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貴方も私も人じゃない159



それから、2週間が経った。
「雑賀殿」
「!鎮流…」
「長曾我部殿は見つかりました?」
鎮流は孫市の元を訪ねていた。孫市はまたか、とでも言いたげな顔で鎮流を見た。
「…お前はよく私に聞きに来るが、何故だ」
「何故?私の方でも探させてはおりますが、雑賀殿は長曾我部殿と親しい間柄のようですし、それに雑賀衆は情報収集に長けていると聞きます。私が探させるよりも、そちらが先に見つけるかもしれぬと思いまして」
「…………お前はどうして、そこまで元親を探す」
「?同盟を結んだ相手、危機かもしれぬのならば探すのは当然です。貴重な戦力でもありますし、行方が知れぬと言うのも奇妙な話でございますから」
「…………」
「何か変でしょうか?」
鎮流は不思議そうに首をかしげた。孫市は僅かに視線を落とす。
「そういう訳じゃない。ただ…」
「はい」
「…いや、なんでもない。疑ってすまない、元親の行方はこちらでもまだ見つかっていない」
「そうですか…ありがとうございます、こちらも人員を可能な限り増やしてみます」
鎮流はそう言うと孫市に頭を下げ、次の場所へと向かった。
孫市はそんな鎮流を見送る。
「………元親がいなくなったのと同時期にあいつは黒田の所にいた…だが、奴の態度は元親をどうにかしたとは思いがたい……私が疑いすぎなのか…?」
孫市は戸惑ったように視線をさ迷わせた。


「大谷様」
「……主か」
鎮流が訪ねたのは吉継だった。吉継は鎮流の姿を認めると、薄くその目を細めた。
鎮流は膝をついて障子を閉め、吉継の方を向いた。
「…主も恐ろしきよな、鎮流」
「何がでございますか?それより、長曾我部殿がまだ見つかりません」
「…そうか」
「人員を増員したいのですが、よろしいでしょうか?」
吉継は手元の紙片を見下ろした。どうやら吉継は、次の戦の作戦を立てているようだった。
「…50までならよかろ。だが次の戦が近い、それまでには全員戻せ、よいな」
「承知いたしました。次の戦の場所ですが…」
「恐らく、関ヶ原になろうな。あそこが場所も広く陣形を広げやすい。すでに先鋒は向かわせ、様子を見させておる」
「…さようでございますか」
「そろそろ主にも手腕を振るってもらわねば困る、なにやら近ごろ色々動き回っておるようだが?」
「ええ。色々と」
「ヒヒッ、我にもヒミツか?」
「そう語るほどのものではないというだけでございますわ。大谷様のお仕事を邪魔してはならぬと思いまして」
「………ちとこちらに来やれ」
吉継はじ、と鎮流を見据えた後、持っていた筆を置いてちょいちょいと鎮流を手まねいた。鎮流は僅かに不思議に思いながらも、中腰になり吉継の隣へとにじり寄った。
ちょこんと鎮流が隣に座ったのを確認すると吉継は鎮流に向き直り、おもむろに顔を鎮流の胸元へ寄せた。
「お、大谷様?」
鎮流は不意な吉継の行動に驚いたように吉継を見下ろした。吉継は、すんすん、となにやら鎮流の匂いを嗅いでいるようだった。
「…臭いますか?水で清めてはいるのですが」
「………チト匂うなァ。主、体調に変わりはないか」
「……………」
鎮流は吉継の言葉に、ぴく、と僅かに体を跳ねさせた。吉継も顔をあげ、鎮流の顔を見る。
鎮流はしばらく黙った後、すん、と自分の匂いを嗅いだ。
「…分かりますか」
「我はちと敏感でな。他の者は気付いておらぬであろうが。で、悪いのか?」
「孕んでおります」
「…………は?」
吉継は体調の変化は見抜いたものの、そうしたものとは全く予想していなかったらしい。きょとんとしたように鎮流を見ていた。
鎮流は困ったように笑った。
「…毎月来るものが来なくなってしまいましてね。時折理由なく吐き気に襲われることもありまして、間違いないかと」
「………徳川か。となると今は三、四ヶ月といったところか?」
「そうなります」
吉継は深々とため息をついて頭を抱えた。
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