2013-6-20 00:27
「やめ、ろ…」
吉継の耳に、か細い声が届く。見下ろせば、よろめきながら踏み出す三成がいた。
回りの面子はまだ倒れていて、既に三成もぼろぼろだったが、三成は屈せず刀を構えて戦おうとする。
「貴様の蛮行を断じて許可しない…!これでは、秀吉様が統べようとした世が滅んでしまう!」
ぎり、と三成は奥歯をならす。信長は興味なさそうにそちらを見下ろしている。吉継ははっ、としたように三成を見た。
三成は震えそうになる手で、しっかりと刀の柄を握りしめた。
「秀吉様の夢を…半兵衛様の希望を…!」
三成の脳裏に二人の姿がよぎる。
三成はどちらの死をも見送ることが出来なかった。どちらにも間に合わなかった。
もう間に合わないことは、許されない。
ー共に世界をこじ開けようぞ
「貴様などに!消させはしないッ!」
三成は勢いよく地面を蹴って単身信長に迫った。信長は既に手にショットガンを構えていて、三成に向けていた。
無言のまま三成に向け放つ。強力なショットガンが炎を巻き起こす。
「ぐぉあああっ!!」
三成は炎に翻弄され信長に近寄れない。
「卑しき猿と故なきその尾よ…脆き魂と為りて悠久眺むる価値もなし!」
「ぐあぁあああっ!」
信長の攻撃に三成は弾き飛ばされ、下の岩に激突した。三成は力なく倒れ、その手から鞘がこぼれ落ちていった。
信長は尚もショットガンを撃とうとしたが、その時に接近する影に気がついた。
政宗が三成に意識が向けられていた隙に間合いに入り込んでいた。
「Ha!!」
政宗は頭上から信長に斬りかかったが、敢えなく刀で受けられ、弾かれる。それと同時に、小十郎が低い位置から信長に迫る。
「せやぁっ!」
政宗を弾いた信長の刀は頭上にあり、普通ならばそのがら空きの胴体を狙えたが、死んでも第六天魔王、すばやく刀を返し逆手で小十郎の刀を受けると返す手で小十郎も弾き飛ばした。
「よっとぉ!」
「ぜりゃあ!」
信長の後方、反対側の頭上から佐助が手裏剣を飛ばし、幸村がそれに追走するように地面を蹴る。
信長は振り返り様に佐助の手裏剣を弾き、すかさず跳躍して迫った幸村の槍も受けて弾いた。
「「せああっ!」」
家康と慶次は離れたところから衝撃波を放つ。
「無用どもがァァッ…!」
にぃ、と笑ってそれを振り返った信長は、マントを翻すこと、ただそれだけでそれ以上の衝撃波を放ち、六人を弾き飛ばしてまわりにあった棘に叩きつけた。
信長は高らかに笑う。回りの棘の花は次々に数を増やしていく。
「く…っ」
叩きつけられた小十郎は思わず呻いた。衝撃に体が痺れる。
「…小十郎ォ…」
「は…ッ」
「豊臣の山猿の死が、こんなもん持ってくるとはなァ…」
政宗はそう言いながら体を起こし、ぶんぶんと頭を揺らした。小十郎は目を細め、ぐ、と体を起こす。
「どうにか…ってあのやろう、」
「?」
「…許さない…!絶対にッ…!」
政宗のどこか焦った声にそちらを見やれば、ぼたぼたと血を流し、切っ先を引き摺りながら歩く三成の姿があった。
「唾棄すべき魔王…!…貴様などに…秀吉…様のっ…」
三成は刀を両手で握り、ふらふらと信長に向かっていった。誰が見ても結末は分かりきっている。
「どこまで純粋なんだよあの野郎…!」
政宗はぎり、と歯を鳴らした。信長が刀を振り上げた。
間に合わない。
「灰儘に帰するが良いわァァァ〜ッ!!」
信長の背後にいる六魔の刀が、勢いよく振り下ろされた。