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葱と牛蒡とツインテール42

「…小十郎」
「はっ」
「…悪ぃ……城まで任せた」
「は…?」
ぱきっ
政宗の肩の防具が砕けた。小十郎は目を見開く。
陣羽織が裂け、防具が砕け、ついには、兜が割れる。小十郎ははっとなって政宗に馬を寄せた。
「政宗様、」
ふらりと揺れた体に手を差し伸べれば、首から吹き出した、血。
「………ッ!」
がしゃん、と音を立てて政宗は小十郎に倒れた。小十郎は主の血に濡れた事に一瞬固まった後、即座に政宗の首を押さえた。
「…あいつが無理してまで伝えたのはこの為か…!」
小十郎はぎり、と歯を鳴らした。
小十郎はその場で応急処置を済ませると、民の目に止まらぬよう、政宗を自分の陣羽織で包み隠すようにして前に抱え、馬の腹を蹴った。


 二人が戻ってきた後の伊達軍は上から下への大騒ぎとなった。無理もない話ではあるが。
しきもその頃ようやく血がとまり、傷口を露にしない方がいい、と言われて口にマスクのように布をかけていた。わぁわぁと騒がしい城のなかで小十郎を探す。
小十郎は存外すぐに見つかった。人払いがすんだ、政宗の部屋にいた。小十郎の額に傷があることに気がついたしきは、僅かに目を見開く。
「小十郎さま!」
「…お前か」
「あ…」
予想外に小十郎が暗い顔をしていたので、しきは思わず肩を跳ねさせた。ふ、と視線を下に下げる。
「…すいません、もう少し早く気付いてれば…」
「……お前のせいじゃねぇよ」
「…小十郎さま、額の傷…」
「大したことじゃねぇ、人払いしたはずだ、出てけ」
小十郎は吐き捨てるようにそう言うとしきから顔をそらした。
しきはぐ、と唇をかみ、袖の裾を握る。
「……額手当てしたら出てきます」
「テメェ、いつ俺に指図できる立場になりやがった」
辛辣な小十郎の言葉に一瞬しきは怖じ気付くが、すぐにきっ、と小十郎を睨み据えた。
「指図なんてしてません。知ってます?眉間は神経が集中してるんですよ。額の傷は眉間に近い。その傷放置して、目ぇ見えなくなったり耳が聞こえなくなったりして、役立たずになっても知りませんよ!」
「!テメェ!」
「責任を感じるのは分かります!けど、だからってアンタが身ィ滅ぼしたってどーしようもないでしょーがッッ!!!」
額に青筋を立てて振り返った小十郎だったが、一気に口調が崩れた状態でしきに怒鳴られ、驚いたように目を見開いた。
しきは政宗の手当てのために用意されたであろう布巾をぬらし、小十郎の額めがけて投げつけた。
「……手当てしたら出てくっつってんのよ、出ていかせたいなら手当てしなさいよ」
「…テメェこの野郎……」
納得した様子を見せない小十郎に、しきは、ぐ、と拳を握りしめる。
「いつもいつも政宗には奥州全体の命なんだからとか云々言ってるくせに、自分のことはどうでもいいって…?奥州にとって自分がその程度の存在なんだと思ってるんだったら好きにしなさいよ、見損なったわ!何が竜の右目よ!」
「しき!!!」
小十郎の大声にしきは飛び上がり、同時に我を取り戻したらしい、さぁー、としきの顔が青くなった。
小十郎は投げ付けられた布巾で額をぬぐった。しきから視線をそらす。
「あっ、え、う、いや、あの、わたし、」
しきは混乱のあまり変な言葉を口からこぼす。小十郎はぐ、と拳を握りしめた。
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