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もうお前を離さない288

「…裏切られるのは面倒だからな」
「!!…、まさか前田慶次と、」
「…知っていたのか」
「……さっきの子…黎凪を幸村さんに返しに来た伊達政宗に、前田が徳川の下についた、と…。そ、そうなんですか?」
「…多分な」
「そんな…………」
「………じゃ、じゃあ、孫市さんは東軍に?!」
「家康の味方はしない、そう誓っていった」
「そ…そうですか…。……どうして、許可したんですか?」
「…」
村越の問いに、石田の表情は僅かに曇った。村越は静かに石田に歩み寄る。
「てっきり三成さんなら、斬り捨てるかと…」
「……何?」
だが、続いた村越の言葉に石田は拍子抜けし、不可解そうに村越を見下ろした。
「裏切りは許さない、っていつも言っているから、許したのは…少し意外で……」
「……ッ。貴様のせいだッッ!!」

村越の言葉に、何かが切れる音が聞こえた気がした。

突然叫んだ石田に村越は驚いて石田を見上げた。石田は勢い良く村越の両肩を掴み、ぎらりとその目を睨む。
「貴様が来てからだ!!貴様が来てから、私は私が分からないッッ!!」
「え…?!」
「今までの私なら許しなどしなかった、あの場で叩き斬ったッ!!家康への憎しみが薄れる己を憎んだ!!私は許さない、脆弱な己を、家康の罪を認めず、秀吉様を忘れゆくこの世の全てを許しはしないッ!!」
「み、三成さん…」
「だが!!…貴様がいると、家康への憎しみですらどうでもよく感じる…!!貴様は私に何をした?!私が貴様に何をした!!」
「!!ご、ごめんなさい、」
「懺悔するくらいならば、この場で私に殺されろ!!」
石田は村越を突き飛ばすと同時に刀を抜いた。村越は来るであろう痛みにぎゅ、と固く目を閉じた。


―――ガキン!!

だが、村越の耳に届いたのは、鈍い金属のぶつかる音。
「…?黎凪?!」
いつの間に来たのか、村越を庇うように宮野が村越の前に立ち、石田の刀を兜割りで防いでいた。
「貴様ァ…邪魔をするなぁっ!!」
「本当に殺していいのか?石田三成」
宮野は冷たい眼差しで、じと、と石田を見た。普段の笑顔はどこに消えたのか、口角はずっとそうであったかのように下がっている。僅かに殺意すら見えた。
「何だと…?」
「アンタは自分が変わった理由が分からないから、それが芽夷に起因してると考えたんだろ。でも、はっきり言わせてもらえば、だから芽夷を殺してもアンタは元に戻らない」
「何故分かる!!」
「アンタが変わったからだ。起因が芽夷でも、一度変わった考えはそうそう戻らない。殺してもね。アンタが芽夷を殺した後に残るもの、それは理由が分からない不可解さ、不愉快さだけ。…それでいいのか?自分が何故芽夷を拾ったのかも分からずに、一時の気の嵩ぶりで芽夷を殺して」
「!貴様!」
「黎凪!!何でそういう言い方するの!!」
「!」
刀を宮野の兜割りから引き、肩の上に振り上げた時。村越が宮野の後ろから出て石田の前に立ちふさがった。石田は僅かに驚いて村越を見た。
「私は三成さんを困らせるくらいなら死んだ方がいいッ!!」
「……!」
「…芽夷」
「黎凪は本当に平等だし、間違ってるとは思わないよ。でも、でも……どうしてそう、直球でしか言えないの?!」
「オブラートに包んで話して誤解されたら困るからだよ」
「三成さんは今、分からなくて苦しんでいるんじゃない!今黎凪はそれを追い詰めてる!!」
「だから何だ。分からない分からないと苦しんでいても何も解決しない」
「それは酷いよ!そうかもしれないけど、だからってさらに焚き付けたって出来るワケないでしょ?!なんでそんなに冷たいのよ!!」
だんだんヒートアップしていく2人の言い争いを、石田は刀を振り上げた格好のまま固まっていた。
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