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葱と牛蒡とツインテール23

そして、その翌晩の事だった。

運悪く、或いは幸運にか、吉継も所用に駆り出され、しきの座敷牢を見張るのは、守衛の兵だけになった。しきは膝を抱えて踞るように座っていた。
「……松永が来た…。…なら、もうじき」
話が変わりなく進んでいるならば、じきに、小十郎は武田と上杉の忍によって助け出される。
ほ、としきは息をついた。
大丈夫だ、きっと、彼は助かる。



 「右目の旦那っ」
「!猿飛?!」
しきの予想通り、というべきか。
月が西の空に傾き始めた頃、小十郎の座敷牢に武田の忍、猿飛佐助が姿を見せた。驚く小十郎に佐助はにこにこと笑う。
と、同時に、牢の扉を上杉の忍、かすがが開いた。
「城には最低限の兵しか残していないようだな…」
「…!なんでテメェ等がここに、」
「豊臣を探るついで、ってね!右目の旦那には、川中島での借りがあるからな」
「行くぞ」
かすがと佐助はさっさと座敷牢から出ていったが、小十郎は牢を出たところでふ、と立ち止まった。
止まった小十郎を不思議そうに振り返った佐助に、小十郎は視線を向ける。
「…、おめぇ等は先に行け、俺はもう一人見つけてから行く」
「え?何、右目の旦那連れいんの?」
「連れ……といえばまぁ、連れだ。助けねぇ訳にはいかねぇ」
「ちょ、待った待った!」
ずかずかと歩きだした小十郎を、佐助は慌てて止めた。
「見つけるったって、目星とかあるわけ?」
「…目星はねぇ、が…恐らく別の座敷牢だ」
「別の…だと?」
「一度俺のところにそいつの見張りが来たが、土くせぇ匂いはしなかった…と、なりゃあ座敷牢だ」
小十郎の言葉に佐助とかすがは顔を見合わせる。
「…右目の旦那の連れにしては…待遇いいんだね?」
「…。………女だからな」
「えぇっ?!女の子?まぁじ?」
小十郎は驚き、そしてにやにやと笑う佐助を無視して廊下に出た。
そのとき、か細い音だが、僅かに悲鳴が聞こえる。
「!しき、」
「悲鳴?」
小十郎は勢いよく床を蹴った。



 「あ、あぁぁ……」
同時刻。しきのいる座敷牢に、何故か小太郎が姿を現した。小太郎は守衛の兵を一瞬にして殺めてしまい、兵は悲鳴もあげずに倒れた。
転がった骸にしきは声にならない声をあげ、腰が抜けたまま、後退った。
「………………」
小太郎はしきの姿を見つけると、無言で牢の格子を破壊し、静かにしきに近寄ってきた。
「や、やだ!来ないで!!」
しきは半分泣きながら手当たり次第に物を投げ距離をとろうとするが、狭い牢の中ではあまり効果がなかった。
投げつけた数珠は小太郎に弾かれ、バラバラに散った。
「来ないでってば!やだやだ、やっ!」
しきは床に押し倒され、小さく悲鳴をあげた。小太郎の右手が刀に伸びる。
しきの顔が更に青ざめた。
「やだ!やめて!やむっっ」
左手で顔を押さえつけられ、声が出せない。
右手が刀に触れた。
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