スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

葱と牛蒡とツインテール29

結果、政宗率いる伊達軍は小田原へ、長曽我部は部下が戦う大阪城へ、そして単騎小十郎は竹中のもとへと向かうことになった。
「ご武運を」
「お前もな。…っといけねぇ、忘れてた。あいつどうすんだ」
政宗は馬の頭を戻し、しきを顎で示した。小十郎はふむ、とわずかに考え込む。
「…政宗様の元にいてもお邪魔でしょう、小十郎がつれて参ります」
「Wow…平気か?」
「どうやら竹中にあれを殺す気はない様子…問題ありますまい」
「……OK、任せたぜ小十郎」
「はっ」
政宗はなにかを察したようににやり、と笑うと、そう言い放ち馬の腹を蹴り、軍を率いて東へと向かっていった。
ぽつりきょとんとしているしきの元に小十郎は戻り、手を差し出した。
「おめぇは俺と一緒に来い」
「えっ、マジですか」
「あちらに行っても邪魔なだけだ」
「…私が言うのもなんですが、一人でいくって大概無謀ですよね小十郎様も…」
「確かにお前に言われたくはねぇな。掴まってろ、飛ばすぞ」
「はいっ!」
小十郎は馬の腹を蹴った。



 「………来たのか」
馬の足音が耳に届き、半兵衛はぼそりと呟き、そちらを振り返った。
半兵衛の視界に小十郎が現れる。小十郎の後ろには、しきの姿もある。
半兵衛の周りの兵はどよめいたが、半兵衛は逆にくすりと笑った。
「来ると思っていたよ、片倉くん。それに、しきくんもね」
「…しき、耳塞いで隠れてろ。お前は見なくていい…!」
はらり、と小十郎の前髪が垂れた。
「…!………、はい」
しきは小十郎が極殺モードになった事を察し、きゅ、と拳をつくって言われた通りに隠れた。
「うおぉぉぁぁぁあ!」
小十郎は吠え、そして地面を強く蹴った。


 少しして、一瞬静かになった。しきは隠れていた場所から顔を覗かせる。
場には、半兵衛と小十郎のみが立ち、そして斬り合っていた。
「………ッ」
しきは思わず顔をそらし、頭を抱えた。
「…う………」
しきは別に、豊臣軍の面子は嫌いではない。嫌いではないからこそ、耐えられないものがあった。
仕方がないこと、ある意味決まりきっていること、そうとは分かっていても、納得できないもながあった。
「……これが…戦争……」
散々ゲームはやっていた。だがそれでも、所詮ゲームはゲームでしかないのだ。
ゲームの世界での事を実際に現実でやるのは、そう生半可な気持ちではできない。
それが、人が死ぬことならば、尚の事ーーー
「……ーーーッ」
しきはぐ、と唇をかんだ。かたかた、と体がわずかに震える。
怖かった。どうしようもなく、怖かった。
どちらかは死ぬこと。何より、命をかけて、何かを目指すことが出来ること。
それをすごいと思う余裕はなく、ただ、恐怖だった。
「ーーー!」
塞いでいた手越しに聞こえていた、戦いの音が止んだ。
しきは、ばっ、と隠れていた場所から飛び出した。崖っぷちに、半兵衛がフラりと揺れている。
「!!」
しきは思わずそちらへ駆け寄る。
小十郎が驚いたようにしきを振り返り、半兵衛は、くずれた地面と共に、海へと落ちた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2013年05月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31