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もうお前を離さない287

「待ちやがれ芽夷ぃぃぃぃぃっ!!」
「誰が待つかー!!」
「私をからかうのはいいけど幸村にはついていい冗談とそうじゃない冗談とがあるのくらい分かってるだろ飛び蹴りぃぃぃぃぃ」
「あだー?!」
それから半時。村越と宮野の喧嘩という名の戯れ合いは続いていた。真田は村越の冗談に破廉恥と叫んだ後ぴくりとも動かない。羞恥のあまり気絶してしまったようだ。
時々殺意が顔を見せる2人の戯れ合いを兵はどこか微笑ましく、大谷と猿飛は呆れたように見ていた。
「やれ、幼稚よな」
「あはー…でも確かウチの嫁さんは大将と同い年のはずたよ」
「齢17か」
どうやら猿飛と大谷は同軍になってから気が合ったらしい、猿飛は大谷の傍の木の枝に座り、ふと気が付いたように大谷見下ろした。
「大谷の旦那。石田の旦那があの子のこと気になってるらしいけど、大谷の旦那も、あの子のこと気に入ってたりする?」
「?…村越を、か?格別思った事はないが」
「…ふぅん」
「ヒヒ、主も不可思議なことを問う。我はあれを何とも思ってはおらぬ。まァ……三成との関わり様によっては考えねばならぬがな」
「何それ…?あの子が石田の旦那を誑かしてるって?」
「…まぁ、そうよな。そこまではまだ達していないといった所か」
大谷の言葉に猿飛は視線を村越に向けた。飛び蹴りされてしたたかに体を地面に打ち付けてしまった村越は、ぱんぱんと裾を払いながらむくれた表情で宮野を見据えている。
宮野は笑いながら尻餅をつく村越に手を差し出していた。
「…んー。意図的にやってはいないと思うぜ?」
「それは我とて分かっておるわ。問題はそれで三成に影響を及ぼすか否かよ。あれ自体がどうであれ…な」
目を細めて物騒な事を口にする大谷に、猿飛はちらと大谷を見下ろした後小さく息を吐き出した。
「…ま、じゃあ俺様もちょっと気にするとしますか。西軍に負けてもらっちゃ、お館様に顔向けが出来ないしね」
「……………………」
「俺様真田の大将起こしに行ってきますんで、じゃ」
猿飛はそう言うと、枝を蹴り、伸びている真田の元へ向かった。
「…誑かしてる、ね」
猿飛はそう呟くとやれやれとでも言いたげにまた息を吐き出した。



 それから2日後。真田達は大阪城に到着した。
城の中に入るなり村越は石田を探しに地面を蹴った。
「どこ行くのさ、芽夷」
「れ、黎凪。…、なんか、三成さんが心配で」
「…、…。私も行くよ」
その行動を不思議に思った宮野は村越から訳を聞き、村越に同行した。
石田は道場にいた。
「三成さんッ!!」
「!…、帰ったのか」
鍛練をしていたのか、顔から汗を滴らせながら石田が振り返った。
笑おうとした村越だったが、振り返った石田の顔を見てその表情は固まった。
「…?芽夷」
「…誰だ貴様は」
「真田の嫁です」
「…三成さん、どうしたんですか…」
宮野と石田のどこか間の抜けた会話も耳に入らなかったらしい、村越は呆然と石田を見た。
「…何の話だ?」
「!教えてください、何があったんですか?!」
顔面を蒼白にさせて尋ねる村越に石田は目を逸らし、宮野はしばらく2人を見やった後道場から出ていった。
宮野の足音が聞こえなくなった頃、石田は漸く逸らしていた視線を村越に戻した。
「孫市が西軍を抜けた」
「え?!ま、孫市さんが…?!どうして!?」
「私が許可した」
「!み、三成さん…?」
村越はどうにも様子のおかしい石田に体を僅かに震わせた。
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