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もうお前を離さない365(終)

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関ヶ原の地にて戦乱の世に終止符が打たれてから、早くも9年が経った。

―エピローグ―

「独眼竜!」
「!家康か。久しぶりだな」
「あぁ!そうだな!」
上田の側に、徳川と伊達の姿があった。供に連れているのはそれぞれ片倉と本多だけだった。
徳川はにっ、と笑う。
「三回目は大阪だからな。真田の所に寄ってから向かうつもりなのだろう?」
「Ha!!当然だろ?」
2人はそう言い合いながら上田の地に足を踏み入れた。

終戦後、日の本の統治は、誰かが頂点に立つのではなく、地域に別れて行われる事になった。

奥州は伊達・最上・佐竹
関東は北条・宇都宮
中部は武田・上杉・徳川・前田
近畿は石田・大谷・小早川
中国は毛利・尼子
四国は長曾我部・鶴姫
九州は島津・大友・黒田

といった具合に別れた。
雑賀衆はどこにも属さない、スタンドアローンな組織として雑賀荘にいる。
武器は各々の地域の倉に保管され、その倉には固く錠がかかっている。その鍵を持っているのはその地域を治めるトップ達だ。
そして、誰か1人挙兵したならば、他の地域の者は全力を持ってその相手をする。挙兵しようものならば、日の本全てが即座に敵となる。

そのように、定められていた。

そして3年に一度、各地域のトップが一ヶ所に集まり、現状の報告をしあう事になっていた。
一回目は三方ヶ原、二回目は仙台。そして、三回目の今回は2人の向かう大阪だ。
「てん!は!ぜっそう!」
「?なんだ?」
上田の地に踏み入れた2人の所へ、小さな影が走りよってきた。
その小さな影は2人の前まで来ると勢い良く頭を下げた。
「お初にお目にかかりまする!伊達政宗殿、徳川家康殿!」
茶色掛かった髪色のそれは、小さな男の子だった。きらきらとした瞳で2人を見上げていた。
2人はその少年の正体が分からず首をかしげる。伊達は膝を折り、その少年に視線を合わせた。
「…Sorry,アンタは誰だ?」
「ぞうり?」
「幸昌!何をしておるのだ!?」
そんな3人の所へ、勢い良く真田が走ってきた。
少年は嬉しそうに真田を振り返る。
「ちちうえ!」
「…父上ッ?!」
「Oh…アンタ子供が出来たのか」
「お久しゅうござりまする、政宗殿、徳川殿。某の倅の、幸昌と申しまする」
「そうか、真田の子か!よろしく頼む、幸昌!」
徳川はにこりと笑うと幸昌の頭を撫でた。
「道理で前回宮野殿が来なかった訳か…いや、今は宮野ではなかったか。この子の齢は?」
「は!五つになりまする!」
「Ah〜、暑苦しいとこはアンタに似たな」
「そうでござるか?そんな事より、お二方はこれより大阪へ?」
「そんな所だ。アンタもそうだろ?」
「いかにも!黎凪は石田殿の奥方に呼ばれ、先に行っておりもうす故、某と幸昌で出立するところでござった!」
「ならば一緒に行くか!」



 数日後、真田達は大阪にたどり着いた。
「三成!あの3人を何とかしやれと申したであろう!」
「3人には言っている!」
「?…何してんだアンタ等」
大阪城に入るなりそう言い争っている石田と大谷に遭遇した。
珍しい言い争いに伊達は思わず声をかけた。
「!来たのか…」
「お前が刑部と言い争うなんて珍しいな」
「………」
「………」
徳川の言葉に2人は気まずげに顔を逸らした。
と、そこへ。
「…見つけた!」
「!」
「あ、待って!」
「刑部が逃げた…?」
弁丸より少し大きい2人の少年が現れた。最初に声を上げた方は灰色掛かった髪色で、もう1人は銀髪だった。
そして、特徴的な髪型をしていた。
「…あの前髪、アンタの子供か?石田三成」
伊達は小さく噴き出してそう尋ねる。2人ともふわふわとした髪なのに、前髪の一部分が石田のように尖っていた。
「…ふん」
「!父上、」
「父上!何故刑部は逃げるのです?!」
石田に気が付いた子供達は石田に駆け寄った。腰を屈めた石田ははぁ、と小さくため息をついた。
「貴様等に病が移るのを恐れているからだと言っているだろう」
「ならば何故は父上や母上はよいのです?」
「幼子の方が体が弱い。私より貴様等の方が病が移りやすいと言っただろう。…分かってやれ。刑部は貴様達が大切なんだ」
「〜〜〜〜〜…」
ぶぅ、と2人は僅かに不貞腐れたが、石田の言葉を聞き入れたようだった。
「…?父上こちらの殿方は?」
ふ、と2人の内で落ち着いた、灰色掛かった髪色の方の少年が徳川達に気が付いた。
「ワシは徳川家康だ。青い方は伊達政宗、赤い方は真田幸村とその嫡子、幸昌だ」
徳川がそう紹介すると、その少年は居住まいを直した。
「我は石田重家、こやつは重成と申す。以後お見知りおきを」
そう言って軽く頭を下げた。重成はぷい、と外方を向いた。
「重…家?」
「…アンタが息子に家の字を使うとはな…」
「名付けは刑部と芽夷に任せたからな」
石田はそう言うと立ち上がった。
「そんな所につったっていないでさっさと入れ。…そういえば、毛利と長曾我部にも子が出来たそうだ」
「何?!」
「ははは!ワシ等も呑気にはしていられんなぁ」
「そういえば、未だ独り身なのは徳川殿だけでござるな」
「言うなよ真田!」


 「えぇーん隆元様ぁー」
「長曾我部元親!貴様姫を泣かせるとは何事ぞ!焼け焦げよ!」
「ぅあっち!おい毛利ィ!アンタどういう教育してやがる!」
「貴様こそ、己が娘を泣かせるとはどこまでずぼらなのだ」
大広間に行くと、長曾我部と毛利が騒いでいた。どうやら長曾我部が娘を泣かせてしまったらしい。
隆元様、と呼ばれた少年はその女子を背に長曾我部を睨んでいた。
「元親!何の騒ぎだ?」
「!家康か、久しぶりだな」
「貴様長曾我部!姫に謝れ!」
「お前なァ俺はその姫の父親だぞ?!」
「この子達はなんだ?」
徳川がそう尋ねると、少年はきっ、と徳川を睨み上げた。
「我が名は毛利隆元!姫は父などと認めたくはないがそこのずぼらが姫の愛姫だ」
「ずぼらじゃねぇ!」
「…取り敢えず、お前達の子供は仲がいいんだな、毛利」
「ふん。長曾我部の嫁に似て聡明な女子故、構わぬ」
「おいお前な!」
「奇遇だな、愛姫は俺の嫁と同じ名前だ」
「なんと!」
「あ、独眼竜に権現。来てたんですか」
と、そこへ宮野が顔を出した。その後ろから村越も顔を出す。
「お久しぶりです皆さん」
「お久しゅうござりまする!」
「さっき重家と重成に会ったぞ。三成というより、秀吉公と半兵衛殿に似たな!」
「そうですねー…私も癖毛戻っちゃいましたし」
「そういえば、芽夷は縮毛矯正してただけで元は天パだったからね。あの二人はまぁ、見事に髪型は遺伝したね。辰姫ちゃんにも」
「辰姫?」
「あの二人の妹です。辰ーおいでー」
村越がそう呼ぶと、襖からひょっこり銀髪の少女が顔を覗かせた。
「我の姫の方が美人よ」
「な、な…!隆元様…!」
「おい!俺はまだ認めてねぇぞ!手ぇ出すんじゃねぇ」
「?」
「…!」
真田の体の影から顔を見せた幸昌の顔がみるみる赤くなっていった。視線があった辰姫はきょとんと首をかしげる。
「お?幸昌顔真っ赤じゃねぇか」
「!!!!は、はれんちぃぃぃぃ…!」
「あっ気絶した!」
あはははは、とその広間に笑い声が広がった。



「さぁさ!今日は終戦記念日だ、皆盛り上がっていこう!」
夜。前田慶次の合図と共に恒例の宴会が始まる。
宮野はその輪から1人離れ、空を見上げた。
「………、出てきなよ、星の声」
『あれ、気が付いてた?』
宮野の声に応えるように、光の球が姿を現した。
宮野はくすり、と笑う。
「最近気配を感じてたからね。…これで、いいのか?」
『うん、大丈夫。僕ももう消えるよ』
「そうか。…最後に1つ聞かせてよ。アンタは誰の心から生まれたんだ?」
宮野の問いに、星の声は楽しそうに回った。

『君だよ』

「!」
その言葉を最後に、星の声は姿を消した。宮野はしばらく呆然とその場に立ち尽くしていた。
「黎凪ー如何したー?」
「早く来いよ!毛利の倅が芸を披露するみたいだぞ!」
「ははっ、今行きますよ!」
宮野はそう言って笑うと、輪の中へと戻っていった。




―END―
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もうお前を離さない364

しばらく2人はそこで飲みあっていたが、騒がしくなった坂の上の様子が気になり、戻る事にした。
「Gooo tooo Heeeeell!!」
「?!ど、独眼竜?!」
「ぎゃぁぁあぁぁぁぁ!!ぼ、僕は関係ないでしょぉぉぉぉっ?!」
「Shut up!」
「な、なんだってんだ?!」
「お、落ち着け独眼竜ー!!」
何故か伊達が小早川向けて刀を振り上げていた。
徳川はそんな伊達を後ろから抱きついて止める。普段諫める片倉はどうした、と振り返ると、頭を抱えてうなだれていた。
毛利と大谷は肩を震わせて静かに笑っており、石田はどこか真剣に考え込んでいて伊達を止めようとすらしていなかった。
「な、な、な、なんなんだ?!」
「独眼竜、あくまでも私の世界の話ですからね?そんでもって、実際付き合ってたのは貴方ですからね?」
「だぁぁぁぁぁッ何やってんだアンタの世界の俺はァァァッ!!」
「!宮野殿、これは何の騒ぎなんだ?!」
徳川は刀を地面に突き立て、片倉と同じように頭を抱えた伊達と、困ったように眉間を寄せ、顔に手を当てている真田の隣で平然としている宮野とを交互に見た。
宮野は村越と顔を見合せて小さく笑う。
「いやー、大将になった毛利から何かしろ、と言われたので私の世界の小早川殿の話をしたんですよ」
「…なんで独眼竜が怒るんだ?」
「聞かせましょうか?」
「No!!もう聞きたくねぇ。いや、また聞いたら小十郎が再起不能になる!!」
「そんな話なのか?!」
「カラオケ行った後言ってた奴だよね。いやー流石にショックは大きいみたいだね…関係ないのに」
「一体何なんだ?!おい、毛利!笑ってんじゃねぇ!」
長曾我部は伊達を横目に見ながらようやく笑いが収まったらしい毛利に詰め寄った。
毛利はどこか長曾我部を馬鹿にしたような笑みと共に見上げた。
「…ふん。貴様は聞けば確実に笑うぞ、長曾我部よ」
「何だと?」
「どうやら奴の世界の金吾は女子ではなく男子が好色であったようでなァ」
「………え?」
「竜の右目の嫡子を追い掛け回しておったそうだ」
「な?!」
思わず長曾我部は口元に手を添えた。
「黙れ黙れ!!あくまで宮野の世界の話だ!」
「と、いいつつ一番気にしておるのは主らではないか」
「〜〜〜〜!宮野!そいつはちゃんと婚約すんだろうな?!」
漸く顔を上げた片倉はそう宮野に問うた。
「ん?あぁ、真田幸村…正しくは真田信繁っていうんだけど、まぁとにかく幸村の娘阿梅と」
「それがし?!」
「ちなみに真田信繁のお嫁さんは大谷吉継の娘ね」
「?!」
「そんでもって真田信繁の親父さん、真田昌幸のお嫁さんは、石田三成のお嫁さんと姉妹だったそうな」
「えぇぇ?!三成のと?!」
「いやー血縁関係は面白いですよ?真田信繁の兄真田信之のお嫁さんは本多忠勝の娘だし、伊達政宗の娘の五郎八姫は徳川家康の息子と結婚する」
「忠勝ぅ?!」
「言っときますけど、ここは本ッ当に反映されてませんからね?そもそも小早川秀秋は豊臣秀吉の養子だし、石田三成と直江兼継は義兄弟だし」
「養子だとぉぉぉぉぉぉぉぉッ?!」
「お前がまず驚くべきは義兄弟の方だろう三成?!」
「…ッだぁーはははははっ!!アンタの世界面白ぇなァ!」
ぷるぷると震えていた長曾我部が盛大に噴き出したのをきっかけに、愚者坂のに笑いの渦が巻き起こる。
追われていた小早川も、周りの笑い声に笑っていて、伊達と片倉も笑っていた。


それからはやんやわんやの宴会になった。王様ゲームも盛り上がり、始まったばかりの空気はどこへ行ったのかと思えるほどだ。
「石田ぁぁぁ!アンタ、婚約するんだって?」
「なっ…いや、私は、………そうだ、が……」
「真田は一体いつ式を挙げるんだ?」
「なっ!は、破廉恥なり!」
「どうせなら今やれ!」
「何を言っている!そんな適当に挙げられるか!」
「それにまだお館様にご報告しておりませぬぅぅ!」
「取り敢えず挙げる気はあるんだな!楽しみにしているぞ!」
「家康家康!毛利が鶴の字の物真似する事になったぞ!」
「嫌です〜!」
「……。宵闇の羽の方ー」
「って棒読みじゃねぇか!」
「喧しいわ超スケベ元痴漢」
「ううううるせー!」
「…幸村」
「ぅおぅ?どうした、黎凪」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ長曾我部達を見て、宮野は笑いながら真田を見上げた。
「…私、頑張ってきて、よかった。諦めないでよかった」
「!…そうだな」
「!」
真田は宮野の言葉にふ、と笑うと宮野の額に口付けた。宮野の顔が僅かに赤くなる。
「Hey!真田がイチャイチャしてやがるぜ!」
「な、なっ!別にイチャイチャなど!」
その宴会から、笑い声が絶える事はなかった。



――
―――
――――

もうお前を離さない363

『毛利様はなぁ、一見冷酷な暴君みたいに見えるけどその実徹底的な合理主義者なんだよ!捨て駒の使い道をしっかり把握してる、つまりは誰よりも自軍を知ってるお方なんだよ!』
「…!」
『アニメでは悪役扱いされてたけどなぁ、一番勝利に近いのは毛利様の采配なんだぞ!捨て駒がなんだ!捨て駒にするのは敵の同情を誘ってもしも億が一負けた場合、兵の命を助けるためかもしれないだろ!』
「…ッ!」
『万が一じゃないのかい』
ぴくり、と毛利の指が跳ねた。
『俺だったら勝てるかも分からん兄貴的存在な大らかな人についていくより確実な毛利様を選ぶ!よく考えろよ、もし戦争になったらお前ら、長曾我部とかに大将になってほしいか?!』
『…確かに、毛利は領主としてはよく出来た人だよね。実際戦になって負けたら、生きてく糧を得られないし』
『だろ?さすが漓帆分かってる!あー!マジで捨て駒になりたい!』
『ちょ、止めてそういう事言うの引く』
『つかゲームの話なんだからリアルを持ち込むなよ!』
『喧しいわ!焼け焦げろ!』
「…でした!長々とすいません」
ぷ、と村越はそこでウォークマンを止めた。長曾我部は僅かに表情を曇らせた後、ちら、と毛利を見た。
毛利は何も言わずに目を伏せていた。
「…斯様な者は捨て駒には向かぬ」
「あ、光美フラれた」
「まぁでも、光美が言ってる事、外れてはいないみたいですね。毛利殿否定しないし」
「…!!ま、待て!斯様な事は…!」
「そういう割には顔が赤いではないか同胞。ヒヒヒッ」
「お…大谷貴様…!」
「……悪ィが少し抜けるぜ」
長曾我部はそう言うと席を起った。徳川ははっ、としてそんな長曾我部の後を追った。
「はい、次いってみよー」
宮野は周りの様子を見て、にっ、と笑うと再び筒を差し出した。


 「元親!」
「!家康…」
少し離れた場所で頭をわしわしと頭をかいていた長曾我部は、徳川の言葉に驚いたように徳川を振り返った。
徳川は徳利と盃2つを持ち上げ、にこりと笑った。
「少し話さないか?」
「……、おぅ」
長曾我部は困ったように笑うとその場に座った。徳川もその隣に座り、盃を差し出した。
「さっきの、気にしてるのか?」
「…少しな。あんな毛利の顔は見たことねぇし、あぁいう見方はした事もなかったしよ……」
「気にする事はないさ。人の見方は人それぞれだ。お前の見方が間違っているとか、彼女の見方が正しいとか、そんな事はない。ただ、彼女の見方も正しいと感じたなら、次からそう見ればいいのさ」
「…家康…お前、少し変わったか?」
長曾我部は徳川の言葉に僅かに驚いたように徳川を見た。
徳川はきょとんと首を傾げる。
「ん?そう思うか?」
「いや、そういう風に言うとは思わなかったからよ…」
「はははっ、そうか。ワシも宮野殿に会って、何か変わったかもしれんな」
「…宮野、ねぇ…。あの姫さんは一体何なんだ?この世界の奴じゃないらしいが…」
「ワシも詳しくは知らん。ただ、…この今は、彼女達無しでは為しえなかった。そう思うよ」
「…確かにな。村越とかいう姫さんがいなかったら、石田も許そうなんて考えなかっただろうしよ」
「……あぁ。…複雑な気持ちになるよ」
「家康……」
「だけどワシは後悔しない。…宮野殿は、わざわざここの為に己を世界を捨ててきてくれたんだ。それに報いるだけの泰平の世を、ワシ等の手で築いていこう!」
「!……、そうだな、家康」
長曾我部はにっ、と笑うと徳川と盃を合わせた。

もうお前を離さない362

『俺はお市の方かな』
『……まつ、かな?』
『うわ、何アンタ等人妻チョイスー?!』
続いた上泉と川中の言葉に谷澤はぎゃーと悲鳴を上げそう突っ込んでいた。
『…待て待て!ちゃうちゃう人妻ちゃう!つうかそれ言うならお市の方は未亡人だろ!俺はミステリアスなのが好きなの!』
『俺は文武両道だからいいなと思っただけだー!…宮野っぽくて』
『うわー!上泉まだ引きずってんの?!』
『お前に片思いの後輩だって弓道部じゃねぇか』
『なんでお前が知ってるんだー?!』
「騒がしい奴らだな…」
ぎゃーぎゃーと騒がしいそれに石田は眉間を寄せ、片耳を手で塞いだ。村越と宮野は苦笑する。
『斯く言うお前は誰なんだよ!』
『私?私はあれだよ、松永久秀と徳川家康』
「ワシ?!と、松永!?」
「どういう趣味してんだこいつ…」
『松永は言ってる事が好きなだけだよ。そういえば、よくは知らないけど、宴では絡みあるんでしょ?』
『あぁ、松永が家康の首持ち上げてたね』
『うわ、何それ最低』
『って事は一番は徳川家康か』
『あのへそだしのどこがいいのさ?』
『一番人間くさいじゃん、家康。伊達政宗なんか片手で刀三本持つわ英語喋るわ手綱持たないわ滅茶苦茶やん!』
「てめぇ…!」
「わー!落ち着け独眼竜!な?!」
谷澤の言葉に怒りを顕にする伊達を隣の徳川は慌てて止めた。
『…空飛んでるけどなー』
『あれは本多忠勝でしょー?まぁ嫌いな所もあるけどね』
『え、あんの?』
『家康ってさー自分の心隠してるじゃない。いっつも笑顔浮かべてるけど、本当に笑ってる所って少ないと思うのよね。そういう点では家康って一番孤独な人だと思う。で、他人を心に入れない人。見てるだけで悲しくなってくる。そこは嫌い』
「…!」
徳川は驚いたように自分の顔に手を当てた。
「…相変わらず漓帆の言葉は突き刺さるなぁ…」
「え…っ?えぇっ?!」
「おい、家康が真っ赤になりながら困惑してっぞ」
「…。まぁ本題は毛利なのでスルーします」
「ぅおいっ」
「そうだ、毛利はまだなのかよ」
『…ふーん。芽夷は?』
不意に聞こえた言葉に今度は村越が飛び上がった。
「そういや私もいたんだった!」
「これで石田以外を言っていたら大変だな?ふふ…」
「孫市さん!えぇぇ覚えてない…!」
『私BASARAほとんど知らないからなー…』
『黎凪と映画は見たんでしょ?』
『うんー。だからメインの4人しかよく知らないけど…その中なら石田三成かなぁ』
「「!!」」
石田は驚いて村越を見、村越は自分の発言に驚いていた。
『えー意外。伊達って言うかと思った。三成のどこ?』
『確かにイケメンだけど…石田三成の、あの忠誠心?が』
『…あー』
『強いし、自分の意志が揺るがないし。あぁいう生き方って普通出来ないじゃない。そこは格好いいと思うなぁ』
「あーやだ恥ずかし…!」
「…ッ!」
「石田、顔が赤いぞ?」
「気のせいだ!私を見るなッ!」
『で、光美は?』
『んなもんおめー、毛利様に決まってんだろ』
『毛利?!しかも様付け!』
「あ、来た」
山中の声に周りは僅かに静かになった。
『えー?!どこがいいんだよ!』
『おま、嘗めんなよ?俺捨て駒友の会会員ナンバー記念すべき1000だからな!』
『1000人もいんのかよ!』
『毛利軍ツアーにも学校さぼって行ったよ、俺はな、波を漂流中の長曾我部よりは役に立つ捨て駒なんだぞ羨ましいだろう!』
『羨ましくねぇよ!』
「おぉい!波を漂流中の俺ってなんだ!」
長曾我部はぎゃーと怒鳴ったが笑われただけだった。

もうお前を離さない361

「みんな!今日は素晴らしき日だ!大いに飲み、食べてくれ!!」
日没後。関ヶ原の地には煌煌と灯りが灯り、徳川の言葉を合図に盛大な酒宴が始まった。
わぁわぁと一気に騒がしくなった地とは違い、愚者坂の上はどこかまだ重い空気が流れていた。
輪になって座っている彼らを振り返った徳川は苦笑する。
「…まぁ、なんだ。ワシ等も乾杯するとしよう」
「…………」
「……………」
「テンション低いなー」
「み、宮野殿!」
ずけ、とそう言った宮野に徳川は慌てたようにそう言ったが、宮野は不意に懐から筒を取り出した。
「と、いうわけで王様ゲームやるぞー」
「やるぞー」
「何をだ?」
「王様…game?」
きょとんとした武将達が宮野と宮野の言葉に乗った村越を見た。
「はーい説明しまーす。この筒の中には数字が書いてある棒人数マイナス一と大将と書いてある棒が一本入ってます。大将の棒を引いた人が、好きな事を命令できます。命令された人は絶対従わなければなりません。しかし、あまりに酷い命令だった場合は多数決で決めます」
「…なんじゃそりゃ…」
「面白そうじゃねぇか」
難色を示した黒田に対し、伊達は楽しそうに身を乗り出した。
「Hey.具体的にはどうやんだ?」
「何番と何番がこうしろとやりたす。三番が二番の好きな所を言え、みたいな感じにやります」
「おぉ…数字を引いたらひやひやするでござるな」
「このままどんよりしてても面白くねぇ。やろうじゃねぇか」
「そうだな!このままでは話も弾まない」
盛り上がる面子に、日和見だった他の面子も混じり、なんだかんだで王様ゲームをやる事になった。

「はい、大将だーれだ」
「お、俺だ」
「元親か!」
「…ってぇ言われてもなァ……。…ぃよし!二番!七番に思ってる本音を言っちまいな!」
「酔ってもいねぇのにterribleなもん出したなアンタ。おい、誰だ?」
「…七は我ぞ……」
「わ。本当だ、毛利さん七番だねぇあはははは!」
「…貴様なにがおかしい」
毛利は左隣に座った前田をぎろりと睨んだ。その右隣では大谷が肩を震わせ笑っていた。
さらにその隣の石田の隣の村越はあ、と小さく声を上げた。
「…二番私です…」
「村越殿が二番にござるか!」
「…え、黎凪どうしよう」
「へ?」
村越は隣の宮野を振り返ると、真面目な顔で、
「私毛利の事何とも思ってない」
と、言った。
ぽかん、としていた宮野だったがしばらくして吹き出した。長曾我部に至っては大爆笑している。
毛利は忌々しげに長曾我部を睨み、さっさとせよ、と村越も睨んだ。
「でもなー…。…あ、そうだ。他の子のでもいいですか?」
「はー…はー…ッ。他の野郎か?別に構わねぇが…誰だ?」
「黎凪、ウォークマン持ってる?」
「ウォークマン?あるけど、はい」
「!?な、なんだそりゃ!!カラクリか?!」
ウォークマンを見た長曾我部は思わず身を乗り出した。楽しそうに輝く目に、村越はウォークマンが解体されるのではないかと顔を引きつらせた。
「あー…後で説明しますから。今はそれよりこっち」
「ウォークマンになんかあったっけ?」
『いつまでも帰ってこないねぇあの2人』
不意にウォークマンから谷澤の声がした。宮野は驚愕して飛び上がる。
「いつ録ったんこんなの!」
「いやー黎凪が思いだしたくなった時用に?」
「あれだろ、幸村とカラオケ行った時だな?!しかしなんで曲はトイレの神様なんだ!」
「だって長いから」
「…うすっぺらいこれは喋るのか…」
『ところでさ、黎凪は真田幸村と恋仲になっちゃったけどさ、皆はBASARAキャラだと誰が好き?』
ウォークマンから続く声に周りは僅かに静かになった。
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