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もうお前を離さない284

それから、3日が経った。大谷と村越が帰るのとあわせて、真田率いる武田軍が石田軍と合流することとなり、その支度をしていたからだ。
「武田軍、西軍に加わるがべく、これより出立いたす!!」
真田の張り上げた声に合わせ、閧の声が上がる。それを聞きながら宮野は笑い、村越を振り返った。
「浮かない顔だね、芽夷」
「え、あ、いや……」
「…、まだ気にしてる?」
「……う、そ、その……」
真田に言われた言葉が頭をぐるぐると回っていた村越は宮野の問いにしどろもどろになってしまった。
宮野は笑みを薄くし、村越から視線を外した。
「…念のため言っておくけど。私は気にするなと言っただけで許したとは言ってないよ」
「!!」
「芽夷が自分を許せないのは分かる。それに、当人達は許さないかもしれない。だから、私は許すとは言わない」
村越は宮野の言葉にしばらく目を見開いて固まっていた。
「…。ごめんね黎凪、軟弱者で…」
「な、軟弱者?そんな事ないよ!腕前だったらもう芽夷の方が上じゃない?」
「…、…ふふ。私は最初から殺しの技を学んだからね。私三成さんの斬撃少し見えるんだ」
「え、マジで?!私見えるのもあるだろうけど本気のは見える気がしない…」
「あ、でも相手の動きは読むことできないなぁ…。黎凪は?」
「ちょっとはね。ただ、流石に相手が今までは拳か木刀だったからそういうのは分かるんだけど、槍とかは分かりにくいんだけどね。大谷さんとかは、わけわかめ」
「あぁ…大谷さんはね…ソフトボールくらいだけど動き不規則だもんね」
「一番予測しやすいのは徳川家康かなぁ…独眼竜と対2でやりあった事あったんだけどね」
「…ん?対2って、1対2?!」
「そうそうそうそう。あ、ほら、その時私幸村に化けてたから」
さっきまでのギクシャクはどこへ消えたのか、わいわいと楽しそうに話す2人を遠目に大谷と真田が見ていた。
真田は傍らを進んでいる大谷をちらと見て笑った。
「…仲直り出来たようでござるな」
「…仲直り、なァ…」
「?」
「まぁそれはよいわ。いつまでもじめじめとされておってはその内三成の気に障る故な」
「…、三成殿はご健勝にござるか?」
「そうよな。あれが来てからしばらく変だがな」
「な、なんとっ?!」
「…それより、主の嫁は徳川方の陣営におったのよな?」
目の鋭さが増した大谷に、真田ははっとした様子を見せると馬を走らせながら大谷の方を向いた。
「黎凪の話では、黎凪が帰ってきた二日前に竜の右目、片倉殿と本多殿は奥州から帰られたばかりのこと。北方の毛利殿を警戒しているようにござる」
「…の、ようよな」
「…それと……これは内密にしておった事なのでござりまするが」
「…?」
「宇都宮広綱殿は、存命にござる」
「…はて。宇都宮は主が倒したのではなかったか?」
不可解そうに細められた大谷の視線を真田は真っ直ぐに受けとめた。
「黙っていた事は詫びまする。されど、徳川方の動きを探るのに死んでおった方がよいであろう、と。それでも三成殿には伝える心積もりではござったが、それどころではなく………誠に申し訳ござらんかった」
「……上杉・北条との戦闘に加え、主の負傷ではまァ、仕方あるまいな」
「宇都宮殿は所領に残り、徳川方の動きを探ると共に関ヶ原には場合によっては馳せ参ずるとのよしにござれば」
「ヒヒ、左様か」
真田は視線を一旦前に戻し、再び大谷を見た。
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