スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

葱と牛蒡とツインテール47

「…人を殺しているんです。三成みたいな人間が生まれるのは仕方のないことです。それでも戦うことを選んだのなら、その事を後悔するのは筋違いでしょう」
「…ふふ、手厳しいことを言うじゃねぇか」
「……友達の受け売りですけどね」
「後悔なんかしちゃいねぇさ。まぁ、お前からそうした言葉が出るのは意外だったけどな」
「そうですか?」
「お前は、石田に同情しているだろう」
小十郎の言葉に、しきはぴく、と肩を跳ねさせた。困ったような笑みを浮かべ、僅かに首を傾ける。
「…、…まぁ、していないといえば、嘘になりますね」
「だから、な」
「…それでも私は、小十郎さま方の人間ですから」
「!」
小十郎はしきの言葉に驚いたようにしきを見、僅かに顔を赤くして顔をそらした。
「…お前さらっとそういうこと言うんじゃねぇよ……」
「?」
「なんでもねぇっ。とにかく、俺は戦の用意をしなけりゃならねぇ。……徳川家康も妙な動きをしていると聞く。この戦…でかい戦になるだろうしな」
「…はい」
小十郎はそう言うと、政宗の後を追って姿を消した。残されたしきは城下町へと視線を向け、きゅ、と拳を握った。

 その夜。しきは小十郎の隣で仕事を手伝っていた。慣れない筆を駆使し、出納を記録していく。小十郎は自分の仕事をしながら、ちら、としきを見た。
「…お前、何で勘定を学ぼうと思ったんだ」
「え?いや、昔から数学はそれなりに出来たから…仕事に結び付くことを学ぼうって思って」
「好きだから、ではねぇのか」
「好きではないですねー嫌いでもないですけど。好きなことやって生きていこうって思えるほど、夢を見れる質じゃなくて」
しきは、あはは、と苦笑する。小十郎は、そうか、と呟くと視線を自分の手元に落とした。
しきは筆を進めながら、ちら、と小十郎を見る。
「…それを言うなら、小十郎さまはどうですか?」
「俺か?俺は今は、自分の意思で政宗様に仕えている。そんなん見りゃわかるだろ」
「…昔はそうでもなかった?」
「さぁな。……っし、今日はこの辺までにしておくか」
「はーい」
しきは小十郎の言葉に区切りのいいところまで書き進めてから筆をおき、うーん、と背筋を伸ばした。
「いやー今日も働きましたー」
「そういえば生嶋から聞いたぞ、今日廊下掃除で盛大に転けたって」
「ぃぎゃあっ!!見られてたなんて!!」
「ふ、なんだその反応は」
小十郎はくすくすと笑いながら手早く道具を片し、腰をあげた。隣の部屋にすでに敷いてあった布団に、ぼふっ、と倒れ込む。疲れているようだ。
しきは掛け布の上から寝ようとしている小十郎を揺する。
「そんな格好で寝ると風邪引きますよー」
「めんどくせぇ……」
「子供じゃないんですから…」
しきはやれやれ、といったようにため息をつき、困ったように首を傾げた。
起きあがる気配のない小十郎にしきはふ、と隣の自分の布団を見た。そして、ふむ、と呟く。
「…じゃあこうしちゃいますよ、小十郎さま!」
「!」
小十郎は驚いたように伏せていた目を開いた。目の前には、してやったりと笑うしきの顔がある。
しきは自分の布団から掛け布を持ってきて、小十郎の隣に自分も寝ることで掛け布を共有しようとしていた。
しきと行動に小十郎は何度か瞬いたが、くす、と笑うとその目を閉じた。
「好きにしろ…」
「えっ、反応うすっ!」
「さっさと寝るぞ」
「う…はーい」
しきはぷぅ、と膨れながらも小十郎に僅かに体を寄せ、目を閉じた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2013年05月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31