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葱と牛蒡とツインテール55

伊達、武田の両軍と慶次は、関ヶ原に向け進軍を再開した。
慶次は政宗、幸村と共に先頭を駆けていたが、ふ、と思い出したように馬を小十郎によこづけた。
「あのさ、」
「しきが無礼を働いたらしいな」
「えっ、」
「その事に関しては詫びるが、政宗様宛の手紙を勝手に読んだのはいただけねぇな」
「あ、あの四人から、き、聞いてた…?」
「……何か用か」
小十郎はぶっきらぼうにそう尋ねる。慶次はへへ、とすまなそうに笑って、視線を前に戻した。
広い道に、馬の足音が響き渡る。
「…ちょっと意外だったよ、アンタみたいな人がああいう子を奥さんにしたって」
「俺にそういう存在がいる事自体が意外だったんじゃねぇか」
「そんなことはねぇさ!…それよりひとつ聞きてぇんだけど、あの子、どこの子なんだい」
「…」
小十郎は慶次に視線を向け、固い表情に目を細めた。はぁ、と小さくため息をつく。
そして同じ頃、先頭の二人が二人の会話に気がついた。
「…てめぇの事、となると…豊臣の事でも言ったか」
「あの子、豊臣にいたのかい」
「オイ風来坊、豊臣にいた野郎がなんで小十郎のwifeになるんだよ」
慶次の言葉に、小十郎が答える前に政宗が呆れたように返す。幸村が政宗の言葉にばっ、と政宗を見た。
「…片倉殿…奥方が出来たのでござるかっ?!」
「よく分かったなアンタ」
「え、なんだあの女の子奥さんになったの?」
「知っておるのか佐助ぇぇえ?!」
「奥さん奥さんうるせぇぞ!!」
小十郎がそう怒鳴ると政宗は楽しそうにケラケラ笑い、幸村は顔を真っ赤にさせて佐助の方へと顔を向ける。
小十郎はちっ、と小さく舌打ちをした後慶次を見た。
「…あいつはこの世界の人間じゃねぇってことだ」
「え?」
「分からないでいい。あいつも無駄に語ることはねぇ、命に関わりかねないからな」
慶次は小十郎の言葉に不思議そうに首をかしげたが、そこまでの興味はないのか、それ以上は聞かなかった。
慶次は視線を前に戻し、自嘲気味に笑う。
「…ちょっと説教されちゃったよ。俺が秀吉を許せないのは、殺されたのが特別な人間だからだろ、ってさ。秀吉を悪と見なすなら、利たちも悪だろって」
「…」
「確かに、そういわれちゃうと、やってることは同じなのかもしれないけど…同じじゃねぇんだよ」
「ならそう言やよかっただろ」
「…なんか言えなかったんだよ、あの子に」
「あいつはお前が思ってるほど頭よくねぇぞ」
つっけんどんな小十郎の言葉に思わず慶次は、はは、と笑う。小十郎はむ、としたように慶次を見た後、視線を戻した。
「俺にもどう違うのか、彼女に説明できるほどちゃんと言葉にできないからかな。俺馬鹿だからさ」
「…」
「それに、やっぱりあの子頭いいから、俺みたいに突っ走れなくて、それでもってきっとそれが、悔しいんだろうね。そう感じたよ。…でも、アンタの事はすっごい好いてるってことは分かったよ!」
「なっ…こんなときにふざけたことを!」
「ふざけてねぇって、だって彼女にアンタと独眼竜の邪魔はするなって言われたからさ!」
「…あぁ、確かにあいつ小十郎にぞっこんだな」
「破廉恥なぁぁぁっ!!」
「お止めください!!!」
ぎゃあぎゃあと騒がしい三人を見ながら、慶次はふ、と薄く笑みを浮かべた。
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