2012-1-28 21:34
「…政宗」
「…ッ」
「「!!?!!??!?」」
現れた養父に、徳川と真田は叫びだしそうになるのを抑えるため、思わず互いの口を塞いでいた。それだけ、伊達の養父に驚いたのだ。
「…?吉継、後ろの2人は」
「友人、だ、そうです。政宗か心配で尾けておったそうな」
「そうか…」
「…え、えと…政宗のお父さん…ですか…?」
「うむ。豊臣秀吉という」
「((やっぱりー!!))」
心の中で2人はそう叫んでいた。
豊臣秀吉。石田が傾倒し神の如く信じていた者であり、伊達の軍を石田に壊滅させた者。石田同様、徳川が殺した男だ。
徳川は僅かに視線を逸らした。
その様子に豊臣は僅かに驚いた後、ふ、と笑った。
「と…徳川家康、です」
「真田幸村と申しまする」
「そうか」
「…秀吉さん」
伊達は躊躇いながら豊臣を見上げた。豊臣は困ったように笑う。
「…我は父にはなれないか」
「!!い、いや…そうじゃなくて…、……すいません」
「お前が無事ならそれでいい」
「……………」
「やれ、オヤサシイ事で」
「吉継」
その様子を黙って見ていた大谷は半ば呆れたように肩を竦め、己を困ったように見る豊臣をちらと見た。
「今回の事は政宗から起こした行動だった事、お忘れではあるまい?…貴方が出来ぬのなら我がやりますが?」
「…お前の説教は説教ではないだろう。説教くらいできる」
「ヒッヒ…左様で。ならば我は帰ります」
「そうか。付き合わせてすまなかったな」
「そう思うておるのならば、説教はちゃんとしてくだされ」
大谷はそう言うと、徳川と真田に視線を一度向けた後2人の脇を通り過ぎて階段に向かってしまった。
が、その時。
「?!」
「うわっ!?」
階段を勢い良く駆け上がってきた誰かとぶつかったらしく、その勢いで大谷は勢い良く壁にぶつかった。
「吉継!!」
「す、すまない!大丈夫か!」
「?!石田先生!!」
駆け上がってきたのは石田だったらしい、アパートの廊下に学校のレインコートを来た石田が姿を見せた。
豊臣の目が僅かに見開かれる。大谷は頭をふるふると振り、じ、と石田を見た後肺の中の空気を全て吐き出したのではないかというほど長いため息をついた。
「やれ本に今日は厄日よな…」
「すまなかった!怪我はないか?!というより傘持っていないのか」
「ないわ。そして傘は持っておる。して主は何者よ?センセイと呼ばれておったが?」
「え?…真田に徳川!あ、伊達!!」
石田は大谷に言われ、漸く3人に気が付いた。大谷に頭を下げた後駆け寄ってきた。
「な、何故先生がこなたへ…?」
「…」
「…?貴方は…どこかで…?」
石田は豊臣に気が付くとそう呟いた。豊臣はそんな石田に柔らかく笑んだ。
「いいや。初めてお目にかかる、政宗の養父の豊臣秀吉だ」
「伊達の…?!あ、私は同じ学校で数学教師をしております、石田三成と申します」
「石田先生か。そんなに焦ってどうしたのだ?」
「あ…いや、学校にこんな手紙が届いていたため、気になりまして」
石田ははっ、としたようにレインコートの前を開くと、レインコートの下のスーツの中から手紙を取り出した。
「脅迫状めいたものだったもので」
「脅迫…!?」
「…?貴様宛てのようだが」
「何?」
背をさすっていた大谷の目に光が宿った。ぽかんとしている徳川と真田を押し退け、ぱっと手紙を取った。
「吉継」
「あ、だ、大丈夫でしたか?」
「平気だ。痛みには慣れている。それより、この手紙借りてもよいか」
「…どうした吉継」
豊臣は僅かに表情を引き締めて大谷を見た。