Not revolved transmigration 108

「元就さん…」
「でも気にすんな!今はお前が守れてるだろ?」
「!」
「お前の大事な姐さんだって事は分かる、だから野郎に怒るのもなんとなく分かる。でも過去の事はどうしようもねぇし、野郎が知らなかったこともどうしようもねぇ。今からお前が精一杯守ってやればいいんだよ。な!」
長曽我部はそう言って豪快に笑うとわしゃわしゃと伊達の頭を撫でた。伊達は長曽我部の顔を見ていられず、俯いた。
その様子を見ていた毛利が、ぽつり、と呟いた。
「…貴様は前から元親とは仲が良かったが、どことなく我らと距離を置いておったな」
「?元就?」
「家族がおらぬのは我も元親も同じだ。血が繋がっておろうと家族ではないものもいれば、血が繋がらずとも家族であるものもいる。…一人で抱え込むでない」
「!…で、もよ…」
「俺達まで家族と思えとは言わねぇよ。でも何でも話せよ?俺も元就も、吉継も孝高も社長もお前の味方なんだからよ。俺たちは何だかんだいって家族がいねぇ、だからここの仲間は俺たちにとっちゃ家族みてぇなもんなんだ。苦しんでんなら力になりてぇし、傷つける野郎は許せねぇ。…だから、んな泣きそうな顔してんなよ、政宗」
「…!」
「別に泣くことは悪くない。元親とてかつては泣き虫だったゆえな」
「言うなよ元就!」
「……Thanks」
「!…、おぅ!」
ぼそりと呟いた伊達に長曽我部は僅かに嬉しそうに笑い、その頭を抱き寄せた。毛利は隣でぽんぽんとその背を叩いた。
伊達は零れそうになる涙をこらえて、ただ長曽我部にしがみついていた。



 その夜。真田は地下室を抜け出し、上野の山から空を眺めていた。比較的周りが暗いためか、星が意外とよく見えた。
「何している」
「!片倉殿」
ぼやーと見上げていると片倉に話しかけられた。片倉は真田のとなりに座った。
「悩みがあるのか?」
「!い、いえ」
「…昼間の提案、あれはいつ考えた?」
「!む、」
昼間、真田は親睦パーティーに関するある提案をしていた。
この親睦パーティーには、猿飛も参加することになっている。そこで予めホテルの一室に控えておき、猿飛が松永久をその部屋へ呼び出す、というものだ。
「…いつというより、知ったときからなんとなく考えていたといった感じでござるよ」
「なるほど。…呼び出してどうする?松永は自白するような奴じゃないぞ」
「そうですな。奴が事を起こした証拠を手に入れねば解決にはなりませぬ。されど新日本覇王に手が伸びた今、悠長にはしていられませぬ。なればこそ、証人を手に入れるまで!」
「証人?」
きょとんとする片倉に思わず真田は苦笑してしまった。普段の片倉なら思い付くはずだ。それだけ伊達が心配なのだろう。
「大谷殿でござるよ!」
「…。そうか!だが、そうしたら尼子はどうなる?」
「…尼子殿はきっと、片倉殿を同じ覚悟はなされておるはず」
「…成る程な。確かに、アイツも覚悟しているだろうな。呼び出して大谷の居場所を吐かせる、と?」
「そうでござる」
「…これは私の勘だが」
真田の言葉に片倉は僅かに考え込む様子を見せた後、人差し指を軽く噛んだ。
「松永は大谷をつれてくるかもしれない」
「なんと?!」
真田はぎょっとしたように片倉を見た。