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Not revolved transmigration 112

風魔は真っ正面から久に斬りかかる。久は見た目からそこそこ年は入っていると思われるのに、それを感じさせない俊敏さで風魔の斬撃をかわす。
久は左手の金具に仕込んであったのか、折り畳み式の、刃渡り15センチほどのナイフを取りだし、風魔の攻撃を薙いだ後突き出した。
「させるかよ!」
「!」
その瞬間、久の後ろから猿飛が飛び出した。久は楽しそうに笑い、左腕を横に伸ばし、ぱちんと鳴らした。
爆発が巻き起こり、その爆風で久は猿飛の間合いから抜け、猿飛と風魔は僅かに飛ばされた。
「だっ!」
「 ……ッ!」
「おや、服が破れてしまったな。それに、警察が来たようだ。今日のところはこれでお暇するとしよう」
「!」
「追うな小太ッ!!」
とっさに風魔は久を追おうとしたが、猿飛の声に動きを止めた。久は楽しそうに笑うと瞬く間に夜の闇に消えた。

 「…!佐助!」
戻ってきた猿飛達に真田は慌てて駆け寄った。かすがも救急箱を手に二人のもとへ走った。
「怪我は少ないね?」
「最後の爆発をちょっと避け損ねてね。火傷した」
「…しかし奴はこんな時にいったい何をしに…?」
「………………」
「…小太に会いに来たみたいだよ」
「そうなのかい?」
竹中が風魔を振り返ると風魔は頷いた。ふむ、と竹中は呟き、今度は猿飛の方を向いた。
「それで戦闘になったの?」
「そうだよ。何しにきたのか、イマイチよく分からなかったけどね」
「…明後日に向けて戦力を確保したいのか、それとも……」
「?」
「…今考えていても仕方がない!寝るよ、遠くにパトカーのサイレンが聞こえる。電気消すよ!」
「ちょ、まっ!わ、暗ッ!!」
「静かに!」
「むう、致し方あるまい!寝るぞ佐助!」
「えー?!もうなんなのコレ?!」
そんなこんなで、その日は終わった。



 翌日。新日本覇王ではこれといった証拠は出てきていなかった。伊達は屋上でぼんやりと空を見上げていた。
「…ったく、見張りがいるから息抜きできやしねぇ」
「…」
伊達がぼそりと呟いた言葉に見張りの警察官が困ったような表情を浮かべたとき、屋上に繋がる扉が開いた。
「!大谷課長!」
「!」
「ちと疲れたゆえ、代わってくれぬか?」
「は、はい!ご無理はなさらないでください!」
「あいあい」
警察官は大谷もとい尼子に頭を下げ、屋上から出ていった。尼子は伊達に向き直り、おもむろにつかつかと歩み寄った。
「よぅ」
「ここちゃんとしてんだな。帳簿が綺麗すぎて感動してたぜ」
「ま、元就さんがやってるからな。それよりどうなってんだ?」
「捏造用の証拠は俺が持ってんだ」
「!」
尼子の言葉に伊達はぎょっとしたように尼子を見た。尼子はスーツの内ポケットからフロッピーディスクを覗かせる。
「俺が適当にこのデータを忍ばせて証拠にする予定なんだ」
「そっか。ならまず証拠は出ねぇな」
「あぁ…だが松永の事だ。俺が入れなかったら別の方法で入れてくるかもしれねぇ」
「!……そうか。なぁ、尼子さんよ。1つ、お願いしたいことがある」
「?なんだ」

「この先俺が何しでかしても、信じてくれ」

「は?」
尼子は眉間を寄せた。

Not revolved transmigration 111

風魔はナイフを久に向けたまま、僅かに腰をおとして距離を取った。久は楽しそうに笑う。
「大した警戒のしようだね。まぁいい。卿の兄は元気かね?」
「……………」
「豊臣秀吉、かつてに比べて随分甘くなったようだ。それとも単に身内には甘いのか…覇王の面影は卿を凌駕する力だけ、か」

松永がそう 言い終わったと同時に風魔は地面を蹴った。ナイフを腰の高さに構え、一気に距離を詰める。
松永は笑った。
「苛烈、苛烈!」
す、と左手を前に出し、ぱちん、と指を鳴らした。
途端、巻き起こる爆発に風魔は横に跳躍した。黒い羽根を散らして姿を消す。そして松永の後ろにまわり、躊躇いなく、首めがけてナイフを振り抜いた。
だが。
「!」
ナイフは首を庇った左腕に阻まれた。がきん、と鈍い音がして表皮にナイフが刺さらない。
「生憎今死ぬわけにはいかないのでね」
破れたシャツから、金属板のようなものが見える。恐らく火薬収納と、暴発時の防具だろう。
右足を軸に振られた左足を後ろに跳躍することで避ける。再びぱちん、と指が鳴り、黒い煙を上げて、だが遠方から視認できない程度の爆発が起こった。


 「!」
「い、今の振動と音は!」
地面が爆発により揺れ、猿飛ははっ、と顔をあげた。竹中や真田も表情を険しくする。
「俺様が様子見てくる!」
「待て佐助!俺も行く!」
「何言ってんの!大将が入口から出たら入口がばれるでしょ!今んなって分かったけど、小太郎が残ってた意味ないでしょ!」
「彼が来なかったのはそういう訳か」
「俺様が影潜で行ってくるから!待っててよ!」
猿飛はそう言うなり地面に潜って消えた。真田は入口に続く階段を見上げて、ぎり、と歯を食い縛った。石田は竹中を見る。
「まさか…あの女が?」
「多分ね。何が目的かは知らないけど、今は息を潜めているに限る…」
「…風魔殿に会いに来たのでは?」
「小太郎に?」
真田はかすがの震える声にそちらを振り返った。竹中は真田の言葉を受けて、ふむ、と呟いた。
「…考えられないことじゃないな。猿飛君次第だね」
「佐助…失敗は許さぬぞ……!」
真田は天井を見上げてそう呟いた。


 「影追の術!」
猿飛は普段隠し持っている手裏剣を開き、地面に潜らせると同時に跳躍した。猿飛の存在に気がついた久は、猿飛と己の間の地面を爆破させた。
爆発に舞い上がった手裏剣を繋げてあるワイヤーで回収し、猿飛は風魔の隣に着地した。
「よっ、小太!」
「…………!」
「つれないなー教えてくれればよかったのに。また一人で行くつもりだった?」
「……。……、……………、……」
「…そ。でも助かったよ」
「!」
風魔は猿飛の言葉にはっとしたように猿飛を見、僅かに顔を赤くして俯いた。
猿飛はヨーヨーのように手裏剣を回した後、じとり、と久を見据えた。
「さぁーてと。今晩は、松永弾正」
「おや。卿には記憶があるのかね?」
「帰ってくんなーい?アンタには関係ないし、そもそも小太郎に手ぇ出すのも止めてくんない?」
「豊臣秀吉には会ったかね?」
「会いましたよー?あの人、かすがを暴漢から助けてくれたしねー。小太郎の事も許してくれてさァ」
「ほぅ、それはそれは」
久はくすりと笑った。猿飛は再びくるりと手裏剣を回して構えた。
「小太郎、行くよ」
「……!」
「俺様は左、小太郎は右ね」
猿飛はそう言うなり地面に潜った。風魔も地面を蹴って久に迫る。

Not revolved transmigration 110

「ま、確かに彼女の信憑性なんて君のところの子と同じくらいないからね」
「…ヤな言い方」
「これは失礼?でもね、片倉君は平気なんだよ」
「なんで言いきれんのさ?」
猿飛の険のある言葉に竹中はくすりと笑って口元に手を運んだ。比較的明るい月光も相まって、やたら妖艶に見える。
「片倉君は政宗君しか見えていないからだよ。今も昔もね」
「…なるほどー?そういえば、今のあの人には右目の旦那の記憶があるんだっけ?」
「そう。元々片倉君はこの件にこちら側に関わるつもりはなかったらしいよ。政宗君が関わると知って参加しているそうだ」
「 …言っちゃ悪いけど、あの旦那が、今女だから旦那は正しくないけど、独眼竜の旦那と一緒に裏切ったら?……や、ないか」
「分かってくれたかな?」
「はいはい、分かりましたよ」
猿飛は降参だとでも言いたげに両腕を上に挙げた。竹中はくすりと笑う。
「君は言い返さないのかい?」
「…。確かに小太郎は信用できないとは思うからね。俺様は信用してるけど、隠す癖あるから」
「秀吉襲撃の事も、彼は君に何も言わなかったね」
「そだね。でも俺様は小太郎を信用する」
「………そう。さて、僕も休ませてもらうよ。君も早く幸村君に挨拶した方がいい、まだ会ってないんだろう?」
「はいはい、そうですね」
猿飛のおざなりな返答に竹中は軽く肩を竦め、地下室に戻っていった。
ざぁ、と木々がざわめき、音も立てずに風魔が猿飛の隣に降り立った。風魔はきゅ、と猿飛の手首をつかんだ。
「いーい?小太。信用されたいならまず小太が俺様達を信用しないとダメ。ただ一つ言っとけるなら、俺様は小太の事、信用してるから」
「…!」
「かすが、いる?」
「あぁ」
がさ、と音をさせてかすがが返答した。かすがは木の枝に座ったまま、猿飛を不安げに見下ろした。
「…なぁ佐助、さっき言ってた『右目の旦那の記憶』ってなんのことだ?」
「…」
「私は、お前のこと信用してる。小太郎だってそうだ。でも佐助、お前は何を知ってるんだ?あの真田幸村も、どこで出会ったんだ?」
「……………」
「!でも小太郎、」
「……………」
「…終わったら話すってば。今は誰が敵なのか分からないから、下手に本当の事は話せない。小太は信用されてないとこもあるわけだし」
「…なんでこうなってしまったんだ?」
かすがはぼそりと呟いて木の枝から飛び降りた。
「どうしようもないんだよ、きっと」
「!佐助…」
「…さ、行こ。多分あの人が言ったと思うから、そのうち真田の大将とんでくるよ」
猿飛はそう言うとかすがの背中を押して、竹中が
向かった地下室に歩いていった。
だが風魔は少し進んだ後、ぴたりと足を止めた。猿飛達が視界からいなくなったのを確認し、後ろを振り返った。

「気づいていたのなら言えばよかっただろう?風魔」

がさ、と音をさせて、松永久が姿を見せた。風魔は何も言わずに右手をあげた。その手には、かつてとは違い、小さなナイフが握られている。
久は長い髪を揺らし、くすくすと笑った。
「成る程、卿もそちらへ行ったというわけか、愉快愉快…」
「……………」
「落ち着きたまえ、私は卿と話をしにきたのだよ。まぁ、卿が誰かを呼ぶというなら、また別の話になるがね」
久はそう言ってガードレールに腰かけた。

Not revolved transmigration 109

「な、なにゆえ…?!」
「だから勘だと。確実とはいえないが、松永が同伴を受け入れた事自体胡散臭い。奴も何かしら企んでいるはすだ。だからこそ、新日本覇王に警察が介入した」
「…!」
「足止めだけが目的じゃねぇはずだ。そのためにわざわざあんな大仰な事はしねぇ。ニュースにはなってねぇが、警察なんていう第三勢力をそんな事の為だけに使うはずがねぇ」
「…なるほど……」
「…尼子と連絡が取れりゃいいんだが……」
片倉はそう言って組んだ腕の中に頭を埋めた。真田は何とも言うことができず、そのまま黙って隣に座っていた。
もだもだと考え込む真田に片倉は顔をあげ、一瞬きょとんとした後くすりと笑った。
「なんて顔してやがる」
「はぇっ?!」
「気にするな。すまなかったな」
「…いえ……されど片倉殿、その…某に言えることではないのでござるが」
「なんだ」
吃りながらも出した言葉に、片倉は優しく聞き返した。真田は何となく、闡喪組で片倉が男性に人気だった理由が分かった気がした。
「…無茶だけはなさらんでくだされ。政宗殿が悲しみまする」
「!」
「そのー…血の気に走りやすいのは某だと重々承知しておるのでござるが、片倉殿は政宗殿の事となると、己を顧みぬ所があるような気がいたすゆえ……」
「…昔から、か?」
思わず真田ははっとして片倉を見た。片倉の表情は僅かに険しい。片倉が過去を受け入れられないでいる事をすっかり忘れていた真田は、はわはわ、と訳のわからない声をあげながら慌てて頭を下げた。
「も、申し訳ござらぬ!某は、その、」
「……まぁいい。お前からしたら過去の私と今の私は同じなんだろう」
「!あ、あの、」
「いいと言った。これ以上謝るんじゃねぇ」
「うう…」
先ほどからうまくいかない会話に思わず真田は唸った。そしてぽすん、と組んだ腕のなかに頭を埋めた。
「申し訳ありませぬ………」
「しつこい男だな、もういい。…だが1つ聞きてぇ」
「は、?」
「そんなに過去の私と今の私は変わらないか?」
「!」
真田は片倉の問いに顔をあげた。片倉は困ったような戸惑ったような、変な表情を浮かべていた。
真田は一瞬返答に戸惑った。
「…そうですな。かつての片倉殿が、女性らしくなったとしか」
「…はっきり言ってくれたな……」
「!!す、すいませぬっ!」
「性別の違い以外、俺は変わってねぇってか?」
一人称の変化に真田はしまった、と思った。どうやら今はかなり怒っているようだ。
「わー!待ってくだされ!再会して数日、昔のこととの違いなどまだ見つけられませぬよッ!!」
「…ふ、そう必死になるな」
慌てて平身低頭に謝る真田に片倉はくすくすと楽しそうに笑い、ぽん、と掌を頭に置いた。
「…ありがとな」
「!」
「戻るぞ。何が起こるか分からない、休息は取れるときに取れ」
片倉はそう言うなり立ち上がり、歩き出してしまった。真田はぽんと叩かれた頭を押さえたのち、ふ、と薄く笑って片倉の後を追った。
「…ちょーっと趣味悪いんじゃない?」
「なら止めればよかったろう?」
と、その直後、近くの木立からそんな声がした。そこから出てきたのは、竹中と猿飛。どうやら二人の会話を聞いていたらしい。
「どうして止めなかったんだい?」
「べっつにー」
「当ててあげよう。君は片倉君がまだ松永側の人間なのではないかと危惧してる」
「……」
猿飛は竹中の言葉に、す、と目を細めた。

Not revolved transmigration 108

「元就さん…」
「でも気にすんな!今はお前が守れてるだろ?」
「!」
「お前の大事な姐さんだって事は分かる、だから野郎に怒るのもなんとなく分かる。でも過去の事はどうしようもねぇし、野郎が知らなかったこともどうしようもねぇ。今からお前が精一杯守ってやればいいんだよ。な!」
長曽我部はそう言って豪快に笑うとわしゃわしゃと伊達の頭を撫でた。伊達は長曽我部の顔を見ていられず、俯いた。
その様子を見ていた毛利が、ぽつり、と呟いた。
「…貴様は前から元親とは仲が良かったが、どことなく我らと距離を置いておったな」
「?元就?」
「家族がおらぬのは我も元親も同じだ。血が繋がっておろうと家族ではないものもいれば、血が繋がらずとも家族であるものもいる。…一人で抱え込むでない」
「!…で、もよ…」
「俺達まで家族と思えとは言わねぇよ。でも何でも話せよ?俺も元就も、吉継も孝高も社長もお前の味方なんだからよ。俺たちは何だかんだいって家族がいねぇ、だからここの仲間は俺たちにとっちゃ家族みてぇなもんなんだ。苦しんでんなら力になりてぇし、傷つける野郎は許せねぇ。…だから、んな泣きそうな顔してんなよ、政宗」
「…!」
「別に泣くことは悪くない。元親とてかつては泣き虫だったゆえな」
「言うなよ元就!」
「……Thanks」
「!…、おぅ!」
ぼそりと呟いた伊達に長曽我部は僅かに嬉しそうに笑い、その頭を抱き寄せた。毛利は隣でぽんぽんとその背を叩いた。
伊達は零れそうになる涙をこらえて、ただ長曽我部にしがみついていた。



 その夜。真田は地下室を抜け出し、上野の山から空を眺めていた。比較的周りが暗いためか、星が意外とよく見えた。
「何している」
「!片倉殿」
ぼやーと見上げていると片倉に話しかけられた。片倉は真田のとなりに座った。
「悩みがあるのか?」
「!い、いえ」
「…昼間の提案、あれはいつ考えた?」
「!む、」
昼間、真田は親睦パーティーに関するある提案をしていた。
この親睦パーティーには、猿飛も参加することになっている。そこで予めホテルの一室に控えておき、猿飛が松永久をその部屋へ呼び出す、というものだ。
「…いつというより、知ったときからなんとなく考えていたといった感じでござるよ」
「なるほど。…呼び出してどうする?松永は自白するような奴じゃないぞ」
「そうですな。奴が事を起こした証拠を手に入れねば解決にはなりませぬ。されど新日本覇王に手が伸びた今、悠長にはしていられませぬ。なればこそ、証人を手に入れるまで!」
「証人?」
きょとんとする片倉に思わず真田は苦笑してしまった。普段の片倉なら思い付くはずだ。それだけ伊達が心配なのだろう。
「大谷殿でござるよ!」
「…。そうか!だが、そうしたら尼子はどうなる?」
「…尼子殿はきっと、片倉殿を同じ覚悟はなされておるはず」
「…成る程な。確かに、アイツも覚悟しているだろうな。呼び出して大谷の居場所を吐かせる、と?」
「そうでござる」
「…これは私の勘だが」
真田の言葉に片倉は僅かに考え込む様子を見せた後、人差し指を軽く噛んだ。
「松永は大谷をつれてくるかもしれない」
「なんと?!」
真田はぎょっとしたように片倉を見た。
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