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もうお前を離さない299

「…。えーと?これは入っていいのかな?」
「む、村越殿ッ!!」
「いいよーおいでおいで」
いつの間に戻ってきていたのか、やれやれと言いたげな村越に真田は慌てて宮野に回していた腕を離し、宮野は苦笑しながら手招きした。
「そうだ、芽夷も左足手当てしなきゃ。幸村後ろ向いてて、芽夷袴脱いで」
「は、破廉恥な!」
「せっかくの白袴が赤くなっちゃった」
村越はくるくると宮野の左腕を手早く止血し手当てした。それが終わるとちゃっちゃと袴を脱いで自分の足も手際よく手当てした。
村越はすす、と足を寄せ体育座りに座った。真田は宮野のいいよ、という言葉に振り返り、剥き出しの村越の足を見てしまって慌てて宮野の背中合わせに座った。
「…ねぇ黎凪……これからどうなるんだろう。大谷さんは殺されないでよかったけど、雑賀も長曾我部も西軍から抜けた…」
「…ん?雑賀衆が?」
「徳川の味方はしない、って言ってたらしいけど…」
「…って事は前田慶次緑ルートか」
「既存の話にもあるの?」
「一番平和なエンドなのかな。前田慶次が関ヶ原に乱入して説教して終わり。肝心の説教内容がよく分からんから参考にはならなかったけどね」
「…そうなんだ」
村越はそう言うと僅かに俯いた。宮野は顎に手を添え、考え込む。
「…そのまま進みゃいいけど長曾我部緑ルートに毛利青ルートは簡単に行かないよなー…」
「この後はどうなるの?」
「…だぁぁ、全く予想がつかない。長曾我部緑ルートも毛利青ルートも関ヶ原の戦いはないし。ただ、毛利青ルートだった場合、長曾我部が徳川を潰すからまずあり得ないはず。たが青ルートである事は確か、か…」
「?」
「毛利は北、長曾我部は西軍にいない…雑賀衆も東軍ではない…。関ヶ原の戦いの中でも謀略と集結は消える。残るのは内応、決戦、最強、残影、乱入……。いや待てよ、最強は北条が東軍で出てきた。寧ろ北条と最上しか出てこない…最強は除外するか。前田慶次緑ルートは乱入なんだよなァ…」
「何それ、関ヶ原の戦いのステージそんなにあるの?」
宮野はぶつぶつと呟きながら地面に言った言葉を書き始めた。真田も後ろからそれを覗き込む。
「内応と決戦は対西軍、残影は対東軍、乱入はその名前通り2つの軍の戦いに乱入する。乱入は一緒にやったろ?」
「……あぁ!あれか、大谷さんとロボットが落ちてくる」
「ろ、ろぼっと?」
「…本多忠勝の事ね」
宮野はぽすん、と真田にもたれかかった。
「んー?どれだよ〜?今まで見てきて関ヶ原の戦いがないとは思えないし…」
「…。黎凪は、諦めてないんだよね」
「?諦めてないよ。諦めたら私がここにいる意味がなくなる」
「…そんな事はないと思うけど……。…黎凪って、困った時困ったように見せないよね。なんで?」
村越の言葉に宮野は意外そうに村越を見、真田は黙ったまま宮野を見下ろした。
「…そうだね。強いて言うなら、相談されるのは好きだけど相談するのは嫌いだからかな」
「何それ?」
「弱みを見せるのは嫌いなんだ。……、強くありたいっていう願望と、知られたくないっていうのかな」
「…どうして?」
「馬鹿にされたから。…、母さんに」
「…、………」
村越は宮野の言葉に口を噤んだ。だが、真田はふてくされたように宮野の体を抱きすくめ口を尖らせた。
「何故だ?人に弱さがあるのは当たり前であろう?それを馬鹿にするなど、お主には悪いが、その者が愚かだという事だ」
「…!」
「幸村さん…」
「全く…黎凪を産んだ者とは思えぬ」
真田はふん、と鼻を鳴らした。

もうお前を離さない298

「大谷さんのバカッ!!」
バシン、と音をさせて村越が平手を張った。大谷は揺れた顔を戻しもせずにただなすがままになっている。
村越は涙を流しながらぽかぽかと大谷を叩いた。
「やれ、そう叩くな…」
「刑部…」
「………」
石田の声に大谷は一瞬石田を見た後すぐに逸らした。石田は大谷の前に立つ。
「…今回の事は、私の人格が原因なのだろう」
「我が勝手にやった事よ」
「刑部!」
「主は関係ない」
大谷はそう言うと石田を見た。それだけは認めない、大谷の目はそう言っていた。

あくまで自分の独断であり、理由がなんであれ石田は関係ない。

そう、言っていた。
石田はがり、と唇を噛む。
「…ッ。…ならば刑部。私は今回の貴様の嘘を許す!」
「!!」
石田の言葉に大谷は驚いたように石田を見上げた。石田はその大谷の面前に刀の柄を突き付けた。
「だが!二度目は許さない!もう二度と私に嘘を吐かないとこの場で誓え!!」
「………相分かっ、た…」
「…ならばいい。行くぞ刑部」
「あ、あぁ…」
「…、村越」
「…ッ、はいっ」
「…あの時止めてくれた事…感謝する」
「…!はいっ!!」
石田はそれだけ言うと城の中へ戻っていった。大谷はしばし呆然とした後、ヒヒ、と小さく笑うと覚悟を決めたように石田の後を追った。
村越は涙を拭いながら宮野を振り返った。
「ありがとう黎凪、私、私…ッ!!」
「…取り敢えず、よかった…ぁぁぁあぁ?」
「!黎凪ッ!?」
ほっと息を吐きだした宮野の体がぐらりと揺れ、真田は慌てて宮野の体を抱き留めた。宮野は左腕を押さえる。
「あーそっか。ちょい血流しすぎた…」
「!そうだ手当て!」
「…無茶をするな」
村越は踵を返し道具を取りに戻った。真田はため息をつきながらその場にしゃがみ、自分を体を背もたれに宮野を座らせた。宮野は真田を見上げ、苦笑する。
「ハハ…でも、ここある意味第一関門だったから…。こうなるのなら、絶対に止めたかった。無茶するよ」
「…、お前が無茶する気持ち、分からんでもない、だが…。…死んでしまったら何もできぬ…」
「…!幸村、」
「夢を叶えたいのなら己を大切にしろ」
真田はふてくされたようにそう言うと宮野の頭をわしゃわしゃと撫でた。宮野は驚いたようにしばらく真田を見上げた後、薄く笑ってぐり、と頭を真田の胸に押し当てた。
「…うん、分かった。ごめんね」
「謝らんでいい。お前の無茶で、お二方の命は守れたろう」
「……、まぁ、長曾我部は三成さんは殺さないんだけどね」
「そうなのか?」
「そう。…だから巷では三成さんが救われるルートって言われてる。……私はそう思えなかったけど」
「何故だ?」
宮野は真田に背中を預けたまま真田を見上げた。
「…三成さんは自分を許せなかった、それを許すっていうのは決してその人にとって嬉しいことじゃない、辛いことだ」
「……………」
「自分を許せない。それを許せるのは自分だけ。むしろその時、きっかけとなった人間に許すと言われるのは苦痛でしかない。哀れまれたようで」
「……、お前にもあったのか?」
「私はまだない。……死んだ兄貴の恋人に、」
「!!」
「…私が犯人になってた時、殺されそうになってね。大丈夫だったけど……申し訳なくて」
「…許すと言ったのか」
「そしたらそう言われたんだ…。…私はどうすればいいのか分からなかった。憎んでほしいのかもしれない、でも私に憎む事はできないから」
「……そうか」
「だってあの人は悪くない…。…悪くないんだ」
宮野はそう言って頭を下げた。真田は何も言わず、ただ宮野を抱き寄せた。

もうお前を離さない297


「…言ったであろ。我には主しかおらぬと…」

ぼそり。大谷がそう呟いた。石田ははっとして顔を上げる。
「……ヒヒ、女々しい事よな」
「刑、部……」
「……大谷さん…」
「…それは肯定してるんですか」
「ヒ、ヒ。…………。…そう……よな」
大谷は肩を竦めとそう言うと己の肩を掴む石田の手を離した。
「…我に触れやるな三成。主まで墜ちてくる事はないわ」
「!…刑部………ッ」
「…認めるしかあるまい。ヒヒヒ…」
大谷はそう自嘲気味に笑い、くしゃ、と石田の顔は歪んだ。
「…長曾我部。アンタはまだ大谷さんに対して怒りを感じてるとは思う。大谷さんにどんな想いがあったとしても、アンタにしてみれば部下を奪われた事に違いはない。だけど、正直私にその感情はよく分からない」
宮野は2人の様子を見届けると長曾我部を振り返った。長曾我部は隻眼を細め、目を伏せている。
「この世界は弱肉強食だ。人を殺したら誉められるような異様な世界だ」
「!…」
「どんな卑怯な手を使っても勝者は正義になる。今はそういう時代じゃないのか。徳川がいい例だ。味方を裏切り壊滅状態に陥れたのに、奪われた豊臣勢以外誰もそれを卑怯だとは叫ばない」
「!!」
「っ、それは物は言いようだろうが!」
「あぁそうさ、物は言いようだよ。大谷さんがした事だって、言いようによってはただの戦略だって事だ」
「くっ…!」
「…許せないのは分かる。でも、アンタは今そういう世界を生きるしかないんだ。諦めな」
「!宮野殿、」
「どうしても2人が許せないなら東軍につくなりなんなりすればいい。だが、今この場で2人を殺すというなら私は邪魔するぞ。大将を私怨で殺させる訳にはいかないからな」
宮野はそう言うと兜割りを抜き構えた。長曾我部は唇を噛み、眉間を寄せた。
「…アンタは俺と同じ立場でもそうするのか…?」
「卑怯な手を使ってやられたと思うのなら、私はそれ以下になるつもりはない。それを卑怯だと思うのなら、正面から潰す。それを邪魔するなら全て潰す!」
「……行かせてくれねぇって事か」
「何度も言わせるなよ。2人はこの軍の大将達だ、部下が大将を守るのは当然の事だろう?」
「……申し訳ござらんが、某も同じ思いにござれば」
真田は真っ直ぐ長曾我部を睨む宮野に、ふ、と挑戦的な笑みを浮かべると、その隣で槍を構えた。
「長曾我部殿は、この真田幸村がお相手いたそう!!勇んで参られよ!」
「…、宮野殿。君は、刑部がした事を卑怯だとは思わないのか?」
「…私はこの世界に来て、あまりに皆が清い考えだから驚いた。大谷さんは卑怯かもしれない、だがそういう状況に追い込んだのは決して大谷さん自身じゃなく、周りの状況、人間だ。私だって、大切な人を生かす為には他の者を犠牲にする。卑怯な真似なんて、勝つためならばいくらでもするものじゃないのか?私の中で大谷さんがした事を卑怯と位置付けるのならば、私は貴方も卑怯と位置付けるよ」
「…そうか。どうする元親。三成達の前にまず、この2人を倒すしかなくなったが。2人も殺されてはくれんぞ」
「…ちっ。いいじゃねぇか。大谷の気持ちは分かったが許せはしねぇ!!なら俺は大谷の野郎を戦場で潰してやるよ!」
長曾我部はそう言い捨てると踵を返した。徳川はフードを被り、宮野を見る。
「…君は本当にそうなんだろうな、宮野殿」
「……。長曾我部元親!最後に1つだけ、アンタに教えてやる!」
宮野はずんずんと去る長曾我部の背に向かってそう叫んだ。
「四国を実際に壊滅させたのは、黒田官兵衛だ!」
「!」
「なんと?!」
宮野の言葉に思わず長曾我部は振り返った。宮野はその目を真っ直ぐ睨む。
「だが黒田はそうせざるを得なかった!四国を壊滅させなければ自分の部下に危険が及ぶからだ!黒田はその事を後悔しているし、アンタにすまない事をしたとも思ってる!だが手を下した事に違いはない!!それにアンタが大谷さんの気持ちを知ってなお許せないのなら、黒田はどうする!?アンタは許すか!」
「…ッ」
「いいか?!戦は常に理不尽だ!それに怒するくらいなら戦なんかするな!!アンタにはそれを理解した上で許すか許さないか決めてほしい!!」
「…ッ。分かってる、俺が悪い事ぐらい…ッ!!」
長曾我部は忌々しげにそう吐き捨てると、今度こそ振り返らずに去っていった。

もうお前を離さない296

「簡単明朗に言ってしまえば、大谷さんは三成さんを勝たせたいんだ」
しん、と辺りは静かになる。
「大谷さんは無意識の内に三成さんの事を大切に思ってる。自覚はないけれど、時々それが垣間見える時がある」
「……」
「大谷さんにとっても自分とは正反対の立場の人間な徳川は憎らしい相手。ある意味で三成さんとは利害一致もしたワケだ」
「…、大谷さんは自分達西軍の為ではなく、三成さん個人の為に、長曾我部を嵌めた?」
「まぁ、そうなるのかな。でも三成さんはこういった方法を認可しない。だからこそこそやった。裏切った、っていうのはそういう意味」
「…………」
「三成さんが自分も許せないのは、大谷さんを信じて全て任せていたから、って事からきてんだけど、それはまあ置いといて。なんで大谷さんが三成さんが大切だと分かるか。次はここ話そうかな」
「!根拠があるの?」
「根拠になるのかは分からないけどね、はは…。大谷さんがよく言ってる言葉分かる?」
「……。攻撃する時、幸よ、福よ、塵と消え、って言ってた」
「May misery rain down upon us all。欧米版のセリフなんだけど、分かる?」
「…全ての者の上に、不幸よ降れ?」
「さっきの芽夷が聞いたのは、英語にするとI will banish all joy and harmony from this world」
「…苛烈……」
「大谷さんはそれだけこの世を憎んでいるし、幸せを憎んでる。英語に直したのは曖昧な言い方にならないからだけど…芽夷以外には分からないか。今言ったのは直訳すると…ま、幸せも調和もこの世から消し去ってやる、かなぁ」
「…刑部の言い方は柔らかい方なんだな」
「そ。要は何言いたいかって、それくらい大谷さんはこの世を憎んでるって事。生きている者皆不幸になればいい、そう思ってる」
「!!」
「…」
「…それは…」
「……ヒヒ。それは肯定してやろ」
「!…それは、大谷さん自身も、ですか?」
初めて肯定した大谷に、村越は顔を哀しげに歪ませる。石田はずっと何も言わずに大谷を見つめていた。
大谷は石田を見ない。大谷は村越を見て、またヒヒ、と笑った。
「無論よ」
「!じゃあ、三成さんも?!」
「!!…、………」
「……刑、部?」
「芽夷ナイス!」
「え?!」
宮野は村越に向かってニヤリと笑って見せた後大谷に向き直った。
「考えた事もなかった、…って顔してますね」
「…!」
「刑部?」
「三成さんは貴方のその想いからは除外されていた。今証明してしまいましたね、大谷さん。それが私が貴方が三成さんを大切だと思っていると考える最大の根拠です」
「…!!」
「…意味が分からん」
「え…あ、そうですか…」
「…だとしても何故だ?」
戸惑う石田の言葉に落ち込んだ宮野に、徳川がそう問い掛けた。宮野は髪を掻き上げ、ふむー、と呟く。
「三成さんは普通の人とは違う。2人の過去に何があったか知らないけど、少なくとも、三成さんの大谷さんに対する態度は普通の人のそれとは違う。私は三成さんの態度に大谷さんが救われたんじゃないかと勝手に考えてますが」
「……刑部…ッ。何故だ!!何故…私に嘘を吐いた!貴様にそこまでさせたのは私のせいなのか刑部!!」
聞いているのに耐えられなくなったのか。石田は大谷の肩を掴み、そう叫んだ。大谷は視線を合わせようとしない。
「何故だ…ッ!私は…ッ!!」
「三成………」

もうお前を離さない295

「………そっか…。長曾我部さんは徳川家康の友人…」
「長曾我部が西軍につけば、東軍からは戦力を減らせる。敵にさせるに最も簡単なのは、相手に憎しみを抱かせる事だ。それによって徳川へ精神的打撃も与えられるしね。まさに一石二鳥!その上でその事を周囲にばらまけば、徳川方の信用も落ちる」
「………………」
「まぁこれだけじゃ確実じゃない。そこで最後の一手。さて、長曾我部。四国強襲の後、毛利から中国も徳川の奇襲を受けたっていう文を受け取っただろう?」
「あ、あぁ…」
「そこで毛利に遠回りに西軍につく事を勧められたはずだ」
「…!」
「三成さん本人は知らないから、三成さんと会っても違和感が生じる事もない」
「…つまりは大谷さんと毛利さんの合作の罠?」
「そういう事。毛利は自国さえ守れればそれでいいから、その為に邪魔な徳川を排除するのに乗ったってワケだ」
「…。…どうして……じゃあ真田と同盟をした後の中国攻めは?」
「表向きの盟約を結ぶ。確かそう言ってた。あくまで長曾我部を嵌めたのは2人の暗躍の成果だからね。まだ西軍と毛利は繋がっていない」
「…どうしてまたそんな手の込んだ事をしてまで…」
「悪巧みは大谷さんが好きな事だ、そこまで面倒ではないはず」
大谷は黙ったまま聞いている。否定をしなければ肯定もしない。
宮野はそんな大谷を見たのち、ふいと視線を戻した。
「…悪巧みが好き…」
「ケッ、虫の好かねぇ野郎だぜ」
「勘違いするなよ長曾我部」
宮野の言葉に悪態を吐いた長曾我部に対する宮野の答えには怒りがこもっていた。そこで怒りを覚えられるとは思わなかった長曾我部は驚いて宮野を見る。
「人間は最初からそんな風には生まれてこない。人から憎まれやすい性格になるのは全て、周りの人間の影響だ。大谷さんが卑劣だと言いたいんでしょう?大谷さんをそうしたのは私たち人間である事を自覚してからそういう事は言えよ」
「は…?」
「…何を言う。主はまこと滑稽よなあ」
「完全な私の持論ですが、私はそう思ってますよ。愛される事に慣れた人間は愛に疎くなり、憎しまれる事に慣れた人間は憎しみに疎くなる。…、凡そ世の中で悪党と言われる人は運が悪かった…。それだけで片付けてしまっていい問題だなんて思わない、それでも私はそう言うしかない…。そして人は己より弱いものを欲しがる。自分が優位に立ちたいと本能的に思ってる。だからこそ、大谷さんのような人は蔑まれやすい。そしてそうした人は卑屈になってくもんだ」
「…普通じゃないから…」
ぎり、と宮野の歯が鳴った。握られた拳はぷるぷると震えている。
「…だから私は人間が嫌いなんだ。自分が同じ人間である事にも反吐が出る…ッ!」
「………黎凪は普通じゃない立場の人間でしょ?私は、それが羨ましいよ黎凪」
「なんで。ろくな事ないくらい、見てて分かるだろ。私も普通と比べれば相当卑屈だし」

「でもだからこそ、黎凪にはその立場の人の気持ちが分かる」

私には大谷さんの気持ちは分からない。だから羨ましい。
村越の言葉に大谷は驚いたように村越を見た。宮野はそんな村越に、優しい笑みを浮かべる。
「…そこまでして、大谷さんの気持ちが知りたいのか?」
「…私は三成さんが大切だよ。だから同じくらい大谷さんも大切なの!」
「…!」
「…一途な所は相変わらずか。大谷さん、私が思った事話しますが構いませんか」
「………好きにしやれ」
「はい、好きにします」
宮野はそう言うと一回深呼吸をし、そして話し始めた。
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