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葱と牛蒡とツインテール28

しきは、思いきって小十郎の目を見る。
「私は、貴方の事を、好いています。異性として」
「!!」
小十郎は目を見開き、うろうろと視線をさ迷わせた。少しばかり可愛い。
少し待ったが、狼狽えるだけで、小十郎はなにも言わない。
「…あの……それが私の気持ちですけど」
「!!!す、すまねぇ、えっと、」
小十郎はしきの言葉に顔を赤くさせ、完全に動揺していた。
その様子に、しきは思わず、くす、と笑う。そして、少しばかりいたずらしたくなった。
「…お返事頂けないんですか?」
「!!!」
「私、結構、言うのに勇気必要だったんですけど?」
「お、俺は…その………」
にやにやと笑うしきから小十郎は顔をそらす。耳まで赤くなっている所から、満更でもないのだろうか。少なくとも、嫌われてはいないようだ。
しきは、ふふふ、と笑うと小十郎の足に手をついて若干体を上げ、顔を近づけた。告白という大イベントをしてしまった事と、小十郎が思っていたよりも初な反応を見せたからか、若干大胆に動けていた。
「…こじゅーろーさま?」
「……ッ!くそっ!」
「えっ、」
小十郎は不意に毒づくとしきに向き直り、きょとんとしているしきの頭をがしり、と掴んだ。

そしてそのまま自分の方へと引き寄せ、唇を重ねた。

「!?!!!?!???!?!!?!」
しきの顔が再び真っ赤に染め上がった。思わず顔を離し、唇を押さえる。小十郎は顔を赤らめながら、わずかに視線を逸らした。
「…え、えと、これは………」
「……すまねぇ、言葉にするのはまた今度にさせてくれ!!」
「うわわわわいああああああ?!」
小十郎は照れ隠しか、馬の腹を蹴って馬を走らせた。突然のことにしきはバランスを崩し、ぼて、と小十郎にぶつかる。
しきはそ、と小十郎を見上げた。切り替えが早いのか、顔の赤みはひき、引き締まった表情で前を見据えている。
「………えーと、あの。フラれてはいないととってよろしいんでしょうか」
「…好きにとれ」
「…!…ありがとう、ございます……」
「何に対する例だ。速度をあげるぞ、しっかり捕まってろ」
小十郎はそう言ってしきの肩を抱えるように持つと、馬の走る速さを上げた。
しきは口元を綻ばせると、小十郎にそのままもたれた。
「(…色々信じられない、けど……)」
信じられないことばかりではあるけども、ある意味、ひとつの夢が叶った事に、しきはきゅ、と拳を握った。

これが、例えば、まだ覚めていないだけの、長い夢なのだとしたら。自分の、妄想の中に埋もれているだけなのだとしたら。
否、たとえそうだとしても。
もう少しの間は、覚めないでーーー

しきは、ふ、と目を伏せた。



 「政宗様!」
それから時間がたち、空がしらみ始めた頃、小十郎は政宗のいる場所へとたどり着いていた。
ざわざわっ、と伊達軍から声が上がる。
「小十郎…っ」
政宗は驚いたように小十郎を見、だがすぐに背を向けた。
馬を止め、しきが降りる。
「政宗様、豊臣秀吉は大阪にはおりませぬ」
「なんだと?」
「小田原へ向かったようです」
小十郎は回りのざわめきを気にせず、淡々と続けた。
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