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葱と牛蒡とツインテール36

「…もう少し丁寧に。八割ほどできてはいますが締めが甘い!」
「すいませんっ!」
「……はい、よろしいでしょう。では次は…と、もう昼時ですね。昼にいたしましょうか」
「わかりました」
昼時になり、ようやくの休憩となったしきは、ふぅ、と息をついた。
四時間ほどの作業で小十郎の部屋と廊下の掃除、稽古着の洗濯、朝食の片付け等が終わった。なかなかの力仕事で、しきは張った腕をぶんぶんと振った。
「おい、しき」
「!小十郎さま!」
と、そこへたまたま、小十郎がやってきた。小十郎も腕を酷使したのか、肩をぐるぐると回しながらしきの方へやって来た。
「調子はどうだ?」
「け、結構キツいですね…」
「ふ、まぁそうだろうな。今休みか?」
「ちょうどお昼になったところです」
「…そうか。……その、なんだ…」
「?」
小十郎はなにか言いたそうに視線をさ迷わせた。しきはきょとんと首をかしげる。
そんなところへ、政宗も姿を見せた。声をかけようとする素振りを見せた後、小十郎の様子に気がつき、にや、と笑った。
「よう、嫁」
「っっ!政宗様!」
「な、なんですかそれ?!」
「いーじゃねぇか嫁でも。そんなことより、アンタも昼飯なんだろ?どうせなら小十郎と一緒に食ったらどうだ?」
「!!」
政宗は小十郎の肩にもたれ掛かるように立ち、ちらり、と小十郎を見ながらそう言った。
小十郎はぐっ、と唇をかんで目をそらす。何故か顔が僅かに赤い。
「…え、でも…一応私まだ女中ですし…」
「Hum…それもそうだな。ならいっそのこと、全員で食うか!」
「はっ?!政宗様何を、」
「豊臣の山猿もぶっ倒した所だ、しばらくは戦もねぇだろうがいずれまた戦は起きる。たまにゃのんびりPartyと洒落こむのも悪かねぇだろ?」
「は、はぁ…」
小十郎は曖昧な返事を返すことしかできない。
政宗はぱん!と拳を手のひらに叩きつけ、にやっ、と笑った。
「Get it!!そうときまりゃ、稽古場乱入すっぞ!…あ、別に来なくてもいいけどな?」
「?…!政宗様!」
政宗はそう勝手に提案し勝手に決めると、意味深な言葉を残し、部下が集まっているらしい稽古場へと走っていってしまった。
残された小十郎は深々とため息をつき、しきはくすり、と笑った。
「…笑い事じゃねぇ」
「すいません、つい」
「…やかましい中で飯を食うのは好きじゃねぇ。お前はどうする」
「…ふふっ」
「何がおかしい?」
しきはくすくすと笑いながら小十郎を見た。小十郎は、う、とうめき、気まずげに顔をそらした。
「……あの来なくてもいいってのは、城の人集めて騒いでおくから二人で食べろ……って、事ですよね?」
「………ちっ」
「えっ」
忌々しげに舌打ちをされてしまい、さぁっ、としきの顔が青ざめる。
が、それに反して、小十郎の顔は赤かった。
「…色恋沙汰に関してはお前の方が上手か」
「?」
「くそ、もういい、行くぞ!」
「えっ、あ、はいっ!」
小十郎はがし、としきの手を掴むと、政宗が走っていった方とは逆の方向へ歩き始めた。しきは僅かに驚いた後、どこか楽しそうに笑った。
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