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貴方も私も人じゃない153

西、背後の守りを確保し、事は順調に進んでいるかのように思えた。
だが往々にして、そう上手くは事が運ばないのが世の常である。


 「はい?尼子が動き出した?」
「はっ、毛利方の領へ向け進行中の模様です」
鎮流が九州から大阪に帰り着いたのとほぼ同時に、鎮流はそんな報告を受けた。鎮流は到着と同時で旅支度も片せぬ間に受けた報告に、額に手を当て、はぁ、とため息をついた。
「…あと少し前にやってくれれば…もう……」
「いかがなされますか」
鎮流は当てていた手を離した。頭の中で現状を整理する。
「三成様は金ヶ崎で戦の最中、毛利は北へ遠征中。この城の兵でどうにかするしかないでしょう」
「?鎮流どん、どうしたかー」
待機していた義弘が鎮流の様子に気が付き、声をかけてきた。あぁ、と鎮流は小さく声をあげる。
「あぁ、島津殿。早速で申し訳ないのですが、お力お貸し願えますか」
「なんじゃあ、戦ばおこっちょるんか」
「ええ、尼子です。同盟相手の毛利領に攻め入れようとしている動きが見られます、それを迎え撃ちに」
「!よかと、おいに任せときんしゃい!」
「ありがとうございます。今夜策をお伝えしますので、一先ず本日は休んでください」
「おぅよ」
「島津様と立花様を中へお通しして」
「はっ!こちらへ」
義弘と大友側から戦力として派遣されて来ていた宗茂を城内へ案内したのを確認すると、鎮流はふぅっ、と息を吐いた。
休んでいる暇はない。
「守衛兵!私が不在の間の報告を!」
「はっ!」



 その夜。急ピッチに組み上げた策を二人に伝え、鎮流は久方ぶりに自身の部屋に戻った。あれこれと忙しく動いている内に寝床の用意が整えられていて、鎮流は疲れたようにその布団に倒れた。
「…はぁ…………」
ようやく一息つけたことで少し気が落ち着いた。
「…明日は早いからもう寝るとするかしら…着替えないと……」
鎮流はそのまま寝てしまいたい気持ちを抑え、体をのっそりと起こした。
前面のコルセット部分の紐をほどいて緩める。木で拵えたハンガーのようなものにスカートを吊るし、上着を脱ぐ。

そこで異変を覚えた。

「……………う……?」
鎮流の制服と同じデザインのスカートは、少なからず腹部を圧迫する。それは慣れていた鎮流にとって大した事ではなかった。
九州の遠征ではほとんど着替える余裕がなかったから、その異変に気が付くことが出来なかった。
「…ッきっ………もち、」
鎮流はすぐさま寝間着に着るつもりだった着物を羽織り、慌てて外へ出た。そして井戸端で、吐いた。
「げえっ、がっ、ふ……ッ!」
げほげほと噎せ、鎮流は僅かに驚いたように視線をさ迷わせた。
「…そこまで疲れてたとは……思えな……」
吐いたせいで僅かに震える手で井戸から水を汲み、口をすすいだ。吐いてしまったものも土を被せて隠す。
そして、はっ、と目を見開いた。
「……ま、さか………」
鎮流は、ばっ、と自分の下腹部を押さえた。
少し前から気だるさは覚えていた。だがそれは、遠出のせいだと思っていた。
カタカタ、と鎮流の体が僅かに震える。

家康の所から戻ってとうに二月は経った。
よくよく考えれば、月経が、来ていない。

「……う、そ……でしょ…………」
さあぁ、と鎮流の顔が一気に青ざめる。それに反して心臓はばくばくと高鳴る。
気だるさ、吐き気、止まった月経。それだけ条件が揃えば嫌でも分かる。
「…ん?鎮流様!いかがなされました!!」
兵の声に鎮流ははっ、と我に返った。桶に残っていた水で冷や汗が吹き出た顔をぬぐう。
「ッ、なんでもありません、体を拭いていただけです」
「へぇっ?!そ、それは失礼をいたしました…!」
兵は鎮流の言葉に慌てて背を向け、戻っていった。
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