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葱と牛蒡とツインテール34

「………はっ」
少ししてしきは意識を取り戻し、がばっ、と起き上がった。
起き上がった拍子に体からぱさり、と何かが落ち、何だろう、とそれを見てみれば、小十郎の陣羽織だった。
「!!!」
びっくりして回りを見渡すと、いつのまにか違う部屋に来ていた。
先の広間よりは狭いが、一人の部屋にしては少し広く、部屋の隅には文机とたくさんの和紙が整理整頓されて置かれていた。文机の上では蝋燭が淡い光を発している。
「…誰かの部屋……?」
「なんだ、起きたのか」
「うひゃっ?!」
しきがぽつり、と呟くと同時に、がらりと障子を開けて、防具をはずしたらしい小十郎が姿を見せた。突然のことに変な声を上げてしまい、小十郎はそんなしきに苦笑した。
「ったく、なんでぶっ倒れたか知らねぇが、大丈夫か?」
「あ…はい、キャパオーバーしただけです……」
「きゃ…よく分からねぇが、問題ねぇなら構わねぇ」
小十郎はそう言うと、しきの前にあぐらをかいて座った。
「…今日は突然すまなかったな」
「え、あ、いえ!あ、でも結局、どうなったんです…?」
「お前は明日から、俺の女中としてここで働いてもらうことになる」
「わぁ」
「お前、どれくらいのことが出来る?」
小十郎の言葉にしきは、こて、と首をかしげ、うん、と唸った。
「…一応掃除とか炊事とかの家事は一通り…短いですけど、一人暮らししてたので。あ、でも炊事は微妙です、ない調味料とか材料とか多いので…洗濯板も昔使ったきりで…」
「着物の気付けは?」
「う…正しくは分からないです…」
「…そうか」
「あ、でも、私演算は得意です!」
「演算?」
しきの言葉に小十郎が若干渋い顔をしたため、しきは慌ててそう言った。小十郎は意外そうにしきを見た。
しきは大きくうなずく。
「私大学国際経営学科で、あ、要するにえーと…外交面を含む経理、を専攻してたので」
「…よく分からねぇが…勘定が得意ってことか?」
「はい!」
「…なるほどな。だったら俺の身の回りの世話より、仕事手伝ったもらった方がよさそうだ」
「!!」
小十郎の言葉にしきはぱぁ、と顔を輝かせた。小十郎は開いていた窓から外を見る。
「…どちらにせよ、細かい話はまた明日だな。今から帰るのもあれだろう、泊まってけ。布団はそこだ、悪いが適当に敷いて寝ててくれ」
「えっ?…えぇっ?!同じ部屋ですか!?」
「な…別に手ぇ出しゃしねぇよ!」
しきの言葉に小十郎はむっとしたように言い返す。
しきはそうじゃないそうじゃないと首を横に振る。
「…ていうか…今から仕事するんですか?」
「…溜まっててな」
「じゃあ、手伝います」
「なっ…いや、お前は」
寝てろ、と止めようとする小十郎をするりと交わし、文机に散乱している書やら何やらを見下ろす。
「小十郎様が仕事してるところで寝られるわけないでしょう。正直こんな達筆な書類こんな暗いところじゃ読めないし、整理くらいならしても構わないでしょう?」
「……仕方ねぇな」
小十郎はそういいつつも、口元は僅かに笑んでいた。姿勢を戻し、しきの隣、文机の前に座る。
「こいつとそいつはその箱の中に入れといてくれ。後、棚の中に新しい紙がある、それとってこい」
「はいっ!」
しきはどこか嬉そうに笑うと、小十郎の指示する通りに動き始めた。
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