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Not revolved transmigration 106

それから数時間後。豊臣だけが別室に呼び出された。
伊達は数人の刑事につれていかれた豊臣を、僅かに不安そうに見送った。そんな伊達を、長曽我部は、にっ、と笑ってわしゃわしゃと頭を撫でた。
「そんな心配そうな顔すんな!社長なら大丈夫だよ」
「…そうか?」
「時に、近年の刑事の取り調べはさして詰問と変わらぬと聞いている。あまりおろかな事をすれば社長とて怒るだろう」
「…あの人でも怒ることあるのか?」
ふん、と鼻を鳴らしそう言った毛利を伊達は意外そうに振り返った。毛利はくすりと笑う。
「社長が怒ると恐ろしいぞ?鬼ですら裸足で逃げ出すわ…馬鹿なことをして社長を怒らせなければいいのだかな」
「そ…そうなのか…?」
伊達は首をかしげながらもそう呟いた。

豊臣は何も話さなかった。怒鳴られようが机を叩かれようが表情一つ変えなかった。
「何とか言ったらどうなんだ、あぁ?!」
警察官がどれだけ激昂しても豊臣は気にしなかった。気になるようなものではなかった。
「だんまりすか〜?」
「ふむ」
「ふむじゃねぇんだっつの」
先ほど怒鳴ったのとは違う警察官が豊臣の返答に疲れたようにため息をついた。そして諦めたように壁にもたれ掛かった。
怒鳴った警察官がじろ、と彼を睨む。
「真面目にやれ、成実ッ」
「真面目にやれ、と言われても困るっすよ。こちとらアンタ等が人手が足りねぇっつぅから来ただけで?どこの誰とも知れない垂れ込みに振り回されちゃって」
「何だと?」
「喧嘩をするな」
「おめーは口挟むんじゃねぇッ!!」
再びばん!と机を叩かれた。思わず豊臣はあからさまにため息をついてしまう。
それが逆鱗に触れたのか、その警察官は豊臣の襟首をつかみ右頬を殴った。豊臣からすれば大した痛みではないのだが、ふつふつと苛立ちは溜まっていた。
「おい、」
「………」
「おめーが話さねぇなら他のやつに聞くまでだ!おい、女がいただろ、連れてこい」
「…!」
「何言ってんだアンタ」
成実と呼ばれた警察官はそう言って相手にしなかったが、豊臣は僅かに怒りを覚えた。
「…愚かな…」
「あぁ?!」
「控えよ!!!!」
豊臣の怒鳴り声が、取調室代わりの小会議室に響き渡った。成実は飛び上がり、先ほどまで威勢のよかった警察官は腰を抜かした。
「己の器を知らずに我に挑もうなど、100年早いわ!」
「ひっ!」
「うぉっ」
二人はそう声をあげて飛び上がった。成実は完全に戦意喪失した警察官を部屋から追い出し、ゆっくりと豊臣を振り返った。
「…ますます分からねぇっすね」
「……何がよ」
「俺は捜査一課強行犯係の伊達成実」
「!!伊達だと?」
ぴくり、と豊臣の表情が動いた。
「色々あって、今は養子縁組で名字は片倉なんすけどね」
「!」
「1つ聞いていいっすか。…、うちが介入した時、少し遅れて見つかった、パイプラインにいた高校生…右目に眼帯した、伊達っていうらしいっすね。………下の名前は?」
「貴様に教える義理はない」
「!」
はっきりと否定したからか、成実は驚いたように豊臣を見た。豊臣はじろりと成実を見据える。
「知りたければ聞きに行けばよいだろう。本人にな」
「…………」
成実はしばらく迷ってから、他の刑事を置いて部屋を出ていった。
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