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もうお前を離さない298

「大谷さんのバカッ!!」
バシン、と音をさせて村越が平手を張った。大谷は揺れた顔を戻しもせずにただなすがままになっている。
村越は涙を流しながらぽかぽかと大谷を叩いた。
「やれ、そう叩くな…」
「刑部…」
「………」
石田の声に大谷は一瞬石田を見た後すぐに逸らした。石田は大谷の前に立つ。
「…今回の事は、私の人格が原因なのだろう」
「我が勝手にやった事よ」
「刑部!」
「主は関係ない」
大谷はそう言うと石田を見た。それだけは認めない、大谷の目はそう言っていた。

あくまで自分の独断であり、理由がなんであれ石田は関係ない。

そう、言っていた。
石田はがり、と唇を噛む。
「…ッ。…ならば刑部。私は今回の貴様の嘘を許す!」
「!!」
石田の言葉に大谷は驚いたように石田を見上げた。石田はその大谷の面前に刀の柄を突き付けた。
「だが!二度目は許さない!もう二度と私に嘘を吐かないとこの場で誓え!!」
「………相分かっ、た…」
「…ならばいい。行くぞ刑部」
「あ、あぁ…」
「…、村越」
「…ッ、はいっ」
「…あの時止めてくれた事…感謝する」
「…!はいっ!!」
石田はそれだけ言うと城の中へ戻っていった。大谷はしばし呆然とした後、ヒヒ、と小さく笑うと覚悟を決めたように石田の後を追った。
村越は涙を拭いながら宮野を振り返った。
「ありがとう黎凪、私、私…ッ!!」
「…取り敢えず、よかった…ぁぁぁあぁ?」
「!黎凪ッ!?」
ほっと息を吐きだした宮野の体がぐらりと揺れ、真田は慌てて宮野の体を抱き留めた。宮野は左腕を押さえる。
「あーそっか。ちょい血流しすぎた…」
「!そうだ手当て!」
「…無茶をするな」
村越は踵を返し道具を取りに戻った。真田はため息をつきながらその場にしゃがみ、自分を体を背もたれに宮野を座らせた。宮野は真田を見上げ、苦笑する。
「ハハ…でも、ここある意味第一関門だったから…。こうなるのなら、絶対に止めたかった。無茶するよ」
「…、お前が無茶する気持ち、分からんでもない、だが…。…死んでしまったら何もできぬ…」
「…!幸村、」
「夢を叶えたいのなら己を大切にしろ」
真田はふてくされたようにそう言うと宮野の頭をわしゃわしゃと撫でた。宮野は驚いたようにしばらく真田を見上げた後、薄く笑ってぐり、と頭を真田の胸に押し当てた。
「…うん、分かった。ごめんね」
「謝らんでいい。お前の無茶で、お二方の命は守れたろう」
「……、まぁ、長曾我部は三成さんは殺さないんだけどね」
「そうなのか?」
「そう。…だから巷では三成さんが救われるルートって言われてる。……私はそう思えなかったけど」
「何故だ?」
宮野は真田に背中を預けたまま真田を見上げた。
「…三成さんは自分を許せなかった、それを許すっていうのは決してその人にとって嬉しいことじゃない、辛いことだ」
「……………」
「自分を許せない。それを許せるのは自分だけ。むしろその時、きっかけとなった人間に許すと言われるのは苦痛でしかない。哀れまれたようで」
「……、お前にもあったのか?」
「私はまだない。……死んだ兄貴の恋人に、」
「!!」
「…私が犯人になってた時、殺されそうになってね。大丈夫だったけど……申し訳なくて」
「…許すと言ったのか」
「そしたらそう言われたんだ…。…私はどうすればいいのか分からなかった。憎んでほしいのかもしれない、でも私に憎む事はできないから」
「……そうか」
「だってあの人は悪くない…。…悪くないんだ」
宮野はそう言って頭を下げた。真田は何も言わず、ただ宮野を抱き寄せた。
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