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葱と牛蒡とツインテール51

「流されるままに生きる。それを悪いなんて言えないし、私だって流されて生きていた所はあった。でもだからこそ…文句言っちゃだめなんですよ」
ーお前が前にいた世界を生きられなかったのは、生き方が曖昧だったからだ
ー別に目的がねぇことは恥じゃねぇ。だが、強く生きてぇ、そう思うなら、それなりの対価ってもんが必要なもんだ
小十郎に言われた言葉が思い出される。
「流されて生きると逃げたのも自分。…もし現状に不満があるなら、自分が動かなきゃダメなんですよ。誰かのせいに、戦のせいにするのは、ただの逃げですから」
「……なるほどねぇ、道理で手厳しい訳だ。だけど、皆が皆、そう思える訳じゃないだろ?」
「そうは言っても、自分が理解しようとしないのに、相手に理解を求めるのは最低なことだと思います」
「…………」
慶次はふ、と僅かに目を細める。しきは視線を城の外へと向けた。
「確かに、武将の中には民のことを顧みない人はいたかもしれない。だけど、民が大将を理解しようとしたかと言えば、したといえる民はもっといないと思いませんか」
「……、けど」
「人が人と分かりあおうとしないしない限り、戦を減らすことは出来ませんよ。それは、武将同士の話ですむ問題じゃない」
「……民は無力だ、とは思わないのかい」
「強くなろうとしない、それもまた逃げです。なろうと思えばなれるはずです。武将も民も、元は同じ人間じゃないですか」
「…!」
慶次は僅かに驚いたようにしきを見た後、にっ、と笑った。どこかそれは、楽しげな笑みにもみえた。
「なるほどねぇ!なんだ、存外あんた面白い人だ」
「はっ?!」
「いやぁーついつい長話しちまったね!早いとこ独眼竜追うとしようか!」
「、あ、そうだった!!」
慶次の言葉に四人ははっと我に帰り、慌てて馬の用意を始めた。
慶次はしきを振り返る。
「あんたの言いたいこと、何となく分かったよ。きっとあんた、どこかでは諦めてるんだろう?現状に抗うことに」
「……………」
「多分あんた半兵衛みたいにちょっと頭いいんだろうなぁ。だから、俺みたいに馬鹿に突っ走れないし、俺にいらっとするんだろ?」
「…そう、かもしれませんね」
しきは慶次の言葉にふい、と目をそらす。慶次はへへっ、と笑った。
「俺は馬鹿でいいよ。打算的になるくらいだったら。ただ、ひとつ約束するよ、竜の右目に、変なことは言わないよ」
「!」
「まぁ、あの人が俺の言葉で揺るぐとも思えないんだけどね。…この戦が終わったら、またあんたと話したいな。構わないかい?」
しきは少しばかり驚いていた。さっきまであんなに険悪なムードで怒鳴りあっていたというのに、もう慶次は落ち着いている。
しきはちっ、と舌を打った。暑くなった自分が馬鹿に思えた。
「…あなたのそういうところ、苦手です」
「えぇっ?!」
「もしもの話はしたくないです、話したかったら勝手にしてください」
「!…へへっ、じゃあそうするよ。またな、奥さん!」
慶次は馬にまたがりそう言うと、先に駆け出していた四人を追って姿を消した。
しきはぎゅ、と拳を握りしめる。
「………苦労人のくせして、それを苦と思ってない。…あぁ、私にはそんな生き方できないわ」
腹立つ。
しきは、だがそう言いながらも口元には笑みを浮かべ、城内へと足を戻した。
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