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貴方も私も人じゃない158

「……元親、が?そうか、ありがとう」
「どうした?」
翌日には、元親の行方知れずの報が家康の元にも届いていた。知らせを受けた時、同盟を締結し同室にいた政宗は家康の様子に首をかしげた。
家康はふらふらと政宗の前に座った。
「…元親が、消えた」
「…西海の鬼か。確か黒田に事の真相を確認しに行ったんじゃなかったか?」
「その後姿を消したんだ。元親だけじゃない、元親の部下も、全員だ」
「……Ah?それはちィッと妙じゃねぇか?」
「あぁ…あいつも、三成達に知られないように行ったみたいだから、西軍の中でも疑念になっているそうだ」
「西軍の中でも…だと?」
政宗は家康の言葉にぴくりと眉間を寄せた。
二人とも最初に、てっきり西軍サイドが証拠隠滅のために元親を葬ったのかと考えたのだ。
だが蓋を開けてみればそんなことはない。確かに、幸村や義弘のような人間を味方につけた中で、そう派手なことをするとは考えにくい。
では元親は一体どこへ?
政宗と家康は、どちらも眉間を寄せる。
元親が官兵衛に事実を問い詰めることで、揉めるであろう事は予想できた。だが、元親が跡形もなく姿を消すとまでは予想できなかった。
「……どうなってんだ、一体…」
「分からない…無事でいてくれればいいんだが………」
家康は、ぎゅう、と拳を握りしめた。



 「そう。徳川へはそう伝わったのね、どうもありがとう」
さらにその翌日、鎮流は配下の忍から、家康の反応を報告で受けていた。忍を下がらせ、ふっ、と小さく笑う。
「…想像力の足りないお方。まぁ、それを見越した上での派手な行動ではあるんだけど」
鎮流は息をついて、座っていた体を起こし、目を閉じた。

家康は殺されたとまではまだ思い至っていないようだ。一つの可能性として浮かんでいるのだろうが、考えたくはないのだろう。
しばらくそちらは気にする必要はなさそうだ。
一番の懸念は、やはり吉継のした事を暴いた孫市だろう。元親の死を一番最初に確信するのは、間違いなく孫市だ。
それとは別に気になることもある。元就の動きだ。
元就は北へ攻め行ったまま、あれやこれや理由をあげて全く戻ってくる様子がない。北の情報は、政宗を懸念とした半兵衛のおかげで色々と残っている、元就がそう苦労するとは思えない。とすれば、戻ってこないのは間違いなくわざとだ。
裏切りを目論んでいる可能性がある。元就の人となりから考えるに、狙っているのは漁夫の利だろう。
そうなるとまず危険になるのは幸村だろうか。幸村は今のところ使える男だ、無くすのは惜しい。関ヶ原の戦で水を刺されるのも困る。

さて、取るべき行動は。

ぱちり、と鎮流は目を開く。
「さぁて…手回しを始めるとするかしら」
鎮流はそう小さく呟くと部屋を出た。
「伝令!どなたかいらっしゃいますか!」
「はっ!」
「真田殿へ言付けを頼みます、次の通りにお願いします」
鎮流はそう言ってまずは外堀から埋めていくことにした。
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