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もうお前を離さない282

笑う大谷を、どこかむっとした様子で村越は睨むように見た。
「だって…三成さんは大谷さんの事を信じて疑っていない」
「…それとこれとは話が別よ」
「そうでしょうか?三成さんはそれなりに信用していた徳川に裏切られた、そうでしょう?」
「………」
「私は…裏切られて大切な人を殺されたら、誰も信じられません。親友の黎凪だって…信じられるか分かりません。でも三成さんは、変わらず大谷さんの事は信じてます。…それだけ、いて当たり前の存在なんじゃないんですか。疑うに値しない人って事じゃないですか」
「………………………」
「大谷さんは何か勘違いしてます。三成さんにとって自分はなんでもない存在だと思ってる。私は!絶対そんな事はないと考えます!!」
「…ッ」
思っていたよりも強い口調で言われた大谷は思わずたじたじとなった。村越の目には怒りすら感じられる。
「…三成さんは全てを失っていない。だからこそ仇を追う力が残った。私はずっとそう思ってました」
「………………………」
「この際、ついでに聞きますけど、大谷さんはどうなんですか?」
「は?」
「大谷さんは、三成さんが大切でしょう?…、大谷さん程の人なら、薄々気が付いてた事じゃないんですか。三成さんが生きる為に徳川を追ってる事に」
「………はて」
空とぼけた答えを返すと、刹那風を斬る音をさせて大谷の首元に村越が刀を突き付けていた。大谷は僅かに驚いた。
「誤魔化さないでください。私はあなたの本音が聞きたい」
「何故よ?」
「大谷さんの噂はいろいろ聞きますが…確かに私も大谷さんは嘘が多いと思います。でも、嘘は重ねれば重ねるほど、いつか取り返しがつかなくなる。……私の父のように」
「…主の母を殺したという父か?」
「殺した原因は嘘から来てました。…大谷さん。三成さんをあなたは裏切らないで下さい」
「!!」
「…私は。さっきはああ言いましたけど。三成さんを裏切ったら、徹底的にあなたを問い詰めますよ」
ぎらり、と己を睨む村越に、大谷は口角を上げてにやと笑った。
「ヒヒ、怖いコワイ。…主は我が思うておるより三成に入れ込んでおるようよなぁ」
「揶揄らないでください。…確かに私は三成さんに依存しています。ですから、容赦はしません」
村越はきち、と刀を鳴らすとそれを大谷の首元から離し、鞘に収めた。
そして勢い良く頭を下げた。
「…刀を向けた事は謝ります。それでも、私は!それだけ…あなたには、ずっと三成さんの味方でいてほしい…!」
「…!!」
「ずっと…理由は分からないけれどいやな予感がするんです…だから…!!」
「………。相分かった」
「!大谷さん、」
「ヒヒ、三成は果報者よな」
「か、ほう…?!な、なんでそうなるんですか!?ま、待ってください大谷さん」
大谷は村越の言葉に一瞬暗い目をした後、いつもの調子に戻って村越を揶揄った。村越も言いたいことを言い終えて油断していたのか、大谷の言葉にどぎまぎしながら自分の隣を通っていった大谷を慌てて追った。
「………………」
だから、いつの間にか戻ってきていた宮野がそんな大谷を見て、暗い表情を浮かべていたことには気が付かなかった。
「…?どうしたのだ黎凪」
「…いや。芽夷に悪いことしたな、って」
「?…、盗み聞いてしまった事ではあるが………。……まさか、大谷殿は既に三成殿に嘘を吐いていると?」
「…どうするつもりだろ。大谷さん」
宮野は苦々しい表情でそうつぶやいた。
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