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Not revolved transmigration 89

「…竹中サンがでっけぇため息ついてら」
「え?」
「実は今までの会話、イヤホンマイクで半兵衛殿にも聞こえていたんだ」
「は?!」
「竹中サンから伝言。アンタ達が作ってくれたその機会、使わせてもらうってよ」
「!」
雑賀の目が僅かに見開かれた。伊達は上に着ていたレザージャケットの裾からちらりと無線機を覗かせた。

「姉さんが接触する」




 その夜、永田町にある高級レストランの部類に入るイタリアンレストランに雑賀、前田、そして偽大谷の姿があった。
雑賀は落ち着いているが、前田はどことなく落ち着きがない。
「…前田ぁ、何を緊張しておる?」
「へっ?あ、いや、警部と一緒にこういう店来るのは…マナーとか注意されそうで……」
「…慶次…お前な」
雑賀は前田の言葉に呆れたようにため息をついた。大谷はひっひと肩を揺らして笑う。
「(……本当に…よく似ている…)」
雑賀は心の中でそう呟くときゅ、と膝においたナプキンの裾を握った。
「でも、警部が無事で本ッ当によかった!てっきり死んでたかと」
「勝手に殺しやるな、まったく…」
「だって5年も消息不明じゃ、誰だって思うでしょ」
「あいあい、分かった分かった。………雑賀」
「、え、」
不意に話を振られた雑賀は僅かに驚いたように大谷を見た。大谷は頬杖をついて雑賀を見ていた。
「先から上の空だがどうかしやったか」
「いえ、ちょっと考え事を」
「左様か。…それにしても、礼などいらぬと言うに」
「まぁまぁ、そう言わないでくださいよ。ずっと心配だったんすから」
前田の言葉に大谷は薄く笑い、肩を竦めた。
「(…大丈夫なのだろうか、本当に……)」
雑賀はちらりとレストランの向かいにあるカフェに目を向けた。

 「…よく似てるな」
「尼子の奴もひょろりとした奴だったからな」
向かいのカフェにはオールバックのままの伊達と前髪を下ろしたままの徳川、そして片倉の姿があった。
片倉は頬杖をついてレストランの方を見つめた。
「でも本当にいいのかよ姉さん。俺も行くけど、あぶねぇぜ?」
「それは誰が行こうと同じだろう。見知った私が行く方がいい。政宗がいるなら大丈夫だ」
「…幸村は俺がいると戦えねぇって言ってたぜ?」
「その事ならもう大丈夫だ。…すまなかったな」
「謝んなよ!」
伊達は僅かに照れたようにそう言うとぷいと顔をそらした。徳川はそんな二人に笑みを浮かべながらサンドイッチを口に運ぶ。
「だが片倉殿、尼子じゃなかったら?」
「いいや、あれは尼子だ。あの身長の男は後は最上しかいないが、最上に変装は出来ない」
「……確かに。で、味方に出来る確率は?」
「奴の目的次第だ。奴が何の為に松永に手を貸しているのか、それ次第だな」
片倉の言葉に徳川はふむ、と呟くとレストランに目をやった。
伊達は落ちてくる髪の毛をかきあげながら片倉を振り返った。
「…傷、大丈夫か?」
「え?」
「だから、ほっぺの傷。痛まねぇ?」
「…あぁ、大丈夫だ。政宗こそ平気か?」
「やっぱり古傷は痛むのか?」
「あ?まぁな…」
伊達は心配そうな徳川ににやりとわらった。とんとん、と、眼帯の上から右目を叩く。
「でも、無くした時の痛みに比べりゃ大したことねぇよ」
「…そうか、ならいいんだ」
徳川はそう言うと曖昧な笑みを浮かべた。
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