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葱と牛蒡とツインテール41

「政宗様、お下がりを!」
「お前、なんでここにっ」
小十郎は政宗の言葉を背に、一瞬の内に目の前に現れた三成の刀を受けた。
細い男だと思っていたが、速度があるからか、意外にもその刃は重い。何より、三成から放たれる殺気が痛い。
「あれに聞いたまで!」
「あれ…あいつか、」
「許さない…!」
三成は小十郎を弾き、返す刃を突き出した。小十郎は刀の腹でそれを掠めるようにして方向をそらし避け、三成の刀に沿うように刀を振る。三成はぐ、と前に出て刀を横にし、再び拮抗状態に持ち込む。
二人の顔がぐっ、と近付き、二人は至近距離で睨み合う。ぎちぎちと二人の間で刀が鳴った。
「大阪では連れが世話になったな」
「ほざけ!世話などしていない、あの女の事など知ったことか!貴様もろとものたれ死ね!」
「はっ…なにもしていないあいつもか?」
「なにもしていない、それも罪だ!!」
三成はそう叫ぶと小十郎の刀を弾き、小十郎を蹴った。予想外の攻撃に思わず小十郎はよろめく。その一瞬に、三成は刀を振った。
びっ、と小十郎の額から血が飛んだ。
「小十郎っ!」
政宗が焦ったような声を出す。小十郎はちっ、と舌を打つと返す刀を構え直した。
三成は息つく間もなく間合いをつめる。かんかんと刀が音をたてる。三成の剣捌きを追う小十郎の目が目まぐるしく動く。正確に受け止められる刀に、三成はぎり、と歯を鳴らした。
互いに弾きあい、二人が距離をとる。政宗はぐ、と小十郎の肩を掴み、視線を送った。
小十郎はその視線に頷くと、次いで来た三成の刀を受け、弾くと先の三成のように小十郎を蹴り飛ばした。
「ッ」
小十郎の方が蹴りの威力が強かったらしい、三成は数歩後ろに下がった。
その間に、小十郎と政宗は跳躍し、馬のもとに戻った。
「Cool off」
三成ははっ、としたように政宗を見上げる。
「怨みじゃ俺は倒せねぇ。まずテメエの旗を掲げな。話はそれからだ。天下を懸けて戦り合おうぜ。You see?」
「天下など知るかッ!貴様の生命の停止こそが私の無上の望みだッ!」
「そんなに山猿の大将を悼みてぇなら墓にでも参るんだな」
政宗の言葉に三成の顔が歪む。
「貴様…!罪人がこのうえ秀吉様を下衆な仇名で侮辱するかッ!」
「Keep it up!Ha!」
政宗はそう言い捨てると小十郎を促し、馬の腹を蹴った。小十郎もその後に続く。
「おのれエエエッ…!!私に謀戮されろォォッ!!」
三成は勢いよく地面を蹴り、政宗の後を追うが、深い谷がそれを阻む。
「許さない…貴様の犯した罪を私は許さないッ…!」
三成はぎゅ、と拳を握りしめ、天を仰いだ。
「伊達政宗ェェェーッ!!」
三成の声は、曇天に虚しく響き渡った。



 「政宗様!」
「小十郎…額は」
「問題ありませぬ」
伊達領に戻ったところで、小十郎は政宗に声をかけた。政宗は首を僅かに動かし、小十郎を振り返りそう尋ねた。小十郎はぐい、と額から垂れる血を拭い、そう答えた。
政宗はそうか、と返す。
「あの男…一体何者だ」
「石田三成…小十郎も、名しか知りませぬ」
政宗は小十郎の言葉に、Hum、と呟いた。
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