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もうお前を離さない69



一発の、静かな銃声音。

「ッ、く…っ!」
「幸村!」
サイレンサーをつけていたのだろう、大きな発砲音は聞こえなかったが弾は幸村の踏み込んだ右足を掠めた。
血が吹きだしかくんと膝が折れたが、どういった運動神経をしているのか、突き出した右手だけで体を支え、転びそうになった勢いをそのままに手の力で跳躍し空中で前転すると同時に半回転して男達に向き合う形で着地した。宮野は慌てて幸村に駆け寄る。
「…黎凪、道場から槍を持ってきてくれぬか?」
「あ、足は…」
「これくらいは大丈夫でござるよ。それよりも早く!伊達殿を背負いながらでは…」
「…ッ、分かった!」
宮野は一瞬だけ躊躇った後、男達を見てすぐさま駆け出した。
幸村は少しの間だけ怪我を押さえて身構えた。
「伊達殿!しっかと掴まっていてくだされ!」
「真田…ッ…俺は捨ててけ…!盛られたのは毒じゃねぇ、殺すつもりはねぇはずだ…っ」
「伊達殿を置いていくなど出来ませぬ!いいから掴まっていてくだされ!」
幸村は迫ってきた男のこぶしを受け流し、がら空きになった男の腹に当て身を当てる。がくんと崩れた男の体を別の男の方に突き飛ばして、どうやらボス格らしい男の方へ向かうため跳躍し目の前にいた男の頭に着地してさらに跳躍した。
地面に着地したと同時に向けられた銃口にとっさに横に跳ねて電信柱の後ろに隠れる。チュイン、と銃弾が弾ける音がした。
「!!」
幸村は僅かに見えたピストルに息を呑んだ後、電信柱から突き出している突起を見つけた。ピストルを持った男が回り込んできたので跳躍し、幸村はその突起に掴まった。
「なっ!」
男が驚くのも無理はない。その突起は地面から約3メートルの所にあったからだ。
幸村はそんな男には目もくれずに体を折り曲げて突起に足を添えると、手を離すと同時に勢い良く突起を蹴った。そして空中で回転して、大きな勢いをつけた踵蹴りを見事男の頭に命中させた。
「ぐぁっ…」
男は小さく呻いて倒れた。幸村は他の男達に向き直り、地面を蹴った。
「人を背負いながらあの動き…。化け物かアレは」
「…だが、顔は悪くねぇんじゃねぇか?」
「…あぁ確かにな。頭領好みの顔だ」
ひそひそと相手側が何か話している。幸村は気が付いていないようだったが、伊達は気が付いたようだ。
「……まさかこの薬…」
「?どうなされた伊達殿」
「ッ幸村!やっぱりお前は逃げろ!」
「?」
幸村が何事か聞き返そうとした時。

―――――パスッ

そんな音がして、次いで幸村の腕から血が吹き出た。
「なっ…い、いつ引き金を…ッ?!」
そして撃たれたのは腕だったのに、幸村はその場に崩れた。
「な…体に…力が入らぬ…っ!」
「…麻酔銃か!」
幸村の上から転がり落ちた伊達は、男達を見て忌々しげに舌打ちした。
 近寄ってくる男達が逃げる事もできず、あっけなく捕まってしまった。両脇を掴まれて抱えあげられ、伊達は精一杯相手を睨んだ。
「戻って貰いますよ、伊達の次期頭領」
「…ッ!真田に…こいつには手を出すな…ッ」
「真田…聞き覚えのない名前ですな」
「こいつは組の野郎じゃねぇんだ……手を出すと…痛い目見るぞ…」
「ほう。それはそれは…それはまた、名のある組の方なのでしょうかねぇ…?」
「っ違う、こいつはカタギだ…ッ」
「調べれば分かることですよ。…おい、そいつも連れてくぞ」
「く…ッ」
幸村は朦朧とする意識をなんとか保たせながら、拘束しようとする男から逃れる手立てを考えていた。腕の出血は大したことではない。
「……黎凪…っ…御館様…ッ!!」
そう呟いた時だ。

「幸村っ!」

宮野の声がした。そして幸村の頭のすぐ隣に、幸村が愛用している十字槍が突き刺さった。

もうお前を離さない68

「…まぁ、それを覚悟している人しか戦場には立てないか」
「…、黎凪…。大丈夫か?」
「大丈夫だよ。…大丈夫、乗り越えてみせる。…ただ、幸村はそうならないでね」
「?」
「戦いに慣れないで。慣れた方が楽だろうけど…慣れないで。…戦っている相手も、同じ人間だということを…忘れないで戦って欲しいんだ」
「無論!常日頃忘れないように、心掛けているからな」
「…そっか。よかった」
そう言って笑ってみせると宮野は少し安心したように笑い返した。
「…政宗殿も、楽しんでなどはいないと思うぞ」
「…そうかな」
「戦の時、男は皆血がたぎる。少なからず…、その、……興奮、するものだから、その、」
「…。本当にそうなんだ」
「は、はっ?」
「いや、なんでもない。…要は興奮してハイテンション…っていうか陽気になってる、って事?」
「陽気…というよりとにかく興奮していられるのではないだろうか?」
「…まぁ、楽しんでなければそれでいいんだけどね。どうせ敵だし」
「最後の言葉が妙に刺々しいぞ」
幸村は苦笑しながら宮野の頭を優しく撫でた。宮野は意外そうに幸村を見上げたが、楽しそうに笑うと気持ち良さそうに目を閉じた。




 「あれ、伊達さん。…何してんですか?」
二人が家に帰ると、階段に伊達が座っていた。気が付いた宮野が声をかけると、ぴくりとその肩が跳ねて伊達は顔を上げた。
「……宮野か…」
「…?って伊達さん顔真っ赤!!ちょ、大丈夫ですか?!」
「悪い匿ってくれ…」
異変に気が付いた二人が慌てて近寄ると、伊達は息をやや荒げていた。幸村はふらりと揺れた伊達の体を慌てて支える。
「かくま…ッ、何かに追われていられるのでござるかっ?」
「追っ手はなんとか撒いた…ただ、もう動けねぇ…だが見つかるわけにはいかねぇんだ…」
「…?」
「取り敢えず私の部屋に!幸村、伊達さん連れてきて!」
「承知!では失礼いたす!」
「う…ぉっ?!」
幸村は伊達の脇と膝の下に腕を差し入れると、軽々と伊達を抱えあげた。伊達は少しばかり驚いていたが、本当に体が動かないのか抵抗はしない。幸村は右左と周りを確認した後、階段を駆け上がった。
 「大丈夫でござるか、伊達殿」
「…あぁ…盛られた薬が抜ければ…」
急いで布団を敷いて伊達をねかせた。伊達が言うには、今日は父親つまり現頭領が同盟を結ぼうとしている、隣県の組へ代理として交渉に行っていたらしい。そこで何かはよく分からないが薬を盛られ、捕らえられそうになったのでなんとか逃げてきたのだという。
「なんとも卑怯な…!」
「携帯も奪われちまったから小十郎にも連絡出来なくてよ…。悪いが小十郎に連絡してくれねぇか…?」
「わ、分かりました…。何か欲しいものは?」
「いや、何もいらねぇ…」
宮野が携帯を取り出したのを見た後、幸村はぴくりと体を揺らすと静かに外を見た。
幸村の行動に伊達も体を起こすと外をのぞき見る。そこには黒いいかにもな車が止まっていた。
「ちっ、奴ら…」
「……どうやらばれている様でござるな」
「なに?」
「殺気が感じられまする。黎凪、片倉殿はなんと?」
「…はい、分かりました。道場の方に逃げてくれ、3分で駆け付けると」
「伊達殿、行きまするぞ!黎凪、飛び降りられるか?」
「大丈夫、ガムテープでドア塞いだら…。よしっ大丈夫行こう!」
「……お前等…」
幸村は伊達を背負うと、外の人間が皆建物内に入ったのを確認して、車目がけて飛び降りた。宮野もそれ続く。
車に飛び降りたことでばこん、と車が音をたてた。一斉に振り返った男たちを尻目に二人は同時に走りだす。
「伊達が逃げたぞ!」
「追えー!」
「…ッ…お前等を巻き込みたくなかった…ッ」
「ご安心くだされ、1週間しかいられませぬ故」
「はっ?」
「とりあえず今は逃げます!」
宮野は紐ベルトに挟んできた兜割りを抜きながら、幸村は後方に目を向けながら地面を蹴った。

もうお前を離さない67

「そっかー……あと最大で1週間、か…」
「……黎凪は…いいのか?」
「!!なな、何が?」
「…最大で七日間。場合によっては、明日かもしれん。某が知るべき事を全て知れば、七日を待たず某は元の世界に帰る。…想像していたよりずっと早い」
「…?」
「某と共に来ると、友ともう、会えなくなるのだぞ」
「…あぁ」
幸村の口調が突然砕けたのに驚きながらも宮野は小さく呻いた。んー、と顎に手を当てて唸る。
「幸村と友達。秤にかけて、重い方は幸村だよ」
だが結果はすぐに出たらしい。宮野は柔らかい笑みを浮かべて幸村を見た。
「?」
幸村は何が言いたいのかよく分からず、首を傾げた。
「…友達に、皆に会えなくなるのは辛い。でも、幸村に会えなくなるのはもっと辛い」
「な…ッ!」
「私は幸村と一緒にいたい。それだけではだめ?…ってちょっとー」
幸村は宮野の言葉に林檎のように真っ赤に赤面した。
「なっななっな…っ!」
「異常破廉恥感知器は未だ健全ってところかぁ…。…私は幸村が一番なんだって、何度も言ってるじゃない」
「…されど…よくよく考えてみれば某達は出会って七日しか経っていないのでござるな」
「…そういえばそうだね。…すんごい一目惚れ…。まぁ、時間にしたら168時間もあった訳だし」
「168時間?」
「336刻」
「…そう思うと時間があったように思うでござる」
幸村はそう言いながら、顔の赤みを引かせようと片手で顔を覆った。宮野は苦笑している。
「…ねぇ幸村。…私さ、いつも不思議に思うことがあるんだ」
「?何がでござるか?」
「どうして伊達政宗は、戦の時あんなに楽しそうなんだろうっ、て…」
ぽすっ、と宮野は幸村の腕にもたれかかった。幸村はそんな宮野に少し焦りながらも見下ろした。
「Let's party.パーティーっていうのは宴会の事なんだけどさ。…なーんであんな楽しそうなんだろ」
「…別に楽しんでいるわけではないと思うでござるよ?」
「…の割には結構笑いながら戦ってない?あ、幸村を除いて」
「…某を除かれたらよく分からないでござるが…。…ただ、戦いに関して恐怖を覚えるような方ではござらんよ」
「…そうだよね。…私は、あんまりそういうのよくないと思うんだ」
「…?戦いに恐怖を覚えた方がよいと?」
幸村の言葉に宮野は頷いた。そして膝を抱え、僅かに腕の間に顔を埋める。
「戦いで人を殺すことに慣れちゃいけないと思うんだよね…」
「殺すことに…慣れる?」
「恐怖を覚えないということは人を殺すという事に恐怖を覚えないって事でしょ。…私はさ、凄い怖いんだ、人を殺す事が」
「…怖い?何故?」
幸村はできるだけ優しく尋ねた。絶対的な強い力に恐怖を感じたことはなくはない。だが、人を殺す事に恐怖を感じた事はなかったように感じられた。
宮野は幸村の問いに少しの間言い渋った後、ぽつぽつと言った。
「人を殺すとその人にもう、明日は来ない。その人の存在がそこで終わっちゃうんだ」
「…確かに」
「人間の存在ってこんなにはっきりしてあるのに、死んだら何も残らないんだよね。…そのはっきりしているはずなのに曖昧な物を壊すのが、私には怖いんだよね」
「はっきりしているはずなのに曖昧…」
「私が殺さなければその人にも私と同じように明日があった。…殺すのはその人の人生に強制的に終止符を打つって事。……私みたいに生きようが死のうがどうでもいい人ばかりじゃない、生きたくて戦ってる人もいると思う。…そういう人の未来を奪うのが、私は怖い」
「……黎凪…」
ぽつぽつと紡がれた言葉に、幸村はどう答えるべきか迷った。

もうお前を離さない66

「…宮野殿を連れていくには、貴殿の犠牲が必要なのでござるか?」
「そうなりますね。まぁ、どの程度の血が必要なのか分かりませんが」
「…ッ」
「ま、待ってください明智さん!私、誰かを犠牲にしてまで…ッ!!」
宮野の言葉を、明智は手を出す事で止めた。その顔は僅かに笑っている。
「真田は貴女無しには知ることが出来ないことを持っている。それは仕方ないことなのですよ」
「で、でも…!」
「それが明智が血の運命」

「…ッ!!私は運命なんかで貴方に犠牲になってほしくないっ!」

宮野の言葉に明智は意外そうに目を見開いた。幸村は宮野を止めようとはしなかった。
宮野の目にかすかに涙が浮かんでいる事に気が付いても、止めるべきでないと思ったからだ。
「長年の…幾年の契りなんかで今を生きてはいけないだなんて…ッ、そんなの私は嫌です!血なんて関係ない、貴方は貴方だ!」
「…はぁ……いくとせ、など古い言葉を使いますね…」
「星の声だとか血だとかどうでもいいですから、そんなものに縛られない判断をしてください!」
「…。あっさり言ってくれますね…」
明智はしばし呆然とした後はぁとため息をついた。ポリポリと頬も掻いている。
「……。心遣いは無用でござる、明智殿」
「!」
「貴殿の思うようにしてくだされ」
「…私ねぇ…自己犠牲主義は嫌いなんですよ……」
「狽ハぉっ!」
どんよりとした空気が目に見えるほど、明智は大きなため息を吐いた。
「…やりにくい人達ですね。私にその気が無いなら最初から話しませんよ」
「「!」」
「私がやりたくないことをやるわけないでしょう」
明智は長い髪をいじりながら再びため息をつく。宮野と幸村は確かにと思ってしまったので何も言えず、ただ俯くしかない。
明智はしばらくそうやって髪をいじっていたが、その手を止めるとぽむぽむと二人の頭を叩いた。
「気持ちだけ有り難くいただいておきますよ。憎まれっ子世にはばかるといいます、そう簡単には死にませんよ」
「…明智さん…憎まれっ子って自分で言いますか……」
「真田さんも、次こんなこと言ったら宮野さん貰っちゃいますからね」
「狽なっ!」
「さて、話を戻しますよ。ですから、宮野さん。別れを告げたい人がいるなら今のうちに」
「…ッ、はい」
「それから真田さん。…星の声が言うには、今貴方の軍は戦の真っ只中だそうです」
「…!」
「相手は私には分かりませんが…どうやら貴方に化けている者がいるようで、貴方がいなくなった事を敵方は知らない模様」
「…佐助か……」
幸村は僅かに顔を歪めた。敵方が気が付いていないのは幸いだが、あと1週間発覚されずにいられるか…。不安は消えない。
「…政宗殿が、来なければいいのでござるが…」
そう小さく呟くと、明智は少し不思議そうに首を傾げた後こほんと咳払いした。
「…まぁ、そういう事ですから帰った時は人目にお気をつけて。それと、ウォーミングアップはしておいた方がいいですよ」
「うぉおみんぐあっぷ?」
「戻ってすぐに戦闘はやや厳しいでしょう?」
「…まぁ確かに…この道場でも対応に疲れはしまするが稽古のみでは物足りなさすぎるほどではござる…」
「師範だからかかり稽古も受けるばっかだしね」
「星の声は戻す場所まで完璧には出来ません。もしかしたら敵武将の頭の上に落ちるかもしれない」
「迫獅ソるのでござるか?!」
「臨機応変に対応出来るよう、体は万全の状況に。では」
明智はそれだけ言って、二人が止めるまもなく部屋から出ていった。

もうお前を離さない65

「他意はねぇ。…からかっただけだ」
「片倉さん!からかわんでください!」
「からかわれるのは伊達殿でたくさんでござる!」
「おめぇな」
宮野と幸村の赤い顔を見ながら、片倉はくすりと笑った。宮野はため息を吐きながら真っ赤な幸村を抱え起こした。幸村は転んだ際にあちこち打ったのだろう、ふらふらとしてその身を宮野に預けている。
「…じゃあもう帰りますから…」
「おぅ。気をつけてな」
ひらひらと手を振る片倉に宮野は苦笑しながら幸村を引っ張っていった。


 「いたたたた…」
「曝r擦ってるじゃん!あーあ…真っ赤になってる、ちょっと冷やすよー」
「冷やす?」
宮野はあくせくと動きながら、濡らした手ぬぐいを持ってきた。
?マークを出す幸村の腕をさっと持ち上げると遠慮せずに手ぬぐいを押し付けた。
「いつっ」
「はい我慢我慢」
「………」
幸村は地味な痛みを感じながら、ちらりと宮野を見た。宮野は優しい手つきで幸村の傷を手当てしている。
「…?幸村?」
「……………」
「幸村…どうしたの?あ、もしかしてそんな痛い?」
「…いいでござる」
「へ?」
幸村はそう断ると宮野の手を離した。宮野はきょとんとしている。
「…幸村?」
「…久しぶりに…痛みを感じ申した…。…今はなぜか、忘れたくないのでござる…」
「幸村…」
「人間肉体的な痛みもそう簡単には忘れませんよ」
「「狽ャゃあ!」」
いつの間にか、明智がやってきていた。幸村と宮野は同時に悲鳴を上げ同時に抱きつく。
明智は珍しく目をパチパチとさせ、そしてクスクスと笑った。
「これはこれは…邪魔をしてしまったようですねぇ…」
「い、いつから?!」
「それは内緒です、くくく…」
はっとして二人は離れた。明智はそのままでも構いませんよ、と言いだし幸村を赤面させた。
「な、何しに来たんですか?!」
「星の声の話をしにです」
「「!」」
明智の言葉に二人の焦りは同時に消えた。明智はまたくすりと笑う。
「伊達君から少しは聞いたようですね」
「…幸村はあといくつ知るべきなんでしょうか?」
「いくつかは私にも分かりませんが、おそらくじき帰れると思いますよ…」
「!まことでござるか?!」
「星の声とて、常に自由には動けません…制限時間があります…」
「…幸村が来てから、まだ1週間しか経ってませんけど」
「今回の場合は二週間です」
「あと1週間?!」
さらっと言ってのける明智に焦りつつ宮野は突っ込む。幸村はしばし考え込む様子を見せた後明智を見た。
「何故そうだと?」
「他者には話せない事です。…と言って納得しそうな顔ではありませんね…」
「…」
すぅ、と明智の顔から表情が消えた。幸村はそれに動じる事無くただ明智を見た。
「星の声が現れた時、その力となるのが我が血が定め…」
「!!」
幸村は僅かに刮目する。明智は彼にしては珍しい真面目な顔で続ける。
「星の声はあくまで存在があるだけで形はない…。形がどうしても必要な時に、星の声に使われる人間、それが我が明智なのですよ」
「…。…話してくださり、ありがとうござりまする」
「礼に及ぶ程のことではありませんよ。今この世界では、星の声を知るものそれ自体が少ないですからね」
「…あと1週間…。それまでに全てを知れなかったらどうするんですか?」
「そのときはそれまで…。強制的に宮野さんも真田さんの世界に連れ去られるだけですよ」
「!」
「星の声は他の世界の人間を巻き込むことをよしとしませんからね」
明智は肩を竦め小さくため息を吐き、目を逸らした。
「……次元を歪めるには明智の血も必要らしいですしね」
「?!」
幸村は明智の言葉に目を見開いた。
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