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葱と牛蒡とツインテール61

政宗はきっ、と三成を見据え、三爪を三成へと向けた。
「全力で来い…!これがアンタの、クライマックスだ!!」
政宗の言葉に三成の目が更に見開かれ、憎悪に歪んだ。
ぐらり、と上体が倒れ、ぶるぶると揺れる。
「…ッガアァァァァァァァッ!!!」
三成は吼え、上体を勢いよく起こして反らした。目が赤く光り、目元は黒く濁る。赤黒いオーラが、三成の頭を中心に現れる。
政宗は僅かに目を見開いた。
三成は再びぐらり、と上体を落とし、普通ではあり得ない前屈体勢を取り、勢いよく地面を蹴った。政宗の視界から三成が消え失せーー一瞬のうちに政宗の足元に移動した。
「…!」
政宗は予想以上の三成の速さに目を見開く。もう避ける時間はない。三成の刀は真っ直ぐ、政宗の首を目掛けて振られた。

ガキンッ!と鈍い音がする。
三成は、首をとった、と思い、秀吉を失って初めて、笑みを浮かべた。だが。
「…!」
政宗の首布が千切れ、その下から稲妻模様のネックガードが姿を見せた。
政宗が部下から贈られた、首の防具だった。
政宗は刀で三成を弾く。三成はもろに弾かれ、よろよろっと後ずさった。
「、何っ」
政宗は唯一三成が怯んだ隙を逃さなかった。
「いぃいやぁぁぁああぁぁあぁぁあああっっ!!」
政宗は体に残った力を使い果たすかという勢いで六爪を三成に叩きつけた。政宗よりも三成の防具は隙間がなく、かつ丈夫なようで、政宗のように壊れない。
それでも政宗は、刀を三成に叩きつけた。
斬るようにではなく、殴るように。
最後の一撃で、三成を下から上へと殴りあげる。衝撃で、軽い三成の体は上に飛び、政宗は三成を追撃するように五爪を空へと放った。
五爪が竜の紋章を空に描き、中央に向いた竜の口元に三成はたたきつけられ、磔にされた。
「ぐ…ぅうっ…」
叩きつけられた衝撃に三成の首が揺れたが、三成は諦めなかった。磔から逃れようともがく。
三成の憎悪は消えない。赤黒いオーラで、青い光を放つ竜の紋章すらも赤く染め始めた。
政宗は三成に対して、刀を構えた。
ー私からたったひとつの光を奪ったのだッ!
「…一度死んだなら尚更…!」
そう怒鳴る政宗の声は、僅かに震えているようにも聞こえた。
「また死ぬためじゃなく…!生きるために力を揮いやがれ!!テメェの死神を断ち切ってやる!!」
政宗は勢いよく地面を蹴った。
「JUMPING JACK BREAKER!!!」
ーJumping Jackとは、日本語に訳すと操り人形を指す。
政宗には三成が操り人形のように見えたのかもしれない。
豊臣秀吉という男を愛し、崇め、己を己たらしめる存在であると、己の世界を照らす光であると信じこんでしまった。きっかけは政宗には知りようがないが、自らの道を照らすのは自分自身であるということを、彼は見失ってしまったのだ。
だから、今の彼の世界には光がない。光がないと思い込んでいる。だから生きられない。彼を今動かし歩かせているのは、亡き豊臣秀吉への妄執。

自分が作り出してしまった哀れな人形。それを自分は、人に戻さねばならない。自分が目指す高みにふさわしい人間になるためにも。

操り人形を破壊する者。それが、この技が示す言葉。
政宗の一撃は竜の口元を貫き、大きな衝撃波を起こした。暗かった関ヶ原の地が一瞬明るくなる。
小十郎はそちらを見つめ、落ちてくる政宗を見つけて落下地点へ駆け寄った。
地面に降り立った政宗の体からは蒸気が上がり、政宗はガクン、と膝をついた。
成功したか。政宗はすぐに顔をあげた。
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