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貴方も私も人じゃない145

「元々武田は豊臣とは友好的とは言えない間柄。目的が済めば用はない…そうされても困りますので」
「なぁっ?!そのようなこと、一人の武人としてまた一人の男として、絶対に致しませぬ!」
「無論、失礼なことを申し上げているのは承知の上です、しかし」

「黙れ鎮流」

不意に三成が口を開いた。鎮流は素直に口を閉じ、三成の前から退いた。幸村は僅かに驚いたように三成を見る。
三成は横目でじろりと鎮流を見た。
「余計な口を挟むな」
「…失礼いたしました」
「真田幸村、貴様の好きしろ。ただし私の邪魔をするな、そして、私を裏切るな。いいな?」
ぽかんとしていた幸村だったが、三成が言った言葉にはっと我に返り、姿勢を正した。
「無論!よろしゅうお頼み申す!」
「…」
「軍師殿。…貴殿の言うこと、最もにござる……声をあらげ、失礼いたした」
幸村は三成にそう言い切ると、鎮流に向き直り、そう言って頭を下げた。鎮流は一瞬拍子抜けしたが、同じように頭を下げた。
「いえ、私の方こそ無礼をいたしました、御容赦を」
「…しかし、貴殿は……」
「?」
「幸村様ーッ!敵軍が!」
「何ィッ!?旗印は!」
「竹に雀でございます!」
「竹に…政宗殿か!石田殿、裏門から外へ!某は兵らに伝えに行きますゆえ、これにてごめん!」
「えっ?ちょっ?だからそういうのは部下がやるんだって…!」
幸村は敵襲との報を聞くと、三成にそれだけ言ってだっ、と走ってどこかへ行ってしまった。佐助は慌ててその幸村を追っていった。
三成はふん、と鼻を鳴らすと幸村に言われた通り裏門へと足を向けた。
鎮流はそれについていく。
「鎮流。気遣いは無用だ」
「…失礼しました」
「いい。真田の真意は確認できた、戻るぞ」
「…」
「不満があるか」
「…真田幸村、彼自身は…多少信用できるかと」
「ならばいいだろう。行くぞ」
「はい」
鎮流はそう返答すると、三成についていった。
 歩き出してすぐに、どぉん、と爆発音が後ろから聞こえた。驚いて振り返れば、青い装束に身をまとった男が立っていた。
ー三日月の前立てに、右目には眼帯…伊達政宗
「三成様…ッ」
鎮流が三成に声をかけると同時に、男、伊達政宗が勢いよく地面を蹴った。彼は鎮流には見向きもせずに三成に斬りかかった。三成は振り返らずに刀の鞘で受けた。
鎮流は三成が刀を抜いても大丈夫なように、数歩後ろに下がった。
「…貴様は」
「久しぶりだな、石田……。女連れとは大層な身分じゃねぇか」
「………」
三成は政宗の言葉に眉間を寄せた。鎮流も、そっと銃を抜いて持つ。
「ちょうどアンタを目指していた所だ。大阪まで行く手間が省けたぜ」
「貴様は…」
三成は少し首を傾けて後ろを振り返り、政宗の顔を見た。

「誰だ」

そして言い放った言葉に、政宗は驚愕したように動きを止め、三成に弾かれたことで数歩後ろに下がった。鎮流は一瞬ポカンとした後、困ったように頭を抱えた。
「…三成様、恐らくこの方は小田原で三成様のお相手だった、伊達政宗殿かと」
「小田原か…懐かしい。その時私に負けた男がいたが、顔など覚えているものか。失せろ」
「……ッ!」
政宗はぎっ、と表情を歪ませると勢いよく踏み込んだ。
「三成様!」
そう鎮流が叫ぶと同時に、鎮流の視界を赤い影が横切った。
ガィン、と刀と槍が交差し鈍い音をたてる。鎮流の視界を横切ったのは幸村だった。幸村は三成目掛け降り下ろされた刀を代わりに受けていた。
「!真田、どけッ!」
「ならぬ!石田殿は我が盟友…我が城にて友を傷つけること、断じて許さぬ!」
幸村はそう言い切り、政宗を押し返した。幸村はちらっ、と一瞬鎮流に視線を向ける。
「行かれよ!」
「…!」
「鎮流」
「、はい」
三成は幸村を振り返ることのないまま、そのまま歩を進めるものだから、鎮流もそれについていく他なかった。
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