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もうお前を離さない286

「…私は家康を殺すために生きている。それに変わりはない。どれだけ薄れていこうと、私が奴を憎む心に違いはない!」
「は?まぁそうだろうがよ。小生が聞いているのは雑賀を脱退させた訳だぞ」
「…契約が切れた。それに、一度離れた心は二度と戻らん。裏切りを許すより、契約切れで消えた方が精々する」
「…………」
「孫市は前田を追った。二度と現れる事などない。現れた時は斬滅する」
「………刑部に何も断らんでよかったのか?ま、刑部が苦難するのは小生にとっちゃ嬉しい事だけどな」
「…、…………」
黒田は黙った石田に肩をすくめると天守閣から出ていった。石田は壊した手摺りから手を離し、そっとそれを撫でた。
「秀吉様……秀吉様……ッ!!」
――――私は、どうすればいいのですか…?!
「う…あ、あああああっ!!」
石田はそう力の限り叫ぶと刀を投げ捨て、頭を抱えた。



 「………三成さん…」
「…。どうした芽夷そんな片思いしてる子みたいな顔して」
「は?!」
それから数刻後、小休止の為に滞在している小高い丘で、1人西を見て立ちすくむ村越を宮野は正面から覗き込んだ。
宮野の言葉に驚愕したように宮野を見る村越に、宮野は苦笑する。
「上泉に片思いしてた後輩ちゃんと同じ顔してたよ」
「…え、例の上泉が他の女子と話してるの見て目元手で隠して逸らした子?」
「そうそうそうそう。どうなったんだろあの2人」
「あぁ、卒業式で告白されて付き合い始める事になってた」
「マジか?!」
「…ってそんなのはどうでもいいよ!私がその子と同じってどういう事?」
村越が恋煩いをしていると言った宮野に、村越はどこか不愉快そうにそう尋ねた。宮野は悪怯れもせず、かといって揶揄りもせず、至って真面目な顔で村越を見た。
「同じもんは同じなんだよ。まぁそれが恋かどうかは知らんけどね」
「…私、三成さんにそんな感情抱いてないから。三成さんは命の恩人で、私の師匠」
「そんな怒るなよ。そんな感じだったってだけだから」
「むぅ。……じゃあ仕返しに私も少し意地悪な質問する」
村越はそう言うと、どこかにやりと笑って宮野に顔を近付けた。
「え、何」
宮野はぐいと寄ってきた村越から僅かに後退りしながら聞き返した。
「黎凪、幸村さんとやる事やった?」
「ぶふっ!!」
村越の直球な問い掛けに思わず宮野は吹き出した。僅かに顔を赤らめながら宮野は首を振る。
「…まだキスしかしてないよ……」
「えーなんで?」
「当たり前でしょ、こっち来てからずっと戦だし」
「ヤりたくはないの?」
「あああもう可愛い顔してそういう事言うなぁぁぁあこの小悪魔ッ!」
「私の三成さんへの想いを恋だなんて言うから」
「なんだよ、じゃあ愛か?」
「あ?!愛!?もっとなんか違うッ!!」
「どわぁぁっ?!あ、あぶなっ!」
ついに抜刀した村越から、宮野は笑いながら逃げる。村越は刀を構えながら、半ば本気で宮野を追い掛ける。
「なぁ、れい……。む、楽しそうだな、黎凪!」
「刀とやりあってるのを見て楽しそうに見えるの幸村にはッ」
「まぁ、殺気はそんなにないではないか」
そこへやってきた真田は村越と宮野の打ち合いを見て楽しそうに口元に笑みを浮かべた。村越は真田の姿を認めると刀を鞘に納めた。
「幸村さーん。幸村さんは黎凪と睦事したいとか思わないんですか?」
「何言ってんの芽夷!!!!」
「な、な、な、破廉恥なぁぁあっ!!」
「……やれ、メデタキナ」
喧騒を1人離れた所で聞いていた大谷はそう呟いた。
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