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貴方も私も人じゃない154

「…嘘でしょ…一回しかしてないのに……!そんな偶然……!」
鎮流は混乱してそう小さく呟いた。
どうやら、家康に抱かれた際に、妊娠してしまったらしい。
さしもの鎮流でも混乱した。動揺を上手く隠せない。初めての体験で、一回なのに、何故、と。
「……おち、落ち着け…最後の戦までは精々一月か二月。他人にあからさまに分かるようになるのは五ヶ月六ヶ月…大丈夫、あの服を着てればまずはばれない…!」
鎮流は自分を落ち着かせるためにそう頭の中で計算する。
個人差はあるが、妊娠が目に見えてわかるようになるには少なからず時間がかかる。大体だが、自分がわかるのが四ヶ月、人に分かるのが六ヶ月と言われている。
最後の、恐らく関ヶ原で起こるであろう最後の戦まで、そう時間はかからずになると鎮流は考えていた。三成や吉継、そして何より家康自身に、気付かれることはないだろう、と。
「………でもどうするのよ、この子供…」
気付かれはしまいと一先ず安堵した鎮流だったが、すぐに別の問題が頭をもたげた。
腹の子の始末の問題だ。
そもそも産むのか。産んだところで、育てられるのか。この現状で、女手一つで育てられるのか。それに、今や憎んでいる男の子など、愛せるのだろうか。
子供のことなど考えたことがなかった。考える必要もなかったからだ。鎮流は、親になるには少し早すぎる。
鎮流は部屋に戻り、静かに身を布団に横たえた。
「………この時代の堕胎の仕方なんて知らないし……困ったな……。………終わったあとに考える、か」
今考えても、恐らく正常な判断は出来ないだろう。
鎮流はそう考え、一先ずは身体に影響が出ないように気を付けながら、戦を終わらせるしかないと判断した。

そう判断するのが、精一杯だった。



翌日。鎮流は義弘の隊と少数の三成の隊と共に、尼子晴久討伐に向けて大阪を発った。
「三成様に伝令は出したし、尼子はそう大きな勢力じゃない…平気だとは思うんだけど」
「鎮流どん、心配することはなか。おいが三成どんへの土産ばしちゃるわい!」
「…、期待しております」
「…じゃっどん、昨日に比べて随分顔色が悪か」
「え?………、少し昨日は寝付きが悪うございましたので、そのせいかと。問題はごしいません、お気になさらず」
「おう、そげなもんかね」
「ええ。それより、島津殿は尼子殿と戦われたことは?」
鎮流はあまり言及されるとボロを出しかねない、そう思ったので話題を晴久へと変えた。
「いや、なか。尼子ば毛利どんが一番近かからのう」
「……あまり派手な話はお聞きしませんし、そこまでの驚異ではないと思いたいのではありますが。毛利領に侵入する前に会えればよいのですが」
「そうじゃのう」
晴久に関しては情報が少ない。脅威と思われていなかった、というのも大きいだろう。
「…怖いな」
情報を集める猶予もない。ここまで少ないので向かうというのは、若干不安であった。
「…まぁ、やるしかないわ」
鎮流ははぁ、と小さくため息をつくと、真っ直ぐに前を見据えた。
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