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Not revolved transmigration 91

片倉は思わず首を傾げる。そもそも片倉には、弟である伊達を探していた事を尼子が知っている事から不思議だった。
「…どうした?そもそも、何故お前が私が政宗を探していたことを知っている?」
「あ、いや…。アンタの事はよく聞くからな」
「何?」
「…気付いてなかったのか?闡喪組のしたっぱ達にゃ、アンタモテモテだぜ?」
「は?!」
思わず片倉はすっとんきょうな声を上げてしまった。伊達も吹き出したらしく、口元を手で覆って尼子から顔を背け、噎せている。
尼子は小さく笑った。
「んだよ、そんなショックか?」
「い…意味が分からねぇ!」
「意味不明だと言われてもな。本当の事だぜ?」
「…全然嬉しくねぇ」
「……分からねぇでもねぇけどよ…」
「?!ななな、政宗?!何を言うんだ!」
片倉はそこで顔を赤くして伊達を振り返った。弟に言われる方が堪えるらしい。
尼子はクスクスとどこか楽しそうに笑い、二人を見た。
「…見つけたって事はもしかして、それが裏切った理由か?」
「…今闡喪組が手に入れたい織田邸の見取り図を持つ石田三成は政宗の教師で、新日本覇王の社長の豊臣殿は家を追い出された政宗を引き取って下さったんだ」
「!」
「松永は知っていたはずだ。話に聞けば、最上が私に会わせると偽って政宗を拉致しようとした事もあるらしい」
「……あぁ、大谷見つけたあの話か」
「!…………」
尼子の言葉に伊達は目を見開き、俯いた。
伊達の仕草に尼子は目を細め、そのあと片倉を見た。
「…俺は政宗をこれ以上苦しめたくない。だから裏切った」
「……なるほどな」
「覚悟は出来てるぜ」
「お前が覚悟も無しに動く奴だとは思ってねぇよ」
「…お前は何のために闡喪にいるんだ?」
笑いながらグラスを煽った尼子に、片倉は静かに尋ねた。尼子はグラスを揺らしながらただ笑う。
片倉は返答を急がず、自分のグラスに口をつけた。
「………お前は母親の借金返す為に闡喪に入ったんだよな」
「あぁそうだ」
「俺も同じだ。俺も施設の出でな」
「!」
「そこの奴と暮らしてたんだが、施設が閉鎖した時の借金が回ってきてな。その貸し主が松永だった。同居人にこういう世界は似合わねぇし見せたくなかったから、奴だけ置いて来たんだ」
「…お前、一人なんだな」
片倉の言葉に尼子は笑ったまま手を額に当てた。
そのまま黙ってしまった尼子に、片倉は手を伸ばして頭を撫でた。
伊達は席を立ち、カウンターに行った。
「…いつの間にか幹部にまでなってたけどな。抜けたくても抜けられねぇ」
「!!抜けてぇのか?!」
「でなかったらこんなに話すわけねぇだろ!」
ぎょっとしたように尋ねる片倉に尼子は呆れたように言い返した。はぁ、とため息を落とし、尼子は空になったグラスを置く。
と、その時、カウンターから伊達が戻ってきて、尼子の前にホットカクテルを置いた。
「?」
「政宗?」
二人はきょとんと伊達を見上げた。伊達はとん、と机を叩いた。
「俺からアンタに、だ」
「は?」
「バーテンに頼んだ。この店のOne for the roadだ」
「!」
尼子は僅かに目を見開いた。
One for the road
家に帰るための酒と言われていたりする酒の事だが、本来は別れに飲む最後の一杯の事を指す。
つまり伊達は、今己が差し出したホットカクテルを取るか取らないかで、決断を下せと言ったのだ。
「…俺にも裏切れってか?」
「アンタの同居人だった奴の事、考えた事あるか?」
「え…?」
「何も言わずに消えられるのは、滅茶苦茶堪えるもんだぜ」
「!政宗…」
「……」
伊達の言葉に尼子は目を伏せた。
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