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もうお前を離さない296

「簡単明朗に言ってしまえば、大谷さんは三成さんを勝たせたいんだ」
しん、と辺りは静かになる。
「大谷さんは無意識の内に三成さんの事を大切に思ってる。自覚はないけれど、時々それが垣間見える時がある」
「……」
「大谷さんにとっても自分とは正反対の立場の人間な徳川は憎らしい相手。ある意味で三成さんとは利害一致もしたワケだ」
「…、大谷さんは自分達西軍の為ではなく、三成さん個人の為に、長曾我部を嵌めた?」
「まぁ、そうなるのかな。でも三成さんはこういった方法を認可しない。だからこそこそやった。裏切った、っていうのはそういう意味」
「…………」
「三成さんが自分も許せないのは、大谷さんを信じて全て任せていたから、って事からきてんだけど、それはまあ置いといて。なんで大谷さんが三成さんが大切だと分かるか。次はここ話そうかな」
「!根拠があるの?」
「根拠になるのかは分からないけどね、はは…。大谷さんがよく言ってる言葉分かる?」
「……。攻撃する時、幸よ、福よ、塵と消え、って言ってた」
「May misery rain down upon us all。欧米版のセリフなんだけど、分かる?」
「…全ての者の上に、不幸よ降れ?」
「さっきの芽夷が聞いたのは、英語にするとI will banish all joy and harmony from this world」
「…苛烈……」
「大谷さんはそれだけこの世を憎んでいるし、幸せを憎んでる。英語に直したのは曖昧な言い方にならないからだけど…芽夷以外には分からないか。今言ったのは直訳すると…ま、幸せも調和もこの世から消し去ってやる、かなぁ」
「…刑部の言い方は柔らかい方なんだな」
「そ。要は何言いたいかって、それくらい大谷さんはこの世を憎んでるって事。生きている者皆不幸になればいい、そう思ってる」
「!!」
「…」
「…それは…」
「……ヒヒ。それは肯定してやろ」
「!…それは、大谷さん自身も、ですか?」
初めて肯定した大谷に、村越は顔を哀しげに歪ませる。石田はずっと何も言わずに大谷を見つめていた。
大谷は石田を見ない。大谷は村越を見て、またヒヒ、と笑った。
「無論よ」
「!じゃあ、三成さんも?!」
「!!…、………」
「……刑、部?」
「芽夷ナイス!」
「え?!」
宮野は村越に向かってニヤリと笑って見せた後大谷に向き直った。
「考えた事もなかった、…って顔してますね」
「…!」
「刑部?」
「三成さんは貴方のその想いからは除外されていた。今証明してしまいましたね、大谷さん。それが私が貴方が三成さんを大切だと思っていると考える最大の根拠です」
「…!!」
「…意味が分からん」
「え…あ、そうですか…」
「…だとしても何故だ?」
戸惑う石田の言葉に落ち込んだ宮野に、徳川がそう問い掛けた。宮野は髪を掻き上げ、ふむー、と呟く。
「三成さんは普通の人とは違う。2人の過去に何があったか知らないけど、少なくとも、三成さんの大谷さんに対する態度は普通の人のそれとは違う。私は三成さんの態度に大谷さんが救われたんじゃないかと勝手に考えてますが」
「……刑部…ッ。何故だ!!何故…私に嘘を吐いた!貴様にそこまでさせたのは私のせいなのか刑部!!」
聞いているのに耐えられなくなったのか。石田は大谷の肩を掴み、そう叫んだ。大谷は視線を合わせようとしない。
「何故だ…ッ!私は…ッ!!」
「三成………」
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