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もうお前を離さない303

宮野は真田を見上げ、ふぅと小さくため息をついた。
「乱入は乱戦だから関係ないんだけど、残ったルートのほとんどが小早川は裏切ってる」
「そんな…今小早川殿は確か、まだ烏城に…」
「聞きに行っても無駄だと思うよ。小早川は死ぬのが怖いんだ。だから優しい徳川に流れる」
「だが…!分かっているなら止めるべきであろう?!」
「…止めるためには小早川を殺すしかないよ」
「!」
「私が知ってるとはいえ、もしかしたら裏切らないかもしれない。私の中では確定していたとしても、証拠がない。…今は手のだしようがないんだよ」
「…ならば、何故…?」
「可能性が高いのは確かなんだ。…知ってた方が素早く対処出来る」
「…俺には、と言ったな。三成殿には申しておらぬのか?」
「三成さんに言ったら即斬殺になる」
「それはそうだが…!……いや、いい。……お前も、本当は言いたいのを耐えているのだろう」
「………」
「すべてを語ることを許されてはおらぬのだからな…」
真田の言葉にぎり、と宮野は唇を噛んだ。何も語らない宮野に、真田は宮野を抱きすくめその首元に顔をうめた。
「……強制的に話せないようにされてもいる。でも…それは本当に核心的な分岐の時だけ。…私は……西軍を勝たせにきたんじゃない」
「……黎凪。1人で背負うなよ」
「!」
真田の言葉に宮野は驚いたように真田を見た。真田は真剣に宮野を見つめる。
「ここに連れてきたのは俺だ。責は共に背負う」
「……ありがとう、幸村」
真田の言葉に宮野ははにかむように笑うと腰を上げた。真田も続いて立ち上がる。
「腕は平気か?」
「大丈夫。ありがとう」
宮野はそう言うとにっ、と勝ち気な笑みを浮かべ、真田もそんな宮野の表情にほっとしながら同じように笑い返した。



 話にあがった小早川が大阪城に姿を見せたのは、それから3日後の事だった。
「こここ怖いなぁ〜……」
「おやおや…金吾さんは本当に三成さんが怖いのですねぇ…」
がくがくと震える小早川秀秋を、隣に立つ天海はどこか嘲るように笑った。
そんな2人に最初に気が付いたのは村越だった。
「…?どちら様ですか?」
「ひぃぃっ!!お、脅かさないでよぉぉっ!!」
「えっ?す、すいません。で、どちら様ですか?」
村越は声をかけた途端飛び上がって天海の後ろに隠れた小早川に首を傾げながらも再度尋ねた。
天海は長い銀髪を揺らして笑った。
「おやおや…金吾さんったら。こちらの方は金吾さんですよ。そして私は天海と申します」
「金吾…あ、小早川秀秋、殿?初めまして」
「…ききき、君は?見たことないけど…」
村越の物腰が穏やかだからか、小早川は天海の後ろから顔をのぞかせた。
「村越芽夷と申します。形式的には石田軍に属しています」
「み、み、三成君にぃぃっ?!」
にこりと笑いながらそう名乗った村越に小早川は驚愕して叫んだ。村越はきょとんとして小早川を見る。
「…?どうかしましたか?」
「だだだだって三成君は怖いものぉぉっ!!」
「…。ならばどうしてこちらに?小早川殿は味方であると伺っていましたが……」
「えっ…?」
「それだけ三成さんを恐れているのに何故西軍に?貴方の意志ではないのですか?」
「うぅ……それは…」
村越はどうにも歯切れの悪い小早川に僅かに眉間を寄せた。
「…、皆…三成さんが怖いんですね」
「……え?」
「私には…徳川がそんなにいい人間だとも思えませんが、第三者にしたら徳川の方がいい人なんでしょうね…」
村越はそう言って悲しげに笑った。
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