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葱と牛蒡とツインテール22

「………ん?」
しきの座敷牢に、ふわり、と風が吹いた。しきは小さく声をあげ、少し離れたところにいた吉継は、風を感じたと同時に、勢いよく浮き上がった。ぎゃらら、と音がして数珠も浮き上がる。
その勢いにしきも驚いた。
「な、なな、なんですかっ?!」
「…何ぞ、入り込んだか」
「え?」
「今日物騒な客人がおるとは聞いておったが……」
「物騒な……客…?…!……」
しきは、はっ、と気がついた。そんなしきに吉継は振り返り、す、と目を細めた。
「…松永弾正という男でなァ…自らの欲に忠実な男よ」
「……じゃあ、今の風は……」
「?」
しきはちら、と吉継を見たあと、辺りをわずかに見渡し、ちょいちょい、と吉継を手招いた。
僅かに輿を寄せた吉継に、しきは少し顔を寄せた。
「…この時……風魔小太郎を雇ってます」
「…なるほど、忍を使い、大阪城を詮索しやったワケか……」
「でも…なんで、座敷牢まで?」
「………梟は耳がよい…主の正体は知らなんだでも、逆にただの女子が捕らえられた事が気にかかった、ということか」
「……、……」
吉継は数珠をふよふよと飛ばし、座敷牢内に誰もいないことを確認すると、静かに輿を下ろした。数珠も静かに吉継の周りに降りる。
「…嫌な予感がしやる」
「、え?」
「主にこれをくれてやろ」
吉継は不意にそう言うと、しきに向かってぽい、と数珠を投げ渡した。しきは慌てて受けとる。
数珠はきらきらと透明に光っている。
「…えっと、なんで?」
「何、ただの守よ、マモリ。主がさらわれてしまっては困るゆえ」
「……私どっちかっていうと伊達の人間です、よ?」
「伊達ならばまだよいのよ、主は既に話してしまっておるようだからなァ。これ以上、主を知る者はおらぬ、それがよいのよ」
「……そう、ですね」
しきは、きゅ、と数珠を握りしめた。



「あの二人、気、合ってるな…」
「「合ってねぇ!」」
ひゅっ
「!矢文…?」
「!!これ、小十郎様の、」
「!」



 翌日。しきは、吉継という話し相手がいるお陰か、平生を保てていた。貰った数珠も何かあるのか、握っていると気持ちが落ち着いた。
「…この数珠、ただの数珠ですか?」
「?まぁ、主の生気は吸うておるかもなァ」
「いいいいいっ」
「ヒャッヒャ、冗談よ」
吉継は楽しそうに笑う。しきは、これから起こるはずの事を考え、ふ、と口をつぐんだ。

この後、豊臣秀吉は伊達政宗に討たれ、石田三成の復讐が始まる。大谷吉継はそれに乗じて悪巧みを考えるが、それが三成の求めているものとは違うことを知り、そしてーーー


「……どうしやった?」
「……大谷さんは…何が願いですか?」
「唐突に何よ?」
「……いえ、なんでもないです………」
しきは、数珠を強く握りしめた。吉継はそんなしきを見て僅かに首をかしげたが、追求はしなかった。
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