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葱と牛蒡とツインテール39

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それから、幾日かが過ぎた。
しきも大分仕事に慣れて日々を過ごしていた。きゅ、と雑巾を絞った時、しきはとある不自然に気がついた。
普段より騒々しく、金属がすれる音が聞こえた。
「……?」
しきは不思議に思い、掃除をしながらそちらへ視線を向けた。鎧を着た兵士が通りすぎる。
「戦……?」



しきの脳裏に、白く輝く刃のような男の姿が、過った。
「ッッ!!!!!」
しきはあることを思いだし、驚愕に目を見開いて、思わず手に持っていた桶をおとした。
からん、と音がして、廊下に水が飛び散った。近くで作業していた他の女中が驚いたようにしきを見る。
「…ど、どうしました?」
「…やばい!!」
しきは桶をそのままに廊下を蹴った。
 「?」
少しして、小十郎は慌てふためきながら走っているしきを見つけた。小十郎は僅かに眉間を寄せ、しきに近寄る。
「おい、しき」
「!小十郎様!」
「こんなところで何して「政宗様は?!」
しきは小十郎に気が付くと、その言葉をさえぎり、叫ぶようにそう問うた。小十郎はしきの剣幕に驚きながらも答える。
「陣触れをなされたまま、どこかへ…」
「やっぱり…!小十郎様、政宗様を追ってください!最上領に向かったはずです!」
「?!最上領だと?確かに、今は最上領に近付いてる謎の勢力の為の陣触れだが……」
「いいから!はや……ッ」
ーーびりっっ。
そんな音がして、しきの唇の一部が、唐突に

裂けた。

「ーーーーーーッ!!!」
直後に襲った激痛に、しきは口を抑えて膝をついた。小十郎はぎょっとしたように、痛みに痙攣するしきの肩をつかむ。
「おい!どうした!!」
ぼたぼたぼたっ、としきの指の隙間からとどめなく血がこぼれ落ちる。しきの顔を脂汗がしたった。
「い……いひゃ………」
「おい!誰か布寄越せ!」
「小十郎様、早く…ッ」
自分に気をかける小十郎を政宗のもとへ向かわせようと口を開けば、反対側の唇も裂けた。しきは痛みに強く目を閉じた。
「う、うわっ?!」
「おいしき!傷見せろ!」
「〜〜〜〜ッ!!」
まさか、これは。
しきは、はっとした。
小十郎はそんなしきに構わず、口を抑えるしきの手をどかすと、布で血を拭った。
拭った事で露になった深い傷口に、小十郎は小さく舌を打つ。
「どうなってやがる…!」
「…未来……」
「あ?!」
「話しちゃ…ダメ……」
「…?……!」
ぽつぽつと聞こえた言葉に小十郎は首をかしげたが、すぐに意味を理解した。小十郎はしきに布を持たせる。
「大丈夫だな?!」
「…っ!」
小十郎はしきが頷いたのを確認すると、素早くきびすを返して馬に跨がり、他の兵が困惑しているのをそのままに城を飛び出した。
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