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葱と牛蒡とツインテール44

すす、と、小十郎の後ろの襖が静かに開いた。
「………こ、小十郎さま…」
「…しきてめぇ」
「ひぃっ!す、すいません!!」
襖から顔を覗かせていたしきは、ひゃっ、とすぐに隠れる。小十郎ははぁ、と小さくため息をつくと部屋に入った。
しきは僅かに驚いたように小十郎を見上げる。すんなり部屋に入るとは思わなかったようだ。
「………昼間は悪かったな」
「!!!い、いや、あの、えっと…その…失礼いたしました…!」
「まァ政宗様を呼び捨てたのはあれだが…別にいい」
「…え。えーと………その…」
気まずげなしきに、小十郎はふっ、と自嘲気味な笑みを浮かべる。
そしてその顔のまま、しきを振り返った。
「なら聞かせろ。俺はそんなに、自分をおそろかにしているように見えるか?」
「えっ?」
「生嶋が言ってたの、聞こえてただろ」
「……政宗様が絡むと……はい…」
「…そう、か………」
小十郎は、はぁ、とまたため息をついた。しきは困ったようにわたわたと視線をさ迷わせる。
小十郎はそんなしきに、ふ、と笑うと、膳の前に座った。
「…こっちに来い、しき」
「え…あ、はいっ、失礼します…」
しきは小十郎に呼ばれ、小十郎の隣に座った。小十郎はく、と軽く頭を下げると茶碗を手にとって食べ始めた。
しきは僅かに目を伏せる。
「…小十郎様は……そういう意図は、きっとないんでしょうけど…そう見えるときは、時々……」
「…………」
「そう見えない時もあります、けど……う、うーん、うまく言えないんですけど……」
「…そうか」
「……何でもかんでも、小十郎様になにか問題があるなんて事はないし、何かできたはずだなんて、思う必要はないと、そうは思います」
「………何故だ?」
小十郎の問いに、しきはぴく、と肩を跳ねさせたあと、言葉を選ぶように、慎重に口を開いた。
「…今日の戦いだって、言ってしまえば政宗様自身に原因があります。全て察して正しい道に進める、誘える、そんな人間は、いませんよ」
「…」
しきの言葉に、小十郎は目を細め、食事の手を止める。しきは真っ直ぐ小十郎に視線を向けた。
「やるべきことは、できたかもしれない、できたはずだと、考えることじゃないと思うんです」
「……お前は、そう思わずにいられるのか?」
「…私は…弱虫ですから。そんな風に自分を責めることは、臆病だから出来ない……弱虫なりに、反省することしか、出来ないです」
しきの言葉に小十郎はしきを見た。しきは緊張しながらも、視線をそらさなかった。今ここで視線をそらしたら、逃げ口上だと思われると、思った。
小十郎は小さく笑った。そして、箸を膳に戻すと、不意にしきの腕をつかんで抱き寄せた。
「ッ、」
突然のことに抵抗する間もなく、しきは小十郎の腕の中に収まった。ぽっ、と顔が赤くなる。
小十郎は額をしきの肩に当てた。苛立っているかのように、ぐりぐりと首を横に揺らす。
「…小十郎さま」
「少しこのままでいさせろ…」
「……はい」
しきは少し迷った後、小十郎の背中に手を回した。ぽふぽふ、と柔らかく背中を叩く。
くく、と小十郎が小さく笑った。
「俺はガキか?」
「!!い、いや、そんなつもりは……」
「…ふ、そんな風にされんのはいつ以来だろうな」
くっくと笑う小十郎に少しばかりの不安を覚えたしきは、なにも言わず、ぽんぽんと背中を叩いた。
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