スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

葱と牛蒡とツインテール27

「ほら、俺の足の間に乗れ」
「し、失礼します…」
馬を見つけた小十郎は素早く跨がるとしきに手を差し出した。しきは僅かに赤くなりながらもその手を取り、馬に対し横向きに乗った。
「捕まってろよ」
「きゃっ!」
小十郎はしきの腰を抱きかかえるように腕を回すと、馬の腹を蹴った。
しきは腕を回されたことと馬が動いたことに驚いて小さく声をあげる。小十郎はそんなしきに、くすりと笑った。
「相変わらずお前は、肝っ玉が据わってんだか据わってねぇんだか…」
「わ、私は基本臆病ですっ!臆病の境地に達した時吹っ切れるというかなんというか……」
「…あぁ…疲れすぎると逆に元気になるあれか」
「やっぱりそういうことあるんですか?」
「やっぱりってなんだ、オイ」
「いえ、なんでもないです」
馬は人気の無い山道を進んでいく。夜空には、半分欠けた月が輝いている。
小十郎はしばらく黙って馬を走らせたが、ふ、と思い出したようにしきを見下ろした。
「…一度、白い男が来たことがある」
「?………、三成ですか?」
「そうだ、そんな名前の奴だ。お前が大分衰弱していると聞いてたが…」
小十郎の言葉はどことなく歯切れが悪い。しきは、あぁ、と呟いた。
「……確かに、三成は無口で話すことも出来なかったので…大分精神的にきました。でも、たぶん上杉攻めで駆り出されたのか、他の人に変わって、おしゃべりな人に変わったので、大丈夫でしたよ!」
「……だが、痩せたな」
「え。そ、そうですか?ふ、太ってたのでちょうどいいくらいですよ!」
「俺は前から痩せてる奴だと思ってたが。現に軽いしな」
「い、いや…そんなことないですよ」
「…巻き込んじまってすまなかったな」
小十郎の言葉にしきははっ、となりぶんぶんと首をふった。
元はと言えば、畑での騒動に乱入したしきが悪いのだ。
「こ、これはあれです!自業自得って奴です!でしょう?!」
「………だが、」
「小十郎、様が気に病むことじゃないですよ!!」
「……しき。ひとつ聞かせろ」
「はっはい?!」
小十郎は道なりに馬を進めながらふぅ、と息をついた。しきは何を聞かれるのかとどぎまぎする。
「…こんなことを聞くのは無粋だとは分かっちゃいるんだが」
「?はい」

「お前が……俺に対して抱いてる感情は何なんだ?」

「ひゃっ?!」
思いがけない質問に、しきは顔を真っ赤にさせ、わたわたとする。小十郎は気まずそうに顔をそらす。
「そ、それって、ど、どういう?!」
「いや…卑怯なのも重々承知しちゃいる!……だけど、気になってよ…。女にそういうこと、言い寄られたことねぇんだ…よ……」
よくよく見ると、小十郎の顔を真っ赤だった。どうやら本当に女性に好かれたことがないらしい。
しきは赤い顔を押さえるように手で顔を覆う。
「う…えと……」
こういうのって男からとは限らないのかー!
しきは思わずそう思う。
「(しかもこれ断られたらどうすんの)」
嫌なパターンを想像してしまい、今度は青くなるしき。自分が知る夢小説とは異なるパターンに戸惑っているようだ。
ええい、ままよ。
しきはそう思い、小十郎に向き直った。小十郎は驚いたようにしきを見、思わず馬を止めた。
「…私は……」
「…………」
しきは、ぐ、と拳を作った。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2013年05月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31