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Not revolved transmigration 96

「大将ー」
「!佐助」
一人になった真田に、上から猿飛が声をかけた。着替えがないからなのか、秋になるというのに黒いキャミソール一枚だった。
たん、と真田の隣に飛び降りる。
「寒くないのか、佐助」
「ん?大丈夫大丈夫。家だといつもこんなんだからさ。それよりちょっといい?」
「?………あぁ」
真田は猿飛に促されて屋上を出た。屋上に続く階段で猿飛は座り込む。
「…小太郎の事、疑ってるでしょ?」
「!………、悪いがまだ信頼出来るかと言われれば、出来ぬ」
「…ま、そうかもね。小太郎が何言ってるかも分かんないもんね」
「佐助、お前は松永が何故斯様な手段に出たと思う?」
真田は猿飛の隣に座りそう尋ねた。猿飛は、ふむ、と呟き手を顎に添えた。
「…確かに慎重性に欠ける作戦だ。うちの社長も大した人でね、俺様の動きは確実に松永久には知れてないと思う。松永久の目的は豊臣の大将を殺すことじゃなかったはずだ」
「ならばなんだというのだ?」
「分かんないよ。でも、大きなショックを受けたら過去を思い出してしまう可能性がある以上、これ以上好きにはさせないぜ」
「!佐助…」
猿飛の言葉に真田は僅かに驚いたように猿飛を見た。猿飛はそんな真田の視線に、どこか困ったように笑う。
「二人ともろくな過去持ってないだろ?」
「……お前は今でもかすが殿の事を?」
「へっ?いや、ないない!…でも、少なくとも今の『かすが』と『風魔小太郎』は俺様の家族だから」
「…そうだな」
笑みを浮かべたままそう言いきった猿飛に、真田はどこか嬉しそうに笑った。
猿飛は、よいせ、と立ち上がった。剥き出しの背が寒々しく、真田は腰に巻いていたジャージを猿飛に投げつけた。
「?」
「見てて寒々しい。着ていろ」
「年がら年中腹出してた人が何言ってんの!それより大将、一つ聞いておきたいんだけど」
「?何だ」

「真田の大将は今も、石田の大将の事を想ってる?」

猿飛の言葉に真田は一瞬目を見開き、だがすぐに微笑を浮かべた。
「無論。されど石田先生を斯様な想いでは見ておらぬ。石田先生は石田先生ゆえな」
「…そっか。それ聞いて安心した」
猿飛はそう言うとにかりと笑い、真田に背を向け先に階段を降りていった。


 その深夜。家からすべての明かりが消えた織田邸の裏手に石田と長曽我部の姿があった。少し離れた所にはバンが止まっている。
長曽我部は片手にノートパソコンを持ち、石田を振り返った。
「いいか、制限時間は30分。裏口から一つ多い部屋の所まではアンタの記憶が頼りだ。このキー解除したら同時に監査カメラその他を停止させるが、いつまで止められるかは分からねぇからな」
「あぁ。…分かっている」
石田はそう言うとフードを被り、腰を屈めた。長曽我部は電子キーにノートパソコンを繋げる。
少しして、ピー、と解除された音がした。
「行くぞ!」
二人は静かに、同時に地面を蹴った。出来るだけ植え込みに触れないように駆け抜ける。
数分で裏の小さな林を抜け、屋敷が見える所まで来た。屈んだ石田は長曽我部を手招きしながら、北の一角を指差した。
「あそこだ」
「?…どうしたよ、なら行こうぜ」
「…まずいことが分かった。この家、犬がいる」
「!」
「それも起きてる奴がいる。私はその犬を黙らせてくる」
「ちょ、待て!」
物騒な言葉を吐いて腰をあげようとした石田を長曽我部は慌てて止めた。
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