わったのだから、と、会いにいってみることにしたのだ。
鎮流は義弘と中国でわかれ、再び九州へ向かった。

この選択はある意味でよい選択であり、ある意味で悪い選択だった。




 鎮流は翌日には官兵衛の暮らす穴蔵へついた。
あまり歓迎はされなかった。そもそもの官兵衛は鎮流を見るなり踵を返した。鎮流は兵らを入り口付近で待たせ、官兵衛を追った。
「黒田様!何故お逃げになるのですか!」
「なんでお前さんがここにいるんじゃ!権現の話なんざ聞かないぞ!」
「私は徳川の使いではございません!三成様の使いでもございません!」
「あぁ?!じゃあ何しに来た」
官兵衛は三成の使いですらないと言う鎮流の言葉に、仰天したように歩みを止め、鎮流を振り返った。
鎮流も足を止める。
「黒田様はお味方側だと思っていたのですが、大阪にいらっしゃらないので、何故かと」
「…お前さん、そもそも……」
「私は西軍です」
「…権現にさらわれたと聞いていたが…その三成みたいな頭は逃げだすためか?」
「えぇ。それで、黒田様は」
「……小生はどっちにも関わりたくないんじゃ」
「四国の事があるからですか?」
「なっ?!」
官兵衛は仰天したように鎮流を見た。知っているとは思わなかったようだ、その顔は青ざめてすらいる。
「たまたま、出くわしましてね。大谷様にお聞きしました」
「……………」
「いえ、それならそれで私は構わないのです。ただ…」
「ただ?」
「敵であるならば、潰しておかねばと思ったまでのことなので」
「!」
官兵衛は鎮流の言葉に、はっとしたように鎮流を見下ろした。鎮流はそんな官兵衛に、ふっ、と諦めたような笑みを浮かべる。
「…お前さん、そんなに権現が憎いのか」
「…えぇ、憎うございます。だってーー」
鎮流がそう言いかけた時、ふいに坑道内がざわざわと騒がしくなった。何事だ、と二人はそちらを振り返る。
「黒田ァ!」
ざわめきの中から姿を見せたのは、元親だった。官兵衛は驚いたように、鎮流は眉間を寄せ、元親を見据えた。
元親は怒りを隠すことなくむき出しに、官兵衛を睨んでいた。
「長曾我部殿。如何されたのですか」
「あん…ッ姫さん!アンタ、アンタも知ってたのか!知ってて俺をはめたのか!!」
「何の事でございますか?」
「!」
動揺も見せずに冷静にそう返した鎮流に、官兵衛ははっとしたように鎮流を見た。
元親は苛立ったように、手に持っていた武器を地面に叩きつけた。
その雰囲気を察してか、誰も三人のいるところに入ってくることはなかった。
「四国のことだ!俺ァ家康の野郎がやったんだと思い込んでた…ッ!」
「…?そうなのではないのですか?」
「なっ!?!……、あんた、まさか知らねぇのか?あれをやったのは家康じゃねぇ!!そこにいる黒田だ!」
「……。それは、誰にお聞きになったのですか?」
鎮流は驚いたように目を見開いてみせ、そう尋ねた。
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