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もうお前を離さない278

「…。なぁぁっ?!」
「幸村ただいまー!無事?あれ以後怪我した?」
「しておらぬ、無事だ!…し、しかしっ、の、のんきなっ」
「のんきじゃないよ!…、芽夷も久しぶり!聞いたよ、三成さんの名代で来たって」
宮野は少し真田から体を離すと村越の方を見た。村越は呆然と宮野を見ている。
自分が吹き飛ばした方向を眺めていた伊達は、村越の様子に目を細めた。
「…はっ!ま、政宗殿!これは一体…!」
「これは一体って、返しに来たんだよ」
「何故!」
「捕虜として連れ帰った訳じゃねぇのが1つ。危害を加えちまったのが1つだ」
「!!」
「危害って言われても怪我はしてないよ」
かっ、と目を見開いた真田に宮野はそう言った。村越はぽかんとしたままだ。
「き、危害とはなんなのだッ?!」
「いや…だから危害ってほどの危害じゃないから、ね?一回は襲われかけて一回は変な薬みたいのかがされただけだから」
「…ケロッと言ってるけどそれ、大した事だよ…」
「まぁまぁ。二回目は山賊だし」
「……それ故返しに参った、と?」
「…、いずれアンタにも分かる事だろうが…南部が毛利に敗れ、最上と前田が東軍に下った」
「!!」
「………」
「Can you understand??……最終決戦が間近になったって事だ。だからだ」
伊達の言葉に真田は僅かに驚き、宮野は押し黙った。
少しの間を置いて、村越ははっとしたように伊達を見た。
「伊達政宗さん。前田が東軍に下ったって言いましたよね?」
「?…あぁ」
「その前田って、前田慶次と関係ありますか?」
「!」
「?」
村越の問いに宮野ははっとしたような表情を浮かべ、真田は不思議そうに首をかしげた。
伊達はややぽかんとした表情を浮かべている。
「…What?当たり前だろ。前田慶次は東軍に下った前田共の甥だ」
「…!?」
「はて、困ったぁ困ったぁ」
「「?!」」
不意に聞こえた大谷の声に真田と伊達は同時にそちらを見た。ヒッヒと大谷は肩を揺らし笑いながら近づいてくる。伊達は眉間を寄せ、刀に手を伸ばした。
「主も無用心よなァ独眼竜伊達政宗」
「!大谷さん!」
「お、大谷ど「大谷さん。独眼竜を攻撃するのは許しませんよ」
ふよ、と通常の円形の形を崩すように数珠を動かした大谷に真田と村越は僅かに慌てたが、宮野は兜割りを手に伊達と大谷の間に立ちふさがった。
大谷は面白そうに宮野を見る。
「独眼竜は私を届けに来ただけです。…石田軍は使者として来た者でも切り捨てると?」
「!!」
「ヒヒヒッ…主は全くもって愉快よなァ…」
大谷は笑いながらそう言うと、数珠は元の円形に戻った。
伊達は刀に手を添えたまま大谷を睨んだ。
「困ったとか言ってたが…何が困った」
「今主等が話しておった前田のせがれの事よ。奴は今、雑賀の尻を追い掛けて西軍におる故な」
「何?」
「なんと!破廉恥な!!」
「狽サっち?!」
「はてさて、風来坊のあれがどうでるか…」
大谷はそう言うと大袈裟にため息をついた。村越ははっとしたように西の空を見た。そして、大谷を見た。
「……それは、あの人が東軍に寝返るって事ですか…?」
「!」
「ヒヒ。…考えられぬ事ではなかろう?」
「………今このタイミングで?大谷さんいないのに三成さん大丈夫かな?」
「…黎凪…言葉ほど心配してないでしょ」
恨めしげに己を見る村越に、宮野は笑った。笑ってみせた。
「なんとなく、大丈夫って気がするだけさ」
そう言って。
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