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葱と牛蒡とツインテール58

「…」
家康はそんな三成をどこか苦しげに見つめている。だが、次第に聞こえてきた地響きにはっとなった。
声があがり、突如三成の後ろから、大量の石田軍が姿を現した。石田の紋、大一大万大吉の旗をを掲げた兵たちは、迷うことなく突き進んでくる。
「三成…!」
家康は戸惑ったように三成を見る。
「やはり結託しておったのか…!」
そこに、後方から怒号が聞こえてくる。家康は驚愕したように後ろを振り返った。
奇しくも、結果的に家康が石田軍を背にした姿になる。それは怯えた者たちには、石田軍を率いているように見えたことだろう。
「徳川と石田に謀られたぞ!」
「なっ…!」
幸村は家康同様驚愕したように兵たちの方へ視線をやった。
「待ってくれ!そうじゃない!」
慶次も必死に疑いを晴らそうとするが、迫る石田軍にその声は届かない。
その上そこに、上空から突如大量の矢が降り注いだ。ちょうどそれは石田軍の反対側、先程まで兵たちがいた所だった。
「…!?」
家康はさらに戸惑い、柵に手をかけ目を凝らす。にぶい地響きと、砂塵が巻き上がる。
「愚かな…。絆など見えない糸に過ぎぬ。人は争えずにおれぬもの、その理に抗うは愚者の所業…」
姿を現したのは、巨大な御輿。掲げる紋は、三つ星に一文字。
その大御輿の上で、細身の男が立ち上がる。
「関ヶ原に集いしすべての駒どもよ!見知らぬ顔あらば残らず斬らんと致すが良い!」
声を張り上げたのは、毛利元就。かつて豊臣が滅びし時、幸村によって倒されたはずの武将だった。
元就の言葉に関ヶ原に不穏な空気が巻き上がり、痺れを切らしたかのように兵たちが互いに斬りかかり始めた。
そんな彼らの背中を押すように、元就の言葉は続く。
「旗が違わばすべて敵ぞ!勝ち残りし者が天下人!これぞ天下分け目の戦場なり!」
「あれは、毛利元就…!?」
元就の言葉に幸村は驚愕したようにそちらを見る。その声が聞こえたのか最初から気がついていたのか、元就はどこか馬鹿にしたように幸村を見やる。
「捨て駒ごときに屠られる我ではないわ」
元就の参戦により、戦場は大混乱に陥る。
誰もが抱いた天下人の野望。勝ち残れば手に入る。その事実が、兵たちの思考を支配してしまっていた。
幸村や慶次、家康が声を張り上げても、誰にも届かない。誰にも聞こえない。
三成はそんな戦場を、興味なさげに見下ろしていた。吉継はその三成のとなりにふよふよと浮いている。
「毛利め、思わぬ励やかしよ。お陰で戦場がより渦るわ。お膳立てはいたしたゆえ、あとは好きに殺すがよかろ」
三成は吉継の言葉に静かに吉継を見た。その目には、政宗や家康を見るときにはない、優しい色が宿っている。
「…刑部、私はまた貴様に全て任せてしまったな」
「?それがいかがした?ヒヒッ、元より我の得意分野よ、気にしやるな」
「…自分で考えて行動せねば…いざという時に役に立たない、か……」
「?三成?」
三成はぽつり、とそう呟き、まっすぐ吉継を見つめた。
「…感謝する」
「…」
三成の言葉に吉継は僅かに驚いたように三成を見た。三成は前に視線を戻し、静かに戦場に降りていった。
「…やれ…進め…」
吉継は三成を見送るように、そう小さく口にした。
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