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もうお前を離さない292

村越は地面を強く蹴った。体重的にも武装的にも石田より身軽で、脚力も女子にしてはそれなりにある村越は軽々と長曾我部の頭上を飛び越え、長曾我部が振り上げていた破槍の上に器用に乗っかった。
突然重くなった破槍に長曾我部が一瞬バランスを崩し、その隙をついて、村越は揺れる破槍の上を軽々と平均台を渡るように長曾我部の手元に迫る。
突き立てるように迫る刃に、長曾我部は咄嗟に破槍についている鎖を思い切り引いた。突然の事にバランスを乱した村越はそれ以上接近するのを諦め、破槍を蹴って離れた。
「元親落ち着け!!」
「…ッ、けどよ家康!侮辱されたのはお前だぞ?!」
徳川は長曾我部の腕を引いて激昂しているのを諫める。長曾我部はある意味で落ち着き過ぎている徳川に、疑問を含めながら怒鳴り返した。
徳川はきっ、と長曾我部を見据える。
「だからといって耳を塞ぐわけにはいかない!…彼女が言っている事は正しい」
「!家康……?」
「ッ元親!」
徳川は己を振り返り接近している村越に気が付いていない長曾我部と村越との間に割り込み、その刀を受けた。
村越はぎらり、と徳川を睨んだ。徳川も臆する事なくその目を見返す。
「……そういえば…アンタ黎凪に何したの…?」
「黎凪…?…宮野殿の事か?」
「そうだよ…!三成さんも黎凪もアンタのせいで苦しむ…!」
村越は刀を引くと一旦鞘に収めて再び斬り掛かった。村越は忌々しげに徳川を睨む。そしてぼそり、と呟いた。
「これも私の罰なの…?」
その言葉が聞こえた徳川は一瞬意味が分からず、次いで迫ってきた斬撃への対応が遅れた。
頭の上で手を交差させて防ぐが、すぐさま刀を引いて繰り出された斬撃は避けそこね腕から僅かに血が噴きだした。
「今すぐここからいなくなって、それが出来ないならこの場で死んで!!」
「…ッ!」
「家康ッ!!」
どうにも動きの鈍い徳川を案じた長曾我部が破槍を村越目がけて振り下ろす。それに気が付くのが遅れた村越は避けられないと判断し、咄嗟に両腕で頭を庇った。
だが意外にも、それを防いだ者がいた。石田だ。
「!三成さん、」
石田は鞘に収めた刀で長曾我部の破槍を弾き、次いで抜いた刀で斬り掛かった。長曾我部は慌てて下がる。
石田は長曾我部が間合いの外に出たのを確かめると村越を振り返った。
「…私は裏切りを最も許さない。裏切り者は万死に値する、だが……斯く言う私も長曾我部を裏切った。壊滅させておいてぬけぬけと仲間になれだなどと言った、私は、…刑部共々長曾我部に殺されねばならない。…だが、貴様は関係ない、だから「嫌です!!」
石田の言葉を遮り、村越はそう叫んだ。石田は僅かに驚いて村越を見下ろした。他の三者はその様子を見守っている。
村越はぎっ、と石田を睨んだ。
「それに許せません。三成さんは西軍の総大将!三成さんが死んだら、事実上西軍は東軍に敗北する事になる!!今三成さんが背負っているのは自分の命だけじゃない、三成さんは西軍に属する者全ての命を背負ってる!そんな無責任な死は許せない!!」
「…!!」
「それでも三成さんが自分を許せないというのなら…私はこの事実を嘘にねじ伏せます!」
「?!何を…」
「この事実を真実だと知る人がいなければ、それは嘘に出来ます。…そうは思いませんか?」
村越はそう言いながら視線を徳川と長曾我部に向けた。
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