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もうお前を離さない289

「そんな言い方しても人は説得出来ないよ!」
「私は説得してんじゃない。強いて言うなら説教だ」
「説教?!何それ!!今三成さんは悪くないでしょ!?」
「他人に勝手に責任押しつけて殺すのは悪いことじゃないワケ?!」
「!!私にだって責任はあるで…?!…ッ!?」
「…は、え?」
ぎゃあぎゃあといつまでも続くかと思われた言い争いは不意に止まった。ずっと固まっていた石田が刀を納め、村越の腕を引いたのだ。そのまま村越を自分の体の後ろへとやり、2人の間に立った。
「…もういい。私が悪かった」
「!!三成さん、」
「………。三成さん」
「…頭を冷やしにいく」
石田はそう言うと宮野の隣を抜け、道場から出ていった。
道場にはぽかんとした2人が残される。
「…なんか、熱くなりすぎたな私も……。………、芽夷」
「…なに」
「今回は私も言葉を選ばなかった。でも芽夷、これだけは覚えておいて。その人の願いを叶える事が…必ずしもその人の幸せには繋がらない。…簡単に命を捨てるな」
「……それでも私は…迷惑をかけるくらいなら殺されたい…」
「…殺されるのは楽さ」
「!」
「でも、殺した方はどうだろうな」
宮野はそう言って一度村越を見ると、それきり何も言わずに踵を返し道場から出ていった。
村越はぎゅう、と刀を握り締めた。鞘に縛り付けた紫の紐が揺れる。
「………………分かってる、殺した方だって辛い事があることくらい……。…それでも、私は、」
村越は目を強く閉じ、刀を抱き締めた。


受難はまだ終わらない。


それから2日後の事だった。
「……、そういえば、長曾我部さんは、どこに?」
朝、石田の部屋に朝食の握り飯を持っていった村越は、黙々と握り飯を食べる石田の少し後ろに座ってそう石田に尋ねた。
「………そういえばいなくなったな」
「えっ?!」
「4日ほど前から見ていない」
「え、えぇ…?…四国に帰ったんですかね?」
「さぁな」
「…、どうしたんでしょうか、ね」
「………」
石田は村越のどこか不安げな声にちらと村越を振り返った。
そしてすぐに視線を前に戻す。
「……貴様、私は貴様を殺そうとしたのに尚ついてくるのだな」
「え?…あ……すいません、迷惑、ですよね…」
「……何故だ?」
「…私は、三成さんの力になりたい。そう思っているから、離れたくないんです。私はまだ、貴方の為に何も出来ていない。出来ていない所か、迷惑ばかり…」
「…先日の言葉は忘れろ。考え直してはみたが結局分からない…」
石田はぼそりとそう言うとずるずると文机の上に身を投げだした。村越はそわそわしながら石田を見る。
「…。三成さん……」
その時だ。
「大谷ぃぃぃっ!!石田ぁぁぁぁぁっ!!」
長曾我部の怒鳴り声が大阪城に響き渡った。石田はあまりの大声に体を起こし、村越は何故怒気が含まれているのか分からず戸惑った。
「……なんだ?」
石田は不愉快そうな様子を見せながらも、刀を手に立ち上がった。村越は混乱しながらも、大谷を探しに行った。

 「ここで会ったが100年目だ石田ァ!!」
一足先に長曾我部の元へ向かった石田は、長曾我部の言葉に不愉快そうに眉間を寄せた。
「何の話だ」
「空っとぼけやがって…!」
「待て元親」
「―――!!!!」
そして、長曾我部に続いて聞こえた声に、その目を限界まで見開いた。視線は長曾我部に隠れるように立っていた、フード付きのロングコートのようなものを纏った男へと向けられる。
「…ぃぃいえぇぇやぁぁすぅぅぅぅっ!!」
石田はあらんかぎりの大声で叫ぶと勢い良く地面を蹴った。
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