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Not revolved transmigration 107

「…Hey police man」
「は、はっ?」
「便所行きてぇんだけど。部屋出ていいか?」
時を同じくして、伊達が軟禁されていた部屋から出ていた。両脇の警察官をちらと見ながら、伊達は疲れたようにため息をついた。
「…あっ」
曲がり角を曲がった時、廊下の先に成実が現れた。伊達の姿を見て、成実は目を見開いた。
「政宗!伊達政宗だろ?!」
「?なんだ片倉、知り合いか?」
「お前生きてたのか!」
成実は嬉しそうに伊達に駆け寄った。
だが伊達は、つまらなそうに成実を見上げた。
「誰だアンタ?」
「…えっ?」
「生憎アンタに見覚えねぇなぁ。俺の名字伊達じゃねぇーし」
「…えっ?え?」
「つか俺は便所に行きてぇんだよ!どいてくれ!」
戸惑う成実を、伊達は押し退けた。呆然とした顔で伊達を見送る彼を、伊達は一度も振り返らなかった。
 「政宗」
少しして部屋に戻ると、ちょいちょいと長曽我部と毛利が伊達を手招きした。やけに神妙な二人に伊達は眉間を寄せたが、招かれるままに近寄った。
「ついさっきよぉ。片倉成実ってデカが来てよ」
「!」
「貴様の事は伏せておいた」
「えっ?」
毛利の言葉に伊達は驚いたように二人を見た。二人はにやにやと笑っている。どうやら何やら楽しんでいるようだ。
「お前便所行ったろ?そっちの方からそのデカは来たわけだ。なのにお前の名前を聞いてきた、つまりお前が教えなかった!それくらい分かるってぇの」
「訳は知らぬがあの男、貴様の親戚ではないのか?」
「…………」
伊達は両脇からにやにやとつついてくる二人に複雑な気持ちになった。
雑賀はそんな三人の様子を見て、部屋を出ていった。最早話さなければ男が廃る。伊達はそう思い、口を開いた。


正直、伊達は成実が嬉しそうに自分に駆け寄ってきた時、心底腹がたった。成実の今の姓は片倉。元々は自分の従兄弟で、伊達の跡取りの第一候補だった。伊達の父親が亡くなった後、片倉家の養子となり片倉家を継いだ。伊達の家は継がなかった。
それは別に構わなかった。伊達の名は自分が持っているから、遺産を奪われようと伊達の名前は残っているからだ。伊達は伊達という家に生まれたことに僅かに誇りを持っていた。今の時代に名を残す男と同じ名前であることにも、僅かに誇りを持っていた。だから成実が養子に出たとき、そして弟が二年前死んだと片倉から聞いたとき、伊達の名を継ぐものはついに己しかいなくなったのだと、僅かに喜びもした。
成実に腹がたったのはその事ではない。片倉の事だった。
片倉は借金返済の為に闡喪組に身を売った。てっきり伊達は、成実だけではどうしようもなくなったのだろうと思っていた。それがどうだ、成実は警察官で、あろうことか闡喪組を捕まえる手がかりを得るために姿を表したではないか。
何故成実が返せなかったのか。そもそも、片倉がいるのに何故いけしゃあしゃあと捜査に来ることができているのか。ひょっとして、知らないのではないか。
そう考えたらどうしようもなく怒りが込み上げてきた。何も知らないらしい成実にも、何も出来ない自分にも。

伊達は一息にそこまで語った。二人は僅かに驚いたように伊達を見ていたが、顔を見合せると優しく笑った。
「んのバカ野郎!いっちょまえになりやがって!」
「は?!」
「うむ、話はよく分かった。悔しかったな」
「!」
毛利の言葉に、伊達は、はっ、と毛利を見上げた。

Not revolved transmigration 106

それから数時間後。豊臣だけが別室に呼び出された。
伊達は数人の刑事につれていかれた豊臣を、僅かに不安そうに見送った。そんな伊達を、長曽我部は、にっ、と笑ってわしゃわしゃと頭を撫でた。
「そんな心配そうな顔すんな!社長なら大丈夫だよ」
「…そうか?」
「時に、近年の刑事の取り調べはさして詰問と変わらぬと聞いている。あまりおろかな事をすれば社長とて怒るだろう」
「…あの人でも怒ることあるのか?」
ふん、と鼻を鳴らしそう言った毛利を伊達は意外そうに振り返った。毛利はくすりと笑う。
「社長が怒ると恐ろしいぞ?鬼ですら裸足で逃げ出すわ…馬鹿なことをして社長を怒らせなければいいのだかな」
「そ…そうなのか…?」
伊達は首をかしげながらもそう呟いた。

豊臣は何も話さなかった。怒鳴られようが机を叩かれようが表情一つ変えなかった。
「何とか言ったらどうなんだ、あぁ?!」
警察官がどれだけ激昂しても豊臣は気にしなかった。気になるようなものではなかった。
「だんまりすか〜?」
「ふむ」
「ふむじゃねぇんだっつの」
先ほど怒鳴ったのとは違う警察官が豊臣の返答に疲れたようにため息をついた。そして諦めたように壁にもたれ掛かった。
怒鳴った警察官がじろ、と彼を睨む。
「真面目にやれ、成実ッ」
「真面目にやれ、と言われても困るっすよ。こちとらアンタ等が人手が足りねぇっつぅから来ただけで?どこの誰とも知れない垂れ込みに振り回されちゃって」
「何だと?」
「喧嘩をするな」
「おめーは口挟むんじゃねぇッ!!」
再びばん!と机を叩かれた。思わず豊臣はあからさまにため息をついてしまう。
それが逆鱗に触れたのか、その警察官は豊臣の襟首をつかみ右頬を殴った。豊臣からすれば大した痛みではないのだが、ふつふつと苛立ちは溜まっていた。
「おい、」
「………」
「おめーが話さねぇなら他のやつに聞くまでだ!おい、女がいただろ、連れてこい」
「…!」
「何言ってんだアンタ」
成実と呼ばれた警察官はそう言って相手にしなかったが、豊臣は僅かに怒りを覚えた。
「…愚かな…」
「あぁ?!」
「控えよ!!!!」
豊臣の怒鳴り声が、取調室代わりの小会議室に響き渡った。成実は飛び上がり、先ほどまで威勢のよかった警察官は腰を抜かした。
「己の器を知らずに我に挑もうなど、100年早いわ!」
「ひっ!」
「うぉっ」
二人はそう声をあげて飛び上がった。成実は完全に戦意喪失した警察官を部屋から追い出し、ゆっくりと豊臣を振り返った。
「…ますます分からねぇっすね」
「……何がよ」
「俺は捜査一課強行犯係の伊達成実」
「!!伊達だと?」
ぴくり、と豊臣の表情が動いた。
「色々あって、今は養子縁組で名字は片倉なんすけどね」
「!」
「1つ聞いていいっすか。…、うちが介入した時、少し遅れて見つかった、パイプラインにいた高校生…右目に眼帯した、伊達っていうらしいっすね。………下の名前は?」
「貴様に教える義理はない」
「!」
はっきりと否定したからか、成実は驚いたように豊臣を見た。豊臣はじろりと成実を見据える。
「知りたければ聞きに行けばよいだろう。本人にな」
「…………」
成実はしばらく迷ってから、他の刑事を置いて部屋を出ていった。

Not revolved transmigration 105

「やることなくて暇だ!」
「うむ」
「じゃ、いつどこゲームでもするか?」
「呑気だな貴様ら」
毛利は呆れたように呟いた。だが確かに暇なのだ。
と、そこへ、前田と雑賀が入ってきた。
「秀吉…!」
「む」
前田は僅かにほっとした様子を見せ、入り口の方をちらちら気にしながら豊臣に近寄った。雑賀は入り口の所に立ち、廊下を窺っている。
「半兵衛は?それに三成とかも」
「政宗が逃がしてきた」
「そっか…すまねぇ!面倒な事にしちまって」
「アンタが指揮してることじゃねぇだろ」
「それはそうだけど…」
「なぁ、アンタ等は今必死こいてなに探してんだ?」
しゅんと落ち込んだ前田は長曽我部の問いに長曽我部を振り返った。雑賀と顔を見合せ、部屋の近くに警察官がいないのを確認してから口を開いた。
「匿名の垂れ込みでこの会社が闡喪組に資金提供してるなんていう訳のわかんないのが来てね。でもあの人が帰ってきたことも相まって、取り敢えず調べるだけ調べようって」
「適当だなオイィ!」
「これで何も出なかったら謝罪ではすまぬぞ。証拠を捏造するため我らを閉じ込めたか。ふん、浅知恵の働くことよ」
「う…」
「返す言葉もない…」
二人は合わせて頭を下げた。毛利は肩を竦めるとぽすんと長曽我部にもたれ掛かった。
「無駄なことよ」
「でもよぅ、証拠捏造されたらどうするよ?」
「口で言い負かす」
「…大谷はどうしている?」
豊臣は静かにそう尋ねた。前田と雑賀は僅かに驚いたように豊臣を見る。
「…あの人がどうかしたの?来てるよ、指示してる」
前田は不思議そうに聞いてきた。前田達にはまだ、尼子の事を明かしてはいないのだ。
豊臣はそうか、と呟いただけでそれ以上は語らなかった。
「ねぇ、あの人どうなったの?政宗君ー」
「ナーイーショー。…今は言えない」
「……。まぁいいや、とりあえず、俺達も出来るだけフォローはするよ。だから、俺が言うのも何なんだけど、妙なことはしないでね」
前田はそれだけ言って出ていった。雑賀は小さくため息をついた。
「すまない、慶次は見張り当番ではなくてな」
「貴様が謝ることではない」
「かーっ社長マジ男前」
「…雑賀さん、一つお願いがあるんだけど」
「?」
申し訳なさそうにそう言った雑賀は、伊達の言葉に首をかしげた。



 「…よし!一先ず片付いたね」
小一時間後、南部の地下室の方は軽い掃除を終わらせていた。長らく使われていなかったのか、やや薄汚れていたのだ。
「さてと。GPS探知とかされると面倒だから携帯は切ってね」
「そういえばワシのついてたな…」
「…兄さん。宇都宮先生は放っておいて大丈夫でしょうか」
「ん?」
竹中は遠慮がちにそう言った石田を振り返り、ふむ、と呟いた。
「…そうだね」
「竹中殿!その事で提案があるのでござるが」
「?なんだい?」
間髪入れぬ勢いで手を挙げた真田に竹中は驚いたように真田を見た。

Not revolved transmigration 104

「某は真田幸村、この部屋に住む伊達政宗殿の友人にござる」
「ホゥ…何故主は亡者を呼びてたまわる…?」
「へっ?今のまさか、亡者ワシら?!」
「ま、待ってくだされ家主殿!我らは貴殿に用があって参った次第!」
「む…?」
南部は真田の言葉に不思議そうに真田を見た。
「貴殿は、尼子晴久殿をご存知でござるか」
「………。うむ」
「その方より、貴殿が隠れ家にもってこいの場所を知っていると聞き及び、参った次第にござる」
「…………、あぁ」
「どうしても必要なんだ。貸していただけないだろうか?」
「…晴久は何をしてたまわる?」
南部は少し首をかしげてそう尋ねた。真田と徳川は思わず互いを見やる。
「…尼子殿は今、宇都宮先生…宇都宮広綱殿を、守るため戦っておりまする」
「!……………」
南部は驚いたように真田を見た後、ふむ、と小さく納得したように頷いた。
「ついてたまわれ…」
「!」
「…まずは感謝を!」
真田は少しほっとしたように笑い、徳川はそう言った。

 南部に案内されて移動したのは上野だった。
「…上野か。また微妙な所だね」
「上野の山にあるのでしょうか」
「ホゥホゥ…」
「………」
「片倉殿」
真田は後ろからついてきている片倉が塞ぎこんでいることに気がつき、すす、と近寄った。話し掛けられた片倉は僅かに驚いたように真田を見た。
「…如何なされた?」
「……政宗が心配なだけだ」
「!…………」
「…馬鹿をやらないといいんだがな…」
「…そうですな」
片倉は真田の言葉に力なく笑った。真田はうまい言葉を見つけられず、俯いた。
その時ちょうど到着したらしい、ざわりと前が騒がしくなった。
「…ここを使いたまわれ」
「ここ?!」
「あ、本当に家ある!?」
上野動物園の近くに、五條天神社という神社がある。南部の知る隠れ家というのは、その神社の境内から入ることのできる地下室だった。確かに隠れ家にはもってこいだ。
「…すごいでござるな」
「…なんでこんなもん持ってんだ…」
「…真田幸村」
「は、はっ?」
追い付いた二人がそう言いながらその室を見下ろしていた時、南部が真田の名前を呼んだ。真田は僅かに驚きながら振り返った。
「…願わくば晴久を守りてたまわれ……」
「…!承知いたした!!」
「………ではな」
南部は真田の返答に安心したように頷くと、くるりと背を向け去っていった。
真田は小さく笑うと片倉に続いて地下室に入った。



 一方、その頃伊達達は、というと、警察の家宅捜索、正確には家宅ではないのだが、それが始まり、豊臣達は会議室で待機していた。
「…政宗よ」
「What??」
「何故戻ってきた?」
豊臣はそう伊達に尋ねた。伊達はちらりと豊臣を見た後、ふいと目をそらす。
「…別に。ただ何となく、ここに残るべきだと思っただけだ。それとも迷惑だったんすか」
「そんな事は一言も言っていない。少し意外だったからな」
「…そうですか」
「なぁ社長ー」
少し離れた所から長曽我部が間延びした声で豊臣を呼んだ。携帯などの電子機器は持ち込み不可で、なかば無理矢理連れてこられたために手持ち無沙汰で暇しているようだ。毛利も暇そうに長曽我部にもたれ掛かっている。

Not revolved transmigration 103

「…考えは悪くないんだけど、確か政宗君はアパート暮らしだったよね?」
「…あ、そういえば…戻れば近隣の者に気づかれますな」
うーん、と頭を捻ったとき、片倉の携帯が鳴った。思わず五人は顔を見合わせた。知らない番号だったからだ。
竹中が頷き、片倉は慎重に携帯を耳に当てた。
「…片倉だ」
『よぉ、生きてるか?』
「!尼子か!」
電話をしてきたのは尼子だった。片倉の顔が僅かに明るくなる。
『警察が今行っただろ?』
「!お、お前電話なんかかけてる場合か…?!」
『気にすんな、今屋上だからよ。この携帯も警察の支給品だしな。そんなことよりお前ら、無事脱出はできたみてぇだな』
「!…まぁな」
『根城になるようなとこあんのか?』
「いや、詮索中だ」
『やっぱりな。お前の弟、伊達政宗だったか?そいつのアパートに行け』
「何?」
『そのアパートの管理人に会いに行け。そいつがいいところを知ってる。じゃあな』
「何?おい、待…切りやがった」
片倉は小さく舌打ちして携帯を切った。片倉の隣で会話が聞こえていた竹中は僅かに眉間を寄せた。
「…アパートの管理人…?」
「ど、どうしたんだ半兵衛殿?」
「あの会社に来たらしい尼子が、政宗のアパートの管理人がいい場所を知っているから会いに行け、って言ってきやがった」
「政宗の?」
「どうする竹中」
片倉は竹中を振り返った。竹中は片倉の視線を受け、石田を見る。
「…君はどう思う?三成君」
「…そうですね。尼子という男は宇都宮先生の友人だと聞きました。私は彼が嘘をついているとはあまり思いません」
「どうして?」
石田の答えに竹中はそう尋ねた。石田はどもることなく、すらすらと答える。
「彼は宇都宮先生があの高校の体育教師だと分かっていても、今警察として新日本覇王にいる限り、彼自身に宇都宮先生を守ることはできない。彼が私を敵にしては、宇都宮先生が危険に晒される確率が高くなるだけです」
「…成る程ね。よし、一先ず行ってみよう。ガセネタならそれはそれでいいさ、確か政宗君の家はここより人は少ないはずだからね」
「そうだな、ワシらの所よりは都会よりだが、ここからは田舎よりだからな」
斯くして、五人は政宗の家に向かうこととなった。



 電車を乗り継いで一時間ほどで、伊達のアパートについた。少し離れた曲がり角から様子を伺う。
「…いかがいたす?」
「……君たちここに来たことは?」
「何度か泊まったりしたぞ」
「よし、なら家康君と幸村君でまず様子を見てきてくれ。気を付けて」
「承知いたした!」
徳川と真田は互いに頷きあうと、不自然さを見せないように歩いていった。
階段を上がり、伊達の部屋の前に来たとき、二人は不自然さに気がついた。伊達は新聞を購読しているのに、新聞受けに新聞がたまっていないのだ。
「…どういうことだ?」
「…分かりませぬ。誰ぞ回収したのでござろうか?」
その時だ。
「何故主らは亡者を欲す…」
「うわぁ?!」
「も、もんじゃっ?!」
突如聞こえた静かな声に二人は飛び上がった。右目に眼帯のように布を巻き付けた、和服姿の老人が階段の踊り場に立っていた。
「…あ、もしやあの姿、陸奥の南部殿では…」
「え?あ、本当だ」
「?」
南部晴政。老人なのに小田原の老人と違って運動神経が忍ばりなのが特徴だ。死者の魂を呼び戻すことができる人間でもある。
「あー…貴方は?」
「……。家主をしておる」
「!管理人殿にござるか?」
どうやら尼子が会えと言った管理人は南部のことのようだ。
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